春は旅立ちと別れの季節。年度末の表情を高速バスの停留所でスケッチした。東京や名古屋に向かうのに、高速バスが欠かせない長野県の飯田地域。この時期、ふるさとを離れる若者などで特に利用者が増える。停留所でバスを待つ人たちに話を聞いた。

高速バスで出発

長野県飯田市
長野県飯田市
この記事の画像(17枚)

3月25日―。

週末の長野県飯田市。見ごろを迎えた桜が雨にぬれていた。

伊賀良バス停(長野県飯田市)
伊賀良バス停(長野県飯田市)

バスアナウンス:
お待たせしました。新宿行きの1号車です

伊賀良バス停。飯田のバスターミナルと新宿や名古屋を結ぶ高速バスが1日33便、発着している。そばに駐車場があって利用者が多い停留所だ。

この時期はバス2台で運行する便も。待合室もいつもより混雑していた。

帰省していた専門学生は、名古屋へ
帰省していた専門学生は、名古屋へ

名古屋へ・専門学生(19):
(こちらへはどうして?)帰省です。2週間くらいいました。さみしいです。家族と離れるっていうのと、一人暮らしなので。(通っているのは)ブライダルの専門学校です。人のために何かをしてあげたいという気持ちがあって、家族の応援とかあるので、自分の夢をしっかりとかなえていきたい

帰省や進学、若者の姿が目立つ。

初めての一人暮らし

西舘一陽さん(左)と恵子さん親子
西舘一陽さん(左)と恵子さん親子

名古屋へ向かう西舘さん親子。一陽さん(18)は高校を卒業し、専門学校に進む。

バスケット部時代の一陽さん(左)
バスケット部時代の一陽さん(左)

名古屋へ・西舘一陽さん(18):
理学療法士っていうリハビリの専門のトレーナーになりたいと思っています。運動部だったので、トレーナーさんにお世話になったりとか、理学療法士が活躍していたので。少しさみしい感じもするんですけど、新しい名古屋という場所で自分なりに頑張れたら

春から初めての一人暮らし。

一陽さんの母・恵子さん
一陽さんの母・恵子さん

母・恵子さん:
朝が弱いので起きられるか、それだけが心配。小学校2年生から11年間、辛抱強くバスケット一本で頑張ってきたので、根性あるかなと思って、そこは信じています。部活の同行とかさせてもらって活躍を見せてくれたので、それが一番の思い出ですかね。散々、かわいがってきたつもりなので(笑)。好きなように思い切りやってもらって、最後に帰るところが飯田だと思えば、帰ってきてくれればいいよと

名古屋へ・西舘一陽さん(18):
期待に応えられるように頑張りたいと思います

秘境駅からの帰路

男の子がいたので声をかけてみた。

春休みに飯田線の旅で来た親子
春休みに飯田線の旅で来た親子

名古屋へ・小学5年生:
飯田線の旅で、ここに来ました。景色も良かったし、トンネルが多くて、結構楽しかった。(印象に残った駅は?)字がすごかったのは、「鼎(かなえ)」。(将来の夢は?)まだ決まってない。JRにはちょっと興味がある

「春休みの思い出に」と親子で豊橋から飯田まで。秘境駅などの風景を楽しんだ。帰りはさすがに、高速バスにしたそう。

母親:
4~5時間かかったと思います。途中、寝ましたけど(笑)、景色は良かったので楽しかったです

一人娘が進学する

大学進学で名古屋へ・椎谷望未さん
大学進学で名古屋へ・椎谷望未さん

娘の大学進学で名古屋に向かう椎谷さん親子。

名古屋へ(大学は春日井市)・椎谷望未さん(18):
建築家になって、海外とか日本でも公共施設とかの設計に携わりたいなと。昔からモノ作りとかをするのが好きで、高校も建築科進んで興味持って。(友達には)離れちゃうから、また会いたいね、みたいな(笑)。さみしいです

佳子さん(左)と望未さん(右)(提供写真)
佳子さん(左)と望未さん(右)(提供写真)

母・佳子さん:
人を思いやって、バリアフリーとかそういう建物も設計してほしい。あっという間の18年だった気もするんですけど、一人娘なので、愛知は近いんですけど、さみしさも。しっかり一人暮らししてくれればと

名古屋まで高速バスで2時間。頻繁に会える距離ではない。

母も付き添ってー。

新社会人 研修先へ

3月28日―。

週明けも多くの人がバスを利用していた。

研修で長野へ・桐生鈴花さん
研修で長野へ・桐生鈴花さん

スーツケースを携えバスを待つ桐生鈴花さん(20)。行き先は長野だ。

長野へ・桐生鈴花さん(20):
(長野へ)研修で行きます。食べることがずっと好きで、中学生くらいから食品関連で勤めたいなと思っていて

短大を卒業、4月から地元の福祉施設で栄養士として働く。

長野へ・桐生鈴花さん(20):
不安が大きいですね、初めて働くので。(研修で)いろいろ教えていただけると思うので、新社会人として意識をもって取り組めたらなと思います

久しぶりの帰省

コロナの感染拡大が落ち着き、この春休みに帰省した人も多かったよう。

帰省していた娘とその母親
帰省していた娘とその母親

帰省していた娘の母親・一緒に新宿へ:
コロナの間はずっと帰ってこられませんでした。桜もきれいだったので、ちょうどいいときに帰ってきたなって。両親も元気ですので、久しぶりに会いたいなと思って

新宿へ・娘(専門学生・21):
イチゴ狩りしました。喬木村です。めちゃめちゃ気分転換になって良かったです。自然がいっぱいだから、いい空気吸えて良かった

新宿に向け出発
新宿に向け出発

岐阜から福島へ 息子を送り出す

大きな荷物を持ってバスを待つ山下さん親子。息子の聖太さん(18)は小さい頃から柔道一筋。岐阜県の高校に進学し寮生活をしてきた。柔道に一区切りをつけこの春、福島県の大学に進学する。

柔道部時代の聖太さん
柔道部時代の聖太さん

新宿経由して福島へ・山下聖太さん(18):
工学系の大学なので、そっち系の仕事に就けたらなと考えています。(ご両親に感謝は?)いろいろ今まで迷惑をかけてきてしまったんですけど、感謝してもしきれないところはありますね

山下聖太さんを送り出す母・理恵さん
山下聖太さんを送り出す母・理恵さん

母・理恵さん:
頑張ってね

新宿経由して福島へ・山下聖太さん(18):
ありがと

東京を経由して福島に着くのは夜。

聖太さんを見送る母・理恵さん
聖太さんを見送る母・理恵さん

親元を離れてたくましくなった息子を再び、送り出す。

母・理恵さん:
さみしいですけど、今までもやりたいこと頑張ってやっていたので、それがこれからも続くような感じで、応援したい

乗客を乗せて走る高速バス
乗客を乗せて走る高速バス

希望や期待、不安が入り混じる年度末。さまざまな思いを乗せて、きょうも高速バスが走っている。

(長野放送)

長野放送
長野放送

長野の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。