天皇陛下は、3月8日、皇居・宮殿で信任状捧呈式に臨まれました。
これは新たに赴任した大使が本国からの信任状を陛下に手渡す儀式で、天皇の国事行為のひとつです。
陛下は、フィジーとパキスタン2カ国の大使から信任状を受け取られました。
大使の送迎に使われる儀装馬車とは
この儀式に臨む大使たちの送迎に使われるのが皇室伝統の儀装馬車です。
コロナ禍以降、沿道に人が集まるのを防ぐため、馬車列は令和2(2020)年4月から中止になっていましたが、この日、東京駅と皇居を往復する大使を乗せた馬車列が3年ぶりに再開しました。
馬車列が皇居・宮殿に到着後、大使は儀装馬車の前で記念撮影。
乗り心地について「大変、快適でした」と話していたそうです。
大使の送迎に使われる「儀装馬車4号」。大正2(1913)年に製造され、100年以上修理を繰り返しながら大切に使用されてきました。
丸い船底型の馬車は、2頭曳きの4人乗り。外装は漆塗りで、両側には複雑な蒔絵(まきえ)の技法で作られた天皇家の家紋、16弁の菊の紋様が輝いています。
座席や天井の布地部分は、金色の綾織(あやおり)で統一されています。
「動く美術品」とも呼ばれる儀装馬車、新たに作るのは不可能と言われています。
皇室の節目の行事で重要な役割
儀装馬車は1号から4号まであり、これまで様々な皇室行事で使われてきました。
屋根に鳳凰を戴いた「儀装馬車1号」。
昭和3(1928)年、昭和天皇の即位の礼で使われました。
昭和34(1959)年、上皇ご夫妻の結婚パレードには、屋根を外した「儀装馬車2号」を使用。
令和元(2019)年、陛下が伊勢神宮で即位の報告をした時に乗られたのが、屋根を付けた儀装馬車2号です。
秋篠宮さまの立皇嗣の礼で使われたのは「儀装馬車3号」です。
宮内庁の儀装馬車は、こうして皇室の節目で重要な役割を担ってきました。
両陛下 馬車列再開に感慨、準備の職員労われ
コロナ禍で、馬車の使用が中止されていた3年間、宮内庁では、いつでも再開できるように馬の訓練を欠かさず続けてきました。
天皇皇后両陛下は、8日、外国の大使を皇居に送迎する馬車が3年ぶりに美しい隊列で走る姿を、感慨深くご覧になったといいます。 また、沿道の人たちが喜んでいる様子をうれしく思うとともに、準備を重ねてきた宮内庁や皇宮警察などの職員に労いの気持ちを伝えられたということです。
(「皇室ご一家」3月19日放送より)