ワシントンDCの観光シーズンの幕開けを告げる全米桜祭りが3月25日に始まった。

3月25日に開幕した全米桜祭り
3月25日に開幕した全米桜祭り
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首都のシンボルの一つワシントン記念塔周辺には、家族や友人、恋人達が集まり、写真撮影や散策、シートを広げて食事を楽しんでいた。1912年に日本から友好のシンボルとして贈られた桜を愛でる姿は、日本の花見と変わらない光景で、春の穏やかな空気と柔らかい日差しが、訪れる人の心を豊かにする。

ワシントン記念塔前で毎年行われる「凧揚げ大会」
ワシントン記念塔前で毎年行われる「凧揚げ大会」

日本ではお正月に楽しむ凧揚げ(カイト・フライング)は、満開を迎えた桜とともに楽しむのが春の風物詩で、思い思いに持ち寄った凧が、満開の桜に見守られながら青空を泳ぎ、その姿に人々は心を惹かれ、心踊らされる。年に一度の週末はワシントン市内を歓声と笑顔が包み込む。全米桜祭りは、1カ月の開催期間中、日本の文化を体験するイベントなどが開かれ、のべ150万人が訪れる。

観光需要の回復は日米交流の加速化がカギ

アメリカ国内では、新型コロナの国家非常事態宣言が5月11日に終了するが、すでに屋内外共にマスクを着用する人の姿はほとんど見かけず、人々の移動はコロナ前に回復し、活発化している。

日本とは環境の違いから脱マスク等には温度差があるが、日本の観光需要を回復させようという取り組みは、アメリカ国内でも加速し始めた。

日米国際交流・観光シンポジウム(ワシントン・3月24日)
日米国際交流・観光シンポジウム(ワシントン・3月24日)

ワシントン市内では3月24日、全米桜祭りの一環として日米間の交流・観光の再構築と強化に向けたシンポジウム(運輸総合研究所主催)が4年ぶりに開催された。日米の政府関係者や専門家が、国際情勢の変化などをテーマに交流の意義を訴えた。

日本を訪れる観光客は、新型コロナが世界中で蔓延する前の2019年は3188万人あまりで、国別では約960万人の中国が最も多い。一方2019年、アメリカから日本に172万人あまりが訪れ、日本からアメリカへは国別では最も多い370万人あまりが訪れた。このため日米間の相互交流の底上げが観光の起爆剤、生命線ともなっている。その一方、2020年から21年にアメリカから日本に訪れた留学生は、わずか124人にとどまっている。過去には、年間8900人あまりいた留学生は約99%も減少していて、対策は急務となっている。

冨田駐米大使も日米相互交流の重要性を強調
冨田駐米大使も日米相互交流の重要性を強調

シンポジウムで、ビデオメッセージを寄せた冨田駐米大使は「日本政府は観光再始動プロジェクトを発表した。世界遺産の期間限定公開や国立公園での夜間特別イベントの開催、アドベンチャーツーリズムの拡大など日本の文化や自然を満喫できるよう官民一体で観光拡大を目指す。観光は、日米関係をさらに発展させる上で人と人とのつながりを培うことが出来る」と相互交流とインバウンド拡大への意欲を強調した。

そのうえで「日本を取り巻く環境はこのところ大きく変化している。ロシアのウクライナ侵攻は、国際秩序の根幹を揺るがし、インド太平洋地域では力による現状変更の一方的な試みが行われている。そして、かつてないほど地政学的緊張が高まっている。戦略的利益を共有し、普遍的な価値を持つ日米同盟は、これらの世界的な課題に取り組むための重要な一部であり、様々な分野やチャンネルで日米交流を深めることで、より強固なものに出来ると信じている。その中で観光は重要な役割を担っている」と観光交流の重要性を訴えた。

WBC「侍ジャパン」も観光ニッポンを後押し!?

3月、WBCで日本が3度目の世界一に輝き、日本中が沸いた。アメリカでも日本対アメリカの決勝戦が生中継され、日本の歓喜の様子も伝えられた。世界一に大きく貢献したエンゼルスの大谷選手やレッドソックスの吉田選手などの活躍を楽しみに、3月30日からのメジャーの開幕には日本からも多くのファンが訪れることが見込まれる。

WBC3度目の世界一に輝いた日本を称えるNYポスト紙
WBC3度目の世界一に輝いた日本を称えるNYポスト紙

さらに日本では5月にG7広島サミットが開催され、4月からは関連の大臣会合も各地で開催される。これに合わせ、広島では海外メディアを対象に日本の伝統文化を発信するツアーが開催されるなど日本の魅力を世界に発信する機会も増えてくる。日韓関係の改善という外交要素もある。

2023年、食や文化、四季に加え、スポーツや外交の舞台という魅力も観光ニッポン復活のきっかけになりそうだ。

(ワシントン支局 千田淳一)

千田淳一
千田淳一

FNNワシントン支局長。
1974年岩手県生まれ。福島テレビ・報道番組キャスター、県政キャップ、編集長を務めた。東日本大震災の発災後には、福島第一原発事故の現地取材・報道を指揮する。
フジテレビ入社後には熊本地震を現地取材したほか、報道局政治部への配属以降は、菅官房長官担当を始め、首相官邸、自民党担当、野党キャップなどを担当する。
記者歴は25年。2022年からワシントン支局長。現在は2024年米国大統領選挙に向けた取材や、中国の影響力が強まる国際社会情勢の分析や、安全保障政策などをフィールドワークにしている。