新生活を迎える子どものために、スマホを持たせようか検討する親もいるだろう。

また、学校で使う学習用タブレット端末が配布されることで、デジタルデバイスとの関わり方を、どう教えたらいいか悩むこともあるかもしれない。

親は心配な気持ちが勝り、つい「使いすぎてしまったら…」「ダメな使い方をしたら…」などネガティブな方向へと考えてしまいがちだ。

都内の公立小学校教諭であり、2児の親である庄子寛之さんは「スマホやデジタルデバイスに対して親と子どもの常識が違うという認識をすることが大切」と強調する。

今の子どもにとって、スマホやデジタルデバイスは日常や教育現場においてどのような使われ方をされているのか。

子どもも大人と同じように「スマホ」を使う

――スマホやデジタルデバイスは子どもにとってどんな存在?

今、小学5年生の担任をしていますが、40人いるクラス内で聞いたところ、キッズケータイやスマートフォンの所持は9割ほどでした。持っていない子が1割ですね。数年前は圧倒的に子ども用携帯電話の所持が多かったのですが、最近はスマホを持っている子が増えています。

小学校に持ってくることは原則禁止されています。普段は、習い事などに行く際に持ち歩くことが多いと思います。

子どもたちも友達との連絡にスマホ等を使うことが当たり前で、電話やメールをする以外にも動画の視聴やネット検索にも使っているため、大人と同じように子どもたちにとってもその行動が普通になっています。

学習用タブレット端末の配布により、より身近に(画像:イメージ)
学習用タブレット端末の配布により、より身近に(画像:イメージ)
この記事の画像(5枚)

――それだけ子どもたちにとってもスマホやデジタルデバイスが身近?

スマホに限らず、最近では1人1台の学習用タブレット端末が配布されました。子どもたちがそれを使いこなすことでスマホ等を使う、デジタルなスキルが高まっていると考えています。

もともとGIGAスクール構想(教育現場でのICT化)の実現で1人1台端末の整備が進められていましたが、新型コロナウイルスのまん延を機に早まりました。

自治体によってタブレット端末の機種やアプリ、ツール、授業での利活用頻度も異なり、私が勤める小学校では他よりは進んでいると言えるかもしれません。今はタブレット端末がないと授業が進まないほどです。

もちろん、スマホなどの見過ぎややり過ぎは良くなく、ルールや制限は必要です。しかし、今の子どもたちと親世代はデジタルデバイスとの関わりの密度が違うため、私たちの常識を改める必要があります。

小学校の授業でも欠かせないデジタルデバイス

文部科学省がGIGAスクール構想の実現に向けた整備・利活用等に関する状況について、2021(令和3)年10月に各自治体における「端末利活用状況等の実態調査」(確定値)を発表している。

全国の公立の小学校等の96.2%が、全学年または一部の学年で端末の利活用を開始(全学年で利活用を開始が84.8%、一部学年で利活用を開始が11.4%)。「平常時の端末の持ち帰り学習の実施状況(学校数)」も26.1%の学校が実施。51.8%が準備中で22.1%が実施・準備をしていない。

すでに多くの公立小学校等では、学習用のタブレットの利活用が進み、持ち帰って宿題や課題をこなすことも行われている。

宿題や課題の提出はタブレット端末からがほとんど(画像:イメージ)
宿題や課題の提出はタブレット端末からがほとんど(画像:イメージ)

――今の小学校で学習用のタブレット端末はどのような使われ方をしている?

もちろん紙で提出することもありますが、宿題や課題もタブレット端末からの提出がほとんどです。例えば、図画工作などで制作中のものを写真撮影して、その過程をクラウドで共有して、教師側はその進捗(しんちょく)を確認します。

また、放送委員会が流して欲しい曲のリクエストをオンライン上でアンケートを取ることもありますね。

何かを発表する際も動画を撮影して行うこともあります。その動画撮影で驚いたことがありました。授業内では撮影のみ行い、編集の方法は少し教える程度でしたが、テロップを入れてみたり、イラストを入れてみたり、エンドロールを作ってみたり、わかりやすく伝えるための工夫を重ねた動画が提出されました。

期日だけ言って、それまでに提出してもらいますが、子ども同士でデジタルスキルを学び合って勝手に進めています。その作業は家でしていることもあるかもしれません。教えた編集アプリを使って少し編集する程度かと思ったら、想像以上のできあがりでした。

より良い使い方ができるか一緒に考えることが大切だという(画像:イメージ)
より良い使い方ができるか一緒に考えることが大切だという(画像:イメージ)

――タブレット端末を渡す際、学校として注意事項など伝えている?

