近年問題視されている「スマホ依存」。そんな、スマホなどを使ったインターネットの使用時間の長さに応じて「子どもの学力が低下する」という研究結果が出た。「脳トレ」で知られる脳科学の専門家・東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授に話を聞いた。

スマホ常時使用は「認知機能低下しやすい」

「脳トレ」で知られる脳科学の専門家・東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授
「脳トレ」で知られる脳科学の専門家・東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授
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Qそもそも何が当てはまったらスマホ依存とされるのか
東北大学・川島隆太教授:
家族でご飯を食べているときにスマホを見てしまう状況などは、スマホ依存そのものだと思います。これは子どもでも大人でも関係ありません。

Qスマホ依存の問題点は?
東北大学・川島隆太教授:
1日中スマートフォンを使用しているということは、実際に人と会って話をしたりすることが極端に少なくなる。これは脳に対する神経がとても少ない状態。つまり、脳が使われていないので認知機能も自然に低下しやすくなると考えられます。

Qどれくらい利用するとその症状が出る?
東北大学・川島隆太教授
私たちが仙台市に住む子供たち全員を調べた結果、学力が極端に低下するということがわかっている。1日1時間以上使うと非常にまずい。一貫してスマホなどでインターネットを使う子どもたちというのは学力が低く、使い続けるとどんどん低くなっていく。使うのをやめると戻っていく、学力が上がりだしていく。こういった結果は、研究してきた15年間ずっと出ています。

1時間以上スマホ使用で「脳の発達止まった状態」に

内閣府が2022年度に実施したアンケートによると、10歳から17歳の1日あたりのインターネットの平均利用時間は「4時間41分」。回答者の8割がスマートフォンを利用しているという。川島教授が指摘する1日1時間をはるかに超えている。

川島教授の研究チームは2008年から仙台市教育委員会と合同で仙台市内の公立の小中学校や高校に通う子どもたちの学力と、「スマホの利用時間」などの生活習慣との関係を調べている。

その結果、睡眠時間と学習時間が同じ子どもでも、1時間以上スマホを利用した場合、1時間未満の子どもと比べて、全教科の平均偏差値が4.4ポイントほど低いことがわかった

さらに、仙台市内に住む5歳から18歳の子ども224人を対象に、脳の発達具合を観察した結果、毎日のようにインターネットを使っている子供は、「脳の3分の1位の領域で、脳の状態が3年前と同じ状態」つまり「脳の発達が止まっている状態」だという

3年後に同じ子どもの左右の脳を調査した画像。「赤い部分」が脳の発達に遅れが見られたところ。色が濃いほど遅れの傾向が強いことを示している
3年後に同じ子どもの左右の脳を調査した画像。「赤い部分」が脳の発達に遅れが見られたところ。色が濃いほど遅れの傾向が強いことを示している

Q一見スマホは勉強に役立ちそうですが…
東北大学・川島隆太教授
宿題をタブレットでやることは、今の子どもたちに当たり前になってきているが、勉強中にスマホやタブレットを使って勉強している子どもは、テストの点で言うと平均点に到達できない。1時間未満、ちょっとだけ使う子どもは、家出の勉強時間が長ければ点数も良くなって平均点も超えてくる。3時間毎日まじめに勉強している子で、そのうち2時間を、インターネットを使って勉強している子は、全く平均に届かないというような結果も出ている

Q理由はどんなところにあるのですか
東北大学・川島隆太教授
スマホやタブレットが、「一つのことだけに集中できるようにできていない」ということが一番の理由。元々、装置もアプリも様々なことを同時並行で行う仕様になっている。しかし、人間の脳というのは一つのことにしか集中できない。

大事なのはスマホ使用の「ルール作り」

川島教授が指摘するのはスマホなどを利用することで「気が散ってしまう」こと。子どもたちの未来のため、本当にベストなのはスマホを使わないこと、いわゆる「スマホ断ち」だという。

東北大学・川島隆太教授:                                      アメリカでは精神科医が中心になって「スマホ断ち」を家族で行うことが始まっている。子どもの習慣は家庭で作られる。学校教育の中で生活習慣を変えるのはほぼ不可能なんです。

一方で、これだけ私たちの生活に入り込んでいるスマホを、完全に排除することは難しい。そこで、川島教授は、使うのは「1日最大で1時間」「家で勉強する際にスマホは電源を切って部屋の外に出す」といったルールを、家庭ごとに作ることが重要だと話す。

東北大学・川島隆太教授
もちろん、1時間しかスマホを使わなかったとしても、勉強しなかったら成績は上がらない。一方で、少なくとも仙台市のデータでは、使う頻度を減らす、もしくはスマホ使用を辞めた翌年には、学力はしっかり挙がっている。脳というのは生活習慣を変えると途端に変わる。極端な話、翌日からどんどん変わる。今すぐにでもやっていただくと良い状態に戻っていきます。

普段の生活だけでなく、ビジネスシーンや、災害情報の取得など様々なシーンで重要な役割を果たす、私たちの暮らしに欠かすことができなくなったスマホ。悪いのはスマホの存在ではなく、「使い方」であることは間違いない。春休みを迎え、子どもたちがスマホを使う機会も増える。現状に危機感を持って、賢い使い方を改めて考える必要がある。

(仙台放送)

仙台放送
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