地震と津波で甚大な被害をもたらした東日本大震災から12年。北海道では、それを上回る巨大地震の発生が切迫しているといわれている。
自治体が行った実験から、地震後の10分間の行動が命を守ることが分かった。

命守る10分間…"津波"避難の備えを

人口約5000人、太平洋に面した道東の浜中町。

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千島海溝沿いで巨大地震が起きた場合、最大で20メートルを超える津波が押し寄せると想定されている。

沿岸の地域に住む紺野英司さんと妻の恵美子さん。津波からの避難の準備を始めている。

貴重品や最低限の衣類などをまとめたキャリーケースを準備したほか、車には毛布や食料、スコップやカセットコンロなども積んでいる。

きっかけは、町が2020年に行った津波避難の実証実験だ。町では住民53人にGPS端末を付けてもらい、避難訓練を実施した。

役場や高校など高台の避難所に徒歩で向かい、ルートやかかった時間を測定する。

赤い点は避難者の動き、紫色は津波のシミュレーションだ。重ねてみると…。
地震発生から5分後に避難を開始した場合は、全員が津波到達前に避難所にたどり着いた。

しかし、10分後になると避難所から遠いところに住む住民がたどり着けず、20分後では、ほとんどの人が津波にのまれてしまった。

10分間の行動が生死を分けることが明らかになったのだ。

紺野英司さん:
避難に持っていくものは全て持って早く逃げる。それしかないなと思います

紺野恵美子さん:
自宅は通りの一番奥なので、自分の足で避難場所まで行くのにはかなり距離を感じたし、10分では間に合わない。途中で流されてしまうなと思いました

さらに、心配なのは冬道での避難だ。
避難所に向かう道は一本道だが、路面は凍結しやすく、夜間は除雪がされない。そのため車での避難が難しく、徒歩でも時間がかかるおそれがある。

紺野英司さん:
ここ一本道だから冬は吹きだまりますから。当然、車では難しい

紺野恵美子さん:
車は一列にしか並んでいけないので、先頭の車が行けない限り詰まって出られない状態になる

町は実証実験の結果を踏まえ、避難困難地域に4基の避難タワーの建設を決めた。

10分以内に避難を開始すれば、徒歩でも津波にあわずたどりつけることができる計算だ。
町は迅速な避難を呼び掛けている。

浜中町防災対策室・川村龍輝さん:
本当にあっという間なんですよね。数字だけみると意外と長いのではないかと思いますが、津波情報が発表される前に避難してもらう、早期避難を呼びかけています

北海道特有のリスク…「流氷津波」

一方で、北海道特有の津波リスクが「流氷」だ。 

浜中町でも1952年の十勝沖地震で、流氷が津波とともに押し寄せ、家屋の倒壊など被害が拡大した過去がある。

こちらの研究施設では、流氷津波の研究が進んでいる。

流氷が津波とともに押しよせた場合の実験映像では、白い氷の板が構造物にぶつかり、上へと積み重なって水位が上昇していく様子が分かる。

寒地土木研究所・木岡信治研究員:
密集した家屋や建築物があれば、氷が詰まる。そして行き場所を失った水が上に行くと、水位が上がる。(氷が)大量であれば幾重にも積み重なる。これを『パイルアップ』という

こうした流氷の影響を防災計画に盛り込むため、流氷と津波の漂流シミュレーションの開発が進められている。

寒地土木研究所・木岡信治研究員:
まだ開発段階ですけど、1952年十勝沖地震の(浜中町)琵琶瀬湾にある流氷の再現。いったん、押し波で流氷が陸に遡上(そじょう)していることがわかる。そして、引き波でも一部の流氷が残るとアイスジャム、パイルアップがどこでできやすいか推定することでハザードマップ。例えば、避難路、避難施設の配置計画、重要構造物の配置計画等に生かされればいいと思っている

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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