どこの学校もタブレット端末を使う際のルールは子どもたちにしっかり伝えていると思いますが、私はその伝え方も重要だと考えています。2021年、最初に配布する際、私の学級では「贈呈式」を行いました。

配布されるタブレット端末はある程度、機能の制限はされていますが、「使い方によっては人を攻撃することがある」ことをしっかり伝えつつ、「危険なものでもあるけれど、人を助けたり、人と早くつながるために使ったり、より良く使えば便利なもの。良い方向で安全に使っていこう」ということも伝えて、理解してもらっています。

(配布しているものも、家庭で与えるものも)子どもたちが使うデジタルデバイスは、暴力的なものを見られないようにするなどの制限は必要です。しかし、「ダメダメ」言うのではなく、どうやったらより良く使えるかを一緒に考えることが大切です。

子どもは「ダメ」と言うほど、やりたがりますし。同時に、デジタルデバイスに頼りすぎない生き方、そんな生き方もステキだと伝えることも私は必要だと考えています。

子どもがルールを守らなかったら、まずは声かけを

――庄子さんは2人のお子さんがいると思いますが、スマホ等は持っている?

中学1年生と小学校2年生の子どもがいます。私の子どもは「持ちたい」と言わないので、学習用のタブレットのみで、子どもが使う用のキッズケータイやスマホ等は持っていません。

私も一人の親なので気持ちはわかりますが、親としては「持たせたけれど、持たせたスマホ等を使って何をやっているかわからない不安」があると思います。

例えば、ルールとして「時間は30分」とか時間を決めますよね。親としては遊んでしまうと思っているからかもしれません。それでも、もし制限を超えて使っていても怒らずに、よく見て、何をしているか、まずは観察してみてください。

長時間使っているのは、真剣に宿題や課題に取り組んでいるからかもしれません。親はつい、デジタルなものをネガティブに考えてしまいがちですし、変なことに使っていないか不安で「あれはダメ」「これはダメ」と縛ってしまいます。ルールに反していると怒りたくなることもあるでしょう。

まずは「何をしているの?」「長く使っているけど、どうしたの?」など声をかけて、子どもの話を聞いてみるといいでしょう。

また、子育てにおいて「動画を見ていてくれると静かで楽」ということもあるかと思います。ただ教師としては、見過ぎないようにさせて、親子の会話を増やしてほしいという思いもありますね。

現役小学校教師で2児の父親でもある庄子寛之さん
現役小学校教師で2児の父親でもある庄子寛之さん

――もし、お子さんが「ほしい」と言ったら、スマホなどを渡す際にどんなことを伝える?

「良い使い方をしてね。それが守れないのであれば、そのときは見せてもらう。これは、親がお金を払って貸してあげているもので、あなたのものじゃないから、約束と違う使い方をしたら取り上げることがある」ということを伝えます。

そして、「あなたはより良い使い方ができると思うから信じている」と声をかけてあげます。

何かあった際は見せてもらう約束は最初にします。よく子どもも「プライバシー」や「個人情報保護」を主張してきたりしますが、「家族だから見るよ」と伝えて、見せてもらう約束をすることは必要です。

中には、家族も他人だからプライベートと距離を取る家庭もあるかもしれませんが、小学校や中学校の段階では、“子どもを守る”という意味でも見せてもらうことも重要だと考えます。

今の子どもたちは、スマホなどのデジタルデバイスと共存していくことが大事です。「ダメだ、ダメだ」ではなく「より良い使い方」を目指して使うことが大切なのです。
 

庄子寛之
東京都公立小学校教諭。
学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U-21日本代表監督としてアジア大会優勝、2019年、U-19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。著書に 『叱らない技術』『with コロナ時代の授業の在り方』(ともに明治図書出版)、『オンライン学級あそび』(学陽書房)、『子供を伸ばす「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)など多数。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。