5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する。重症化リスクの高い人たちと向き合い続けてきた、病院と高齢者施設は、5類移行を前向きに受け止めながらも、葛藤も抱えている。

コロナと闘う 病院は今

宮城県仙台市泉区の仙台徳洲会病院。この病棟は4月まで新型コロナの療養患者を受け入れていた病棟。この病院では新型コロナの専用病床を24床備えていたが、2023年3月以降、感染者や重症患者が大きく減少したことを受け、4月から態勢を一部、縮小した。
この日は、5床ある陰圧室でのみ、新型コロナの入院患者の対応にあたっていた。

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記者:
3年間を振り返ってみて、どうですか?

仙台徳洲会病院 加藤一郎 医師:
毎日模索しながらの戦いだったので、振り返ると大変な思いしかなかなか出て来ないんですけど。

加藤一郎医師。加藤医師は、この3年、新型コロナに感染した入院患者や救急患者に最前線で対応してきたほか、病院の感染対策委員会の委員長として、院内の対策にも取り組んできた。しかし、2022年末から始まった第8波では、100人規模の大規模な院内クラスターが発生。年間約6000人に対応している救急患者の受け入れが一時、できなくなった。

仙台徳洲会病院 加藤一郎 医師:
社会的に非常に申し訳ない。すごく心苦しいんですよね。救急車を確保できないとか、みんな気を付けているんだけど、でもなってしまったという状況ではあるのですが、そういうのを避けてやっていきたいと本当に思う。

こうした中政府は、新型コロナの感染症法上の位置づけを、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることを決定。患者の受け入れは指定病院だけでなく、全ての医療機関でできるようになる。

この病院では、病棟の外に設けた発熱外来を当面の間、継続する一方、専用病床は感染状況をみながら、そのほかの患者と併用することにした。また、人数や時間などを制限した上で患者との面会も再開させる方針。

仙台徳洲会病院 加藤一郎 医師:
患者さんにとって面会は大事なんですよね。患者さんも元気になったりするので、面会をきっかけに。そういうのはしていきたいなと感染の対策をしながら思っていたので。

それでも、5類移行後の課題は「移行してみなければ分からないのが現実」だと言う。第9波の可能性も指摘される中、模索は続く。

仙台徳洲会病院 加藤一郎 医師:
僕らの中で外来と入院はある程度分けて考えているところがあって、入院のところに、新型コロナウイルスが入ってもらっては困るわけですね。ただ、外来で普通に受診する人、完全にブロックするのは限界があると思っています。うまいボーダーを見つけながら病院を安全な状態で運営できればと思います。

リスクと対峙 高齢者施設

医療機関とともに、大きな影響を受けたのが高齢者施設。宮城県仙台市泉区のグループホーム「ななみの杜」。認知症と診断された高齢者18人が入居している。

この施設では、新型コロナの感染拡大以降、面会を原則、制限してきたが、第7波が落ち着きを見せた2022年秋ごろ、全面的に面会を再開させた。

取材をしていると、95歳の母親に会いに来たという男性と会った。
2023年に入って、2度目となる息子との面会だという。久しぶりに息子と会った母親は「うれしい」と顔をほころばせた。

施設の職員:
入居者の表情は全然違って、やはり笑顔だったりとか、言葉だったりとか、生活自体が変わってくると実感しています。会いたい人と会えるという環境はすごく大切・重要なんだと感じました。

日常が戻りつつある施設だが、高齢者の重症化リスクが消え去ったわけではない。この施設などを運営する団体の山崎英樹代表は、これまでの新型コロナとの戦いを教訓に感染対策は継続した上で、行政に対して引き続き一定の支援を求めたいとしている。

清山会医療福祉グループ 山崎英樹 代表:
せめて抗ウイルス薬は施設でも処方できることが大切。2つ目は介護崩壊に備えた、職員の応援派遣の仕組みを維持・強化していくことだと思います。

5月8日の5類移行に伴い、毎日公表されていた感染者数は週に一度、1医療機関あたりの平均が公表される形になる。感染の動向が見えづらくなる中、行動に対しての制限もなくなり、原則「個人の判断」となる。

一方、医療機関や高齢者施設では今後も対策が必要となるのも事実。「個人の判断」。その意味を今一度考える必要がある。

(仙台放送)

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