行動制限の緩和や全国旅行支援を追い風に、勢いを取り戻しつつある「観光」。2022年12月の宿泊者数は4703万人とコロナ前並みに戻っている(観光庁 宿泊旅行統計調査より)。

そんな中、ビジネスホテル以上ラグジュアリーホテル未満の「個性派ホテル」が今増えている。手頃な価格帯ながら、独自のサービスがウリだそうだが、どうしてそんなことが実現できるのか、裏側を取材した。

目指すは「四つ星」実現のウラに工夫

京都・烏丸御池駅から徒歩3分の「カンデオホテルズ京都烏丸六角」。築130年の町家を改装して作られたロビーには、スーツケースがずらり。

最近は平日でもほぼ満室の稼働だそう。このホテルのこだわりは…。

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カンデオホテルズ 岡益充さん:
ただ寝るだけの三つ星ホテル・ビジネスホテルでも、五つ星のラグジュアリーホテルでもなく、我々は“唯一無二の四つ星ホテル”という中間領域にこだわっています。ラグジュアリーな要素を感じさせる上質な空間なんですけれども、リーズナブルに体験できます

1泊1室1万5000円からという手頃な価格ながら「プチ贅沢」を楽しめると人気を集めているのだ。

最大のウリだという夜通し使える大浴場には、本格サウナを完備。今行くべきサウナ「サウナシュラン特別賞」にも選ばれたそう。

客:
大浴場が遅くまで開いているのが便利。サウナは1日歩き疲れた後に最高です

このホテルでは、およそ8割の客室がシャワーのみで浴槽なし。そのため大浴場は宿泊客のほぼ全員が利用するそうで、客室のユニットバスを利用してもらうより光熱費や清掃費が抑えられているそうだ。

さらに朝食にも工夫があり、地元の仕出し店手作りの「京のおばんざい弁当」を町家の雰囲気の中でいただくという贅沢な時間を楽しめる(※朝食付きプランの予約が必要)。

カンデオホテルズ 岡益充さん:
ビュッフェとなると作る人員も必要になりますし、お弁当スタイルですと事前に確実に何人が食べるかが分かりますので全くロスが出ません

周辺に飲食店が多いため、ホテルで夕食をとる人は少ないと見込み、あえてレストランを作っていない。一方、朝食会場は夜になるとワインを楽しめるセルフバーに変身する。

カンデオホテルズ 岡益充さん:
無駄なコストをかけず、とにかくリーズナブルに楽しんでいただけるようにと

京都の街ならではの客のニーズを捉えて、ホテルで提供するサービスを取捨選択するメリハリこそが、この価格とクオリティを実現していた。

カンデオホテルズ 岡益充さん:
我々じゃなくてもできるところは、来ていただいた方に土地の良いものを紹介して、我々にしかできないことに関しては、しっかりお金をかけていくという形にしています

道の駅に観光客続々…地域にも経済効果

有名な外資系ホテルもリーズナブルなホテルを拡大。

ザ・リッツ・カールトンなどの高級ホテルを手掛けるマリオットが去年オープンした「フェアフィールド・バイ・マリオット・兵庫神鍋高原」は1泊1室1万4520円からというお手頃価格。なぜマリオットがこの場所にホテルを作ったのか。

支配人 野田忠則さん:
神鍋高原にあり、スキー場に近く、歩いて行ける所でアクティビティに適したホテルです

このホテルはスキー場に直結。夏にはマウンテンバイクなども楽しめる最高の立地で、スポーツロッカーも完備。最近、特に多いのが外国人客だそう。

香港からの宿泊客:
スノボに来ました。ゲレンデに近くて、比較的安いし新しいのでここを選びました

実は今、自然の中で体験を楽しむ旅「アドベンチャーツーリズム」が世界的なブーム。自然豊かな日本の地方都市が注目を集めている。

そこでマリオットは、外国人客の長期滞在などを狙って、シンプルでリーズナブルなホテルを日本国内23カ所に展開した。

マリオットの開業で近くの道の駅には変化が…。

道の駅神鍋高原 店長 上山敦士さん:
外国人のお客様の予約が多いようで、こちらの利用も増えてきましたね。外国の方がここまで足を運んで何かするということは今までなかったです

ホテルにはレストランがないため、道の駅の利用客が増加。地元の食材を使った「サーモンフライバーガー」などが外国人観光客にも人気で、売り上げが約2割上がったそうだ。

支配人 野田忠則さん:
今まで日帰りだった方がたくさんの時間を過ごす機会が増えました。この周辺の地域創生につながっている部分は多々あると思います

「街を楽しんで」ホテルを情報発信地に

日本を代表するリゾートホテルも負けていません。去年、大阪・新今宮駅前にオープンした「OMO7大阪 by星野リゾート」。

OMOは星野リゾートの中では比較的リーズナブルなブランドで、このホテルは1泊1室3万円から。大阪の食材を使ったお惣菜や、焼きたてのねぎ焼きが食べられる朝食ビュッフェは、平日でも大勢の客でにぎわっている。

ここで3月1日から始まったのが、アフタヌーンティーならぬ「アフタヌーンだし」。だしソムリエの資格を取得したスタッフがハンドドリップでいれる「飲むだし」と、様々なだしを使ったスイーツなどを一緒に楽しむセットだ。

OMO7大阪 by星野リゾート 八十田香枝さん:
大阪は天下の台所と言われていまして、日本中からおいしいものが集まってきた場所です。中でも、おだしの文化をより知ってもらいたくて色々な切り口で楽しんでもらえたらと

斬新なアイデアで地域のディープな魅力を発信するのには、ある狙いが…。

OMO7大阪 by星野リゾート 総支配人 中村友樹さん:
館内だけではなくて、どんどん街に出かけてもらいたいと思っていまして。地域と連携して知られざる大阪の魅力や、よりディープな魅力を感じていただくことが大事かなと

OMOブランドは、ホテルでの滞在だけではなく、街へ出かけてもらうことを重視。ホテルの中のサービスを絞り込む一方で、街を楽しむ仕掛けをたくさん用意している。

その一つが、宿泊客が無料で参加できる「ええだし出てますわツアー」。地元の人も訪れることが少ない木津卸売市場を巡る。

今回参加した、新潟県から来た夫婦。昆布やかつおぶしの店を回り、思わず財布の紐が緩んでいた。

新潟からの観光客:
ガイドブックにも載ってないところに来られたのがすごく良いですね。(大阪と言えば)お好み焼きとたこ焼きしか頭になかったので(笑)

総支配人 中村さん:
ホテルの滞在も、街にある魅力そのものも両方楽しんでいただいて、ここが旅の拠点でもあり大阪らしさや地域の情報発信地でもある、そういうホテルになっていきたいです

お財布に優しく、地域も喜ぶ「個性派ホテル」。今後も地域を巻き込みながら、拡大を続けていきそうだ。

(関西テレビ2月28日放送「報道ランナー」)

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