新型コロナの影響で中止が続いていた、宮城県加美町の「火伏せの虎舞」が4月29日、4年ぶりに復活する。虎舞の伝統を引き継ぐのは消防団と地域の子供たち。4月15日、熱のこもった練習が始まった。

火伏せの虎舞 4年ぶり復活

「脚はこう、膝が前に来てはだめ」

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消防団員から虎舞の基本的な動きを学んでいるのは、小学5年生から中学3年生までの32人。全員がまつりで虎舞を披露するのは初めて。

「肘を出さないようにね、格好悪いから」

火伏せの虎舞が披露される「初午まつり」は新型コロナの影響で、3年連続で中止となった。例年であれば上級生から下級生へ教えていく伝統も、いったん途切れてしまった。

小学5年生:
緊張で半端ないです。格好よく踊りたいです。

中学1年生:
一応、年長の頃に一回だけ、やったことあるんですけど、ほとんど覚えていない。不安、緊張しています。

約650年前から宮城県加美町中新田地区に伝わる「火伏せの虎舞」。春先の強風で大きな火事が多かったこの地区で、中国の言い伝え「雲は龍に従い、風は虎に従う」にならい、虎の威を借りて風を鎮めようと始まったとされている。4年ぶりに披露されることになった伝統の虎舞。2023年はもう一つ、待ちわびていたことがある。

40年ぶりに戻る 虎頭

加美町消防団 部長 味上庄一郎さん:
あそこにあるのが2022年11月に、40年ぶりに私たちの手元に戻ってきた虎の頭になります。

鼻先や顔の塗料がはげてしまった、虎頭。約40年前のまつりで紛失し、2022年、多くの人の協力で戻ってきた。虎頭を見つけたのが、岩手県釜石市に住む笹山政幸さん(55)です。

笹山政幸さん:
現物を京都で見た瞬間に、宮城の虎だなと薄々は分かってはいたんですよ。

笹山さんは東日本大震災の津波で流出した文化財の調査や元の場所へと戻す活動をしていて、2014年、京都の骨董品店から買い取った。持ち主を探すこと8年、笹山さん自身も諦めかけていたころ、加美町の教育委員会などの協力で2022年、加美町の消防団が所有していたものと判明した。

笹山政幸さん:
一番戻るべき場所に戻ってうれしいのと、うちに8年間、ただ飾り物状態で置いていた虎がまた、あちらの地域で屋根に上がって踊れるというのは、虎頭自体も思っていなかったでしょう。

今年のまつりでは、約40年ぶりに戻った虎頭も踊りに加わる。

中学生:
めっちゃいい。格好いいです。

この日は消防団が戻ってきた虎頭を使ってお手本を披露した。

加美町消防団 部長 味上庄一郎さん:
あんまり言わないようにと思っていたんですけど、だんだん見ているうちに『うっ』というのもあったので少し指導に熱が入りましたね。やっぱり久しぶり、4年ぶりというのが1番ですかね。よいお祭りを来てくれたお客さんに見て行ってもらいたいという思いがそうさせたのかなと思います。

1時間に及ぶ初日の練習が終わった。

小学5年生:
脚とかパンパンで、10分の3くらいしかできなかった。

中学1年生:
本番は消防の人たちを超えたいです。

中学2年生:
「一番虎」を取りたいと思うので頑張ります。

子供たちはこれから毎日練習を続け、3つある踊りを習得していく。地域の伝統と子供たちの思いを込めた「火伏せの虎舞」は4月29日、4年ぶりに披露される。

(仙台放送)

仙台放送
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