自民党の田村憲久元厚労相は26日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、少子高齢化が今後も急速に進むことを前提として早期に「異次元の経済成長モデル」をつくる必要があるとの考えを示した。

田村氏は「現役世代、生産年齢人口が急激に減っていくことは間違いない。社会システムも動かなくなる。労働投入量は2020年から40年までで約2割弱減る」と指摘。「仮に2030年に出生率が2%になったとしても急激な減り方は止まらない。50年後、60年後の減り方を緩やかにしようということをいまやっている」と説明した。

東京都が2023年度に健康な女性の卵子凍結にかかる費用を1人あたり30万円程度助成する方針であることに関し、田村氏は「全ての人に対して、しかも自分がいつ子どもを産むかの選択のために、(出産に至る)可能性、確率がすごく高くないというものであればそれはなかなか難しい。安全性や効果はどうなのか。国民的な議論が必要だ」と述べ、国レベルでの助成には慎重な姿勢を示した。

自身もやむを得ず卵子凍結を選択した立憲民主党の塩村文夏参院議員は、「精神的、体力的にものすごい負担があること、必ずしも子どもが生まれるとは限らないことも分かった上でかける保険だ」との認識を示した。

番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は、健康な女性の卵子凍結への助成について「チャイルドペナルティー(出産・育児に伴う所得の低下)が女性にとってあまりに厳しい状況から考えれば、いま働きたい女性を支えるためにも『異次元の少子化対策』に組み入れるべきだ」と強調した。

一方、番組では「朝型勤務」の導入など大胆な働き方改革で、生産性の向上や社内出生率の好転を実現している大手総合商社、伊藤忠商事の取り組みをVTRで紹介。田村氏は朝型勤務について「社会全体が健全になるためにあるような制度だ」と評価し、「大きな価値の転換という意味では意味がある。進めていきたい」と表明した。

橋下氏は少子化対策の一環として、男性が夜に無制限に残業することに制限を設けるべきだとの考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

田村憲久氏(元厚労相、自民党衆院議員):
僕はあまり「少子化対策」という言葉は好きではないので、「子育ての様々な施策」と言っている。さまざまな形で(出生数を)増やしていっても、現役世代、生産年齢人口が急激に減っていくことは間違いない。社会システムも動かなくなる。一番心配なのは経済だ。労働投入量は経済成長の大きなファクターだが、2020年から2040年までで約2割弱減る。急激に労働投入量が減っていく中で経済を成長させるには、それこそ次元の違う、異次元の経済成長モデルを早期に作らなければいけない。そういう時期にきている。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
日本政府がずるいのは、現実に実現できないような目標を掲げ続けていること。今の合計特殊出生率をみたら人口1億1000万人の維持などできない。人口減を緩やかにしていくこと。同時に、人口が減ることを前提として本当にこの日本社会をどうするのか、役所組織をどうするのか、物流をどうするのか、教育をどうするのか。政府は1億1000万人維持(が前提)だから、人口が減る日本社会を想定した議論ができていない。プランBでいいから現実的な目標をきちんと置かないといけない。            

田村氏:
岸田内閣で是非ともやっていかなければならない課題だ。これがあって、こういうふうにすれば経済成長できるよねということを、ある程度国民の皆さんに理解いただき、納得いただければ、また子どもを産み育てる社会になるよねという話にもなってくる。

橋下氏:
人口減を前提として・・・。

田村氏:
もちろんだ。仮に2030年に出生率が2%になったとしても、この急激な減り方は止まらない。50年後、60年後の減り方を緩やかにしようということをいまやっている。国家としてある程度維持できる規模まで何とかして行きたいというのが、今の様々な対策であり、働く人たちが急激に減っていくのは間違いない。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
少子化対策が問題となる中で、東京都などは(健康な女性の)卵子凍結に助成金を出す方針を出している。

塩村文夏氏(立憲民主党参院議員):
私自身も卵子凍結を選択した。39歳になってあとがない、これからも政治の世界でやっていくのであれば、やっておかなければという思いでやったが、やはり簡単にお勧めできるものではない。非常に大変だし、必ず出産に至るのかと言われれば、私はまだ至っていない。(健康な女性の卵子凍結は)否定するものではないが、本当に保険の保険だというように考えておいた方がいいと思っている。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
リスクやデメリットがあまり詳しくわからないという声も聞く。
            
