全国で4月1日から、自転車に乗るすべての人にヘルメット着用が「努力義務化」された。広島の自転車販売店では人気のヘルメットが品切れ状態に…。罰則や取り締まりはなく、一方では着用をためらう声も聞かれた。

販売店やヘルメットメーカーに変化

スポーツモデルやシティモデルなどさまざまなデザインのヘルメットを扱う広島市西区の自転車販売店「カナガキ」本店では、大きな変化が起きている。

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カナガキ・スポーツバイクアドバイザー 加川貴裕さん:
月に2~3個売れる程度だったヘルメットが、3月に入って20~30個、それ以上売れている店舗もあります。販売数としては10倍と言っても問題ないです

道路交通法が改正されることに伴い、13歳未満の子どもに義務付けられていたヘルメットの着用が、4月1日から自転車を運転するすべての人に対象が広がった。

その影響で、カナガキではヘルメットを買い求める人が急増。

「カナガキ」本店に並べられた自転車ヘルメット
「カナガキ」本店に並べられた自転車ヘルメット

売れ筋は…

カナガキ・スポーツバイクアドバイザー 加川貴裕さん:
どんな服装でも使えるようなカジュアルなものが売れていますね。色は抑えめで主張しないヘルメットが人気です

この店舗の一番人気は、頭にかぶる部分がマットグレーで黒いキャンバス地のバイザー(つば)が付いたヘルメット。バイザーは着脱可能で“帽子感覚”に近い。通勤や街中の自転車移動にも使いやすそうだ。売れ行き好調で生産が追い付かないという。

スーツ姿で一番人気のヘルメットを装着した宮崎隆史記者
スーツ姿で一番人気のヘルメットを装着した宮崎隆史記者

カナガキ・スポーツバイクアドバイザー 加川貴裕さん:
このヘルメットはもう在庫がなく、問屋に発注しても入ってこない状況が続いています。ヘルメットメーカーは需要過多で供給が追いついていないようですね

自転車の利用者からは戸惑いも

街の様子はどうか。自転車の交通量が多い交差点では…

宮崎隆史 記者:
自転車を利用する人は多くいますが、ヘルメットを着けている人はほとんどいません

自転車の交通量が多い広島市内の交差点
自転車の交通量が多い広島市内の交差点

今回の改正による罰則や取り締まりはなく、自転車の利用者からは戸惑いの声も聞かれた。

自転車を利用する子ども連れの母親:
知らなかったです。私は着けないかもしれない。ちょっと恥ずかしいのと、まあ着けなくてもいいかなと

母親が運転する自転車のチャイルドシートには、ヘルメットをきちんと着用した子どもが座っている。

母親:
ママもヘルメットいる?

子ども:
うん

母親:
いるそうです。家に帰って検討します

自転車を利用する人:
全然知りません。努力義務であれば私は着けない。ケースバイケースかな。今は必要ないと思います

死亡事故の6割が「頭に致命傷」

ヘルメット着用の普及に向け、広島県警は3月30日に啓発イベントを開いた。

広島市南区のショッピングモールで開かれた啓発イベント
広島市南区のショッピングモールで開かれた啓発イベント

イベントには警察官や地元の自転車チームなど約20人が参加。反射板やステッカーなどの啓発グッズを配り、ヘルメットの着用を呼びかけた。

子どもに啓発グッズを手渡す地元自転車チームの選手
子どもに啓発グッズを手渡す地元自転車チームの選手

警察庁によると、自転車が絡む事故で死亡した人のうち、約6割が頭に致命傷を負っていた。

ヘルメットを着用していなかった人の致死率は、着用していた人に比べて約2.1倍というデータもある。

しかし、2022年に広島県内で起きた自転車が絡む事故で、ヘルメットを着用していた人は7.5%と1割にも達していないのが実態だ。

広島県警 交通企画課:山本忠士 警部:
自転車に乗る際は必ずヘルメットをかぶるようにしてください。頭を守ることが自分の身を守ることにつながります

自転車ヘルメットがファッションの一部になれば、普及が加速するかもしれない。努力義務であっても「命を守るため」にヘルメット着用が求められている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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