トルコ大地震から半年たった現地の今について、震災発生直後から取材に当たってきた、FNNイスタンブール支局の加藤崇支局長がお伝えする。

今もがれきの撤去作業が行われる

地震の被害の大きかったトルコ・カフラマンマラシュの郊外には、被災者の方が住んでいるテントがあり、今も人が住んでいる。
5万6000人以上が亡くなったトルコ・シリア大地震は、発生から8月6日で半年が経過。FNNは、南部の街・ハタイの今を取材した。

がれきなどの撤去作業が行われている
がれきなどの撤去作業が行われている
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被害の大きかったハタイでは、解体された建物もあるが、周辺には住むことができないにも関わらず、解体されずに取り残された建物が多くあった。がれきの量は確実に減っているが、街の至る所で今も撤去作業が行われている状況だ。

撤去の際に出る粉じんで目が開けられない時もあり、市民に話を聞くと「ハタイはもう終わった」などと悲しい声も聞かれた。

コンテナハウスでの生活

被災者の方々は現在どのような暮らしをしているのだろうか。

トルコ・カフラマンマラシュ市のコンテナ村
トルコ・カフラマンマラシュ市のコンテナ村

都市部にいて住めなくなった人は、当局が作った「コンテナ村」に多く住んでいた。カフラマンマラシュ市にあるコンテナ村には、コンテナハウスに2部屋があるほか、キッチンやトイレ、シャワーが付いている。冷房も付いていて、暑い夏でも生活できるようになっている。

そこに、家族6人で住んでいたヤームルちゃん(12)に話を聞いた。

コンテナハウスに住む ヤームルちゃん:
友達もいるし、とても良いところです。ここで、仲良しの大好きな友達がたくさんできました。

コンテナ村には学校のほか、サッカー場やモスク、美容室もあるなど、少しでも元の生活ができるよう、一つの街が作られている形だ。

ただ、こうしたテント村は、カフラマンマラシュのような郊外にはなく、都市部にしかない。そのため、郊外の人は都心部まで行かなくてはならなくなる。ただ、郊外にいる方たちは、農地があったり、家畜を飼っていたりするため、都市部にあるコンテナ村には行けない。

また、郊外にもコンテナハウスだけは支給されていてシャワーやトイレは使用できるが、エアコンは設置されていない。場所によっては水も通っていないコンテナハウスを支給されているところもあり、生活は相当厳しい状況になっている。

テントの中は酷暑…料理も命懸け

実際にどのような生活をされているのだろうか。メシェさん家族を取材した。

家族6人で暮らすメシェさん一家。日中は暑いので、陰になる遮へい物を作って風が通るようにしたテントで生活をしていた。そして、蛇なども出て危険なので、夜だけは支給されたコンテナハウスで寝る生活をしている。

テントの中は電気は通っているので、半壊した家から持ってきた冷蔵庫なども設置。しかし、支給されたテントだけでは6人では狭いので、父親がビニールシートで屋根を作り、拡張していた。

温度計が43℃を表示している
温度計が43℃を表示している

さらに、問題は暑さ。室内の温度計を見ると室内は43.9℃もあり、熱中症も心配される。そうした状況の中、メシェさんが一番辛いと話しているのが、毎日作っている料理だという。

メシェさん:
テントの中はとても暑くつらいです。滝のように汗が流れます。暑いですが、仕方ないので中で料理しています。いつも倒れる寸前で、食べ物をコンロに乗せたら、外に出て火が通るまで待ちます。そして、時々見に行って、すぐに外に出ます。そうしないと、中で倒れてしまう。

こうした暮らしをしている人々は、政府が作る公営住宅が完成して入居できる日が来るまで、我慢して生活をしていくという。
そうした中、トルコで新たな取り組みが始まった。

日本のマンガで防災教育

トルコは日本と同じように地震大国だが、日本にあるような防災教育がないのが実情。そこで地震後に作られたのが、日本人の建築士が監修した防災マンガだ。

地震後に発行された雑誌に掲載されたマンガの中身を見ると、主人公が地震が揺れた後、丈夫なベッドの陰に隠れたことで、倒壊した家屋の中でも隙間にいられる。また、事前に用意しておいた水やチョコレートなどで、長い時間生き延び、笛を使うことで外の人に自分の存在を知らせることできる。こうすることで、最後は救助隊に助けられることなどが描かれている。

このマンガはトルコに30年以上住んでいる一級建築士の森脇義則さんが監修して作られた。
4ページと短いのだが、反響を呼び、被害が大きかったハタイの区長に150冊を送り、子どもたちに配られた。

また、森脇さんはマンガを使って防災教室も始めた。

森脇さんはボランティアで防災教室を開き、マンガの主人公がいかにして倒壊した家屋から助かったのか、例をあげて説明し、地震防災の大切を伝えている。

防災教室に参加した子供:
絵で話が描かれていたから面白くて良かった。

防災教室に参加した子供:
地震発生時に何が起きるか、絵で頭に入るので理解しやすい。

さらに現在は「どうして地震が起きるのか」「日本の防災対策を紹介するための単行本」の製作も始めている。書いているのは高校生のスラさんで、森脇さんとの確認作業を行いながら共同で製作している。

森脇義則さん: 
トルコの教育において地震防災はないものですから、この漫画の地震防災っていうのを(学校の)教材として使うようにそこまでなれればいいと思う。

9月中にはこのマンガをトルコで発行する予定だという。

(「イット!」 8月7日放送より)