塩村氏:
必ず出産に至るものではない。卵子を凍結したあとに(時期をみて融解し)受精させて、また体の中に戻す作業がある。精神的にも体力的にもものすごい負担になる。それを理解した上で、必ず子どもが生まれるということではないことも分かった上でやる保険だと思う。

橋下氏:
医学的なリスクを明らかにする必要はあると思うが、チャイルドペナルティーが女性にとってあまりにも厳しい状況から考えれば、産む時期を考えたい、いま働きたいという女性を支えるためにも「異次元の少子化対策」に組み入れるべきだと思う。

塩村氏:
「異次元の少子化対策」に入るのはマイナスではないと思うが、それでもやはり大変だということは知っていただきたいと(卵子凍結を選択した)当事者として申し上げる。

松山キャスター:
卵子凍結にかかる費用だが、取材したクリニックでは検査などを含めて50万から60万円かかるとのこと。東京都は1人30万円の助成金を200人を対象に出すことを検討しているという。妊娠に何らかの支障がある人だけではなく、健康な女性の卵子凍結についても対象とする方針。税金を投入することについて、政府としてやるべきなのかどうか。
            
田村氏:
いま、AYA世代(思春期や若年成人世代、概ね15歳~39歳)の女性で、がんを患いどうしても子どもを産みづらい場合、妊孕性(妊娠するために必要な能力)温存療法の研究事業として補助金を出している。ちょうど私が厚生労働大臣だった時に様々要望をいただいて始めた。そういう致し方がない人たちに対しては(卵子凍結への助成は)あるのだが、全ての人に対して、しかも自分がいつ子どもを産むかの選択のために、可能性、確率がすごく高くないというものであれば、それはなかなか(政府としての助成は)難しいと思う。これから様々な形で検証していき、安全性や効果はどうなのか、これは意味があるなということになれば、税を使うこともありえるかもわからないが、かなり国民的な議論が必要になる。

橋下氏:
田村さんの意見は多分、国会での主流だと思う。しかし、女性議員が国会の半分程度を占めれば、田村さんの意見はひっくり返るのではないか。やはり女性議員の意見と男性議員の意見は違うところもある。そういう意味でも女性議員が増えなければいけない。

塩村氏:
本当にそうだ。私は当事者として思うのだが、田村さんの意見もよく分かるので、しっかり議論して方向性を出していく。そういうタイミングに来ているのではないか。

橋下氏:
政府は様々な働き方改革のメニューを出しているが、伊藤忠商事は「朝型勤務」にピンポイントに力を集中させて、(生産性向上や業績アップ、社内出生率向上など)これだけの成果を生んでいる。日本全体で夜の労働の非効率さに意識を向けて、これをやめていくことが一つ選択になると思うが、政治家(の仕事)はことごとく夜の仕事だ。この点を政治家から変えてもらわないと(いけない)。

田村氏:
私は最近午後9時ごろに寝ている。働き方改革の一つの大きな目的はこれだ。女性が長時間労働をしなくてすむとキャリア形成しやすくなる。男性が長時間働いて、それで出世していくという話になると、女性はそれに合わせられない。どうしたって子どもを産むのは女性にしかできないことなので、それ(長時間労働)は非常に負担になる。もちろん男性がある程度時間的に楽になれば、子育てに参画できることともそうなのだが、女性に産もう、一緒に育てようという意識になってもらえるところに非常に大きな意味がある。「女性のため」というよりは「社会全体が健全になるため」にあるような制度なので、これ(「朝型勤務」)は一つ大きな価値観の転換という意味では意味があると思う。進めていきたい。

松山キャスター:
民間企業の取り組みとして、男性も女性も同じように「朝型勤務」をすることが(狙ったものではないものの)結果的に社内出生率の向上につながっている。
            
塩村氏:
素晴らしいと思う。永田町、国会は夜にすべて物事が決まると言われていて、ここはしっかり変えてもらいたい。(VTRでは)女性だったが、男性も午後4時に仕事を終えて子どもを迎えに行くことができる。

梅津キャスター:
独身の人も自由な時間をつくれるという。働き方改革により、例えば、転職に向けた勉強もできる。

橋下氏:
女性の社会参加を高めるためのクオータ制には賛否様々議論があるが、僕は賛成だ。もう一つ、男性に対しては、夜に無制限に働くことができるということに制限をかけるというのも(少子化対策として)重要だと思う。 

日曜報道THE PRIME
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