福島市でカラスの群れによる「ふん害」などが発生している。原因となっているのは、対策が難しい「ミヤマガラス」ではないかという。専門家は「カラスの悲鳴が有効」「春になればいなくなる」との見解を示す。人間とカラスの攻防戦の行方はいかに?

歩行者は頭上を警戒

夕暮れ時、福島県福島市の県庁周辺に現れたカラスの大群。道行く人の視線は上に向けられ、落ちてくるものを避けるように歩いていた。

夕方 福島市中心部に現れた”黒い大群”
夕方 福島市中心部に現れた”黒い大群”
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近くの大学に通う学生は「ぼとって音がして、なんだと思ったら“ふん”をされていて、コンビニに寄ってトイレで落として帰った」とカラスの”落とし物”に”憤慨”した様子。

「ぼてっ」カラスの”ふん”が落ちてきた
「ぼてっ」カラスの”ふん”が落ちてきた

毎日清掃しても追いつかない

SOSを出したのが、福島市の福島学院大学。駅前キャンパスの窓や壁、周辺のベンチや歩道にも…あちこちにカラスの“ふん”がこびりついていた。2022年秋頃から、大学側も毎日掃除しているが、まったく追いつかない状況だ。

駅前キャンパスの窓にカラスのふん
駅前キャンパスの窓にカラスのふん

この状況に学生は「綺麗になったなって思っても、その数日後とかにはふんが散らばっていたり、臭いが発生したりするので、何とかしてほしい」と話す。

毎日のように清掃してもすぐに”ふん”だらけ
毎日のように清掃してもすぐに”ふん”だらけ

この事態を受けて、福島学院大学は福島市に対して要望書を提出。カラスの追い払いやゴミ集積所の適正管理など、被害防止のための具体的な取り組みを求めた。

福島学院大学・桜田葉子学長:教育の場というところで、衛生上も大変危惧しております

カラス対策の要望書を福島市に提出する福島学院大・桜田学長
カラス対策の要望書を福島市に提出する福島学院大・桜田学長

対策を講じるも現れた大群

福島市では、専門家による被害調査などを行うため2023年度予算に対策費を盛り込むことにしている。
また、すでに対策を講じていて、福島市中心部のJR福島駅とパセオ通りで特殊な波動でカラスを追い払うための装置など設置している。

対策として特殊な波動でカラスを追い払う装置を設置
対策として特殊な波動でカラスを追い払う装置を設置

それをかいくぐり現れたカラスの大群、なぜこの場所に集まっているのか?福島市の「小鳥の森」のレンジャー、増渕翔太さんに聞いた。

カラスは、世界に約130種類、日本には7種類いるという。日本で見られる代表的なカラスは「ハシブトガラス」「ハシボソカラス」で、人間が出すゴミをエサとして市街地に現れるカラスとされている。

日本で見られる代表的な「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」
日本で見られる代表的な「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」

一方、今回のように冬の時期に大量な数のカラスが見られる場合「ミヤマガラス」の可能性が高いとのこと。越冬のために、中国などからほぼ全国に飛来するカラスだ。
ミヤマガラス最大の特徴が「群れ」の数だ。他のカラスと比べても群れの数が多く、多いと1000羽に迫ることもあると言われている。この群れが、日中は畑などにいて夕方にかけて駅周辺に移動し「家」としている可能性が考えられるという。

越冬のため大陸から飛来する「ミヤマガラス」
越冬のため大陸から飛来する「ミヤマガラス」

ミヤマガラスの生態

環境省は自治体の担当者向けに「カラス対策マニュアル」を作成している。そこには「カラスはおもに、ハシブトガラスとハシボソガラスです」「ミヤマガラスは西日本、とくに九州の平地に冬鳥として訪れ、大きな群れで見られることもある。最近では東北地方や関東地方でも記録が増えています」と記載されていた。

環境省は自治体の担当者向けに「カラス対策マニュアル」を作成
環境省は自治体の担当者向けに「カラス対策マニュアル」を作成

カラス界のニューカマー「ミヤマガラス」の生態について調べてみると、体長は40~50センチ、昼は単独・夜は集団行動をとる「ハシブトガラス」「ハシボソガラス」と違い、昼夜ともに集団行動をするという。ゴミをあさることはせず、日中は田畑・夕方は電線・夜は山の中のねぐらへ帰るという。

ミヤマガラス 体長は40~50センチ、昼夜ともに集団行動
ミヤマガラス 体長は40~50センチ、昼夜ともに集団行動

中間地点の駅前がねぐらに

では、なぜ福島市のカラスは山へ帰らないのか?佐賀大学農学部の徳田誠准教授によると「街灯があり天敵がいないので、寝床が山の木から街の木になった可能性がある」という。
“ふん”被害が集中している福島駅東口は、再開発中のため夜は静かで最高の寝床になっていることが考えられる。

天敵がおらず 夜は静かで最高の寝床に
天敵がおらず 夜は静かで最高の寝床に

対策に難しさ…悲鳴が有効!?

佐賀市では市街地にスピーカーを設置し「カラスが警戒しているときの鳴き声」を流し、追い払う実証実験を始めている。一定の効果があったが「ねぐら」の移動には至っていないという。一方熊本市では、過去にこの方法で約9割の移動に成功したという。

「ミヤマガラス」への効果的な対策は難しいとも言われているが、福島市小鳥の森・増渕さんによると、「カラスの悲鳴」を聞かせる「ディストレスコール」という方法も群れを追い払うために有効ではないかという。

カラスの悲鳴を聞かせる「ディストレスコール」が有効か
カラスの悲鳴を聞かせる「ディストレスコール」が有効か

春になれば収束 しかし来シーズンも

さらに佐賀大学の徳田准教授は「春になると大陸に帰るので“ふん害”はおさまる」との見解も。「ミヤマガラス」は渡り鳥、春になれば中国やロシアへ帰っていくという。しかし来年の冬には戻ってくる可能性もあり、対策が急がれる。

ミヤマガラスは渡り鳥 春になれば中国やロシアへ
ミヤマガラスは渡り鳥 春になれば中国やロシアへ

(福島テレビ)

福島テレビ
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