3月1日、埼玉県の中学校で教員が切りつけられた殺人未遂事件では、17歳の男子高校生が逮捕された。「誰でもいいから人を殺したいと思った」と供述している今回の事件は、過去に起きた少年事件とも共通点があった。

犯罪心理学の専門家「早く気づいて専門医に診てもらうことが大事」と指摘

校庭に並んで座る生徒たち。校舎の廊下には、鑑識作業にあたる警察官の姿も…。

<中学校からの110番通報の内容>
「ナイフを持った者が校内に入ってきた。ケガ人がいる」

事件が発覚したのは1日昼過ぎ、埼玉県戸田市の市立美笹中学校から入った110番通報だった。

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試験中の教室に刃物を持った男子高校生が侵入。試験監督の男性教員(60)ともみ合いになり、刃物で上半身を複数回切りつけた。

男性教員は大ケガをし、男子高校生は殺人未遂の現行犯で逮捕。さいたま市に住む17歳だった。

<男子高校生>
「誰でもいいから人を殺したいと思った」

調べに対して容疑を認め、「無差別殺人への憧れがあった」という趣旨の話もしている男子高校生。

事件の前、現場近くでは不審な事件が起きていた。

さいたま市では2月中旬以降、小学校や公園などで切断されたネコの死骸の一部などが相次いで見つかっていた。男子高校生は猫を殺したことについて、自分がやったという趣旨の供述をしているという。

「動物への虐待」から「殺人」へとエスカレートしたのか。犯罪心理学の専門家は、過去の少年事件との類似点を指摘する。

関西国際大学の中山誠教授:
ネコですね、ネコの動物虐待。「酒鬼薔薇」の場合も全く同じような動物虐待をいくつか繰り返しています

1997年、神戸市須磨区で5人の小学生が死傷した連続児童殺傷事件。

逮捕されたのは「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」と名乗った当時14歳の少年だった。

神戸家裁は、思春期の性的衝動に攻撃的傾向が結びついたことが、犯行の重要な要因になったと指摘。

少年は、のちに著書の中で「ネコ殺しに飽き、次第に人間を壊してみたい、そのことしか考えられなくなった」と明かしていた。

中山教授は、動物虐待から殺人への移行は、少年事件では共通してみられる特徴の1つだという。

中山誠教授:
(人の死に)異常に関心を持つ。人が死んでいく過程を見たい、自分で殺してみたいというところにつながってきて。一般の人にはとても考えられないような動機なんですね

2014年、名古屋大学の元女子学生(当時19)が、宗教の勧誘で知り合った高齢の女性を自宅に呼び寄せ、殺害した。

元女子学生は高校時代にも、同級生の男女2人に劇物を飲ませたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われ、無期懲役の判決が確定。

<元女子学生>
「高校生の時から(人を)殺さずにはいられないという気持ちが続くことがあった」

裁判では、発達障害などがあり、中学生の時には神戸の事件の元少年に尊敬の念を抱いていたなど、幼いころから殺人への強い興味を持っていたとされている。

今回、埼玉県で起きた少年による重大事件。その背景には何があったのか…。

中山誠教授:
あまり逃走しようという意思がないのは無差別大量事件の特徴ですけども、それとつながるとは今回はちょっと思えないので。なぜ中学校を昼間の授業中に襲ったのか、難しいことをあえてやっているので。何かそこに動機があるのか、ないのであれば緻密な計画性はないと思います

今回の埼玉の事件、神戸の事件、名古屋の事件には、いずれも前兆があった。

事件を未然に防ぐために、私たちには何ができるのか。

中山誠教授:
予兆というか、ちょっとおかしいなと思った時に気付いていれば、そこでとめられたと思うんです。早く気付いて、専門医に診てもらうことが一番大事だと思います。
多いのは共感性が低いということですかね、他人の気持ちになって考えられないとか。でもそういう子はたくさんいるので、どこから異常でどこから正常か、線を引くのは非常に難しいと思います。
やっぱり上手に話を聞いてあげるということです。「そんなことしてはダメ」「あんなことしちゃダメ」「これもダメ、あれもダメ」「そんなことをしているからお前はダメなんだ」みたいなことを言うと、もう子供は話をしなくなりますから。何でもとりあえず受け入れて、ひとまず聞き入れて、それでちょっと考えさせる。あまりその子のやったことを否定しない。いったんは受け入れるということも大事だと思います

ジャーナリストの大谷昭宏さんも、次のように指摘する。

大谷昭宏さん:
周りでおかしいことが起きていないか、前兆をどう見破るか「社会の目」が一番大切

(東海テレビ)

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