政府が「少子化対策」の議論を進めているが、これから子どもを育てる可能性がある若者は「子どもを持つこと」について、どのように考えているのだろうか?

公益財団法人「日本財団」が昨年12月、全国の17歳~19歳の男女1000人を対象に実施した調査で「将来、子どもを持つと思う」という回答は46%だったことが分かった。

「将来、子どもを持ちたいと思いますか」との質問に対しては、男性で6割強、女性で6割弱が「将来、子どもを持ちたい」と回答。一方で、「実際には、自分は将来、子どもを持つと思いますか」という質問に対しては、「持つと思う」との回答が男女とも4割台にとどまっている。

つまり、「実際に持つ」という回答は、「持ちたい」に比べて、2割ほど少ないということだ。

将来、子どもを持ちたいか、持つと思うか(提供:日本財団)
将来、子どもを持ちたいか、持つと思うか(提供:日本財団)
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また、「子どもを持つと思う」と答えた人に、その際の「障壁」を聞いたところ、最も多かったのは「金銭的な負担」で、次に多かったのは「仕事との両立」だった。

将来、子どもを持つうえでの障壁(提供:日本財団)
将来、子どもを持つうえでの障壁(提供:日本財団)

一方、「実際には子どもを持たないと思う」と回答した人に「将来、子どもを持たない理由」を尋ねたところ、女性で最も多かったのは「金銭的な負担が大きいと思うから」、男性は「パートナーがいないと思うから」だった。

将来、子どもを持たない理由(提供:日本財団)
将来、子どもを持たない理由(提供:日本財団)

日本財団は2018年から「全国の17歳~19歳の男女」を対象にした調査を継続的に行っているが、子どもを持つことに関する質問は今回初めてだという。
今回の調査で「子どもを持ちたい」は男性で6割強、女性で6割弱。一方で、「子どもを持つと思う」は男女とも4割台にとどまっている。この結果は、どのように受け止めればいいのか?

また、今回の調査結果を踏まえ、今、どのような少子化対策が必要なのか? 公益財団法人「日本財団」の担当者に話を聞いた。

「子どもを持つと思う」の割合が低くなった背景

――「全国の17歳~19歳の男女」を対象にした調査を2018年から継続的に行っている理由は?

選挙権の年齢の引き下げを受け、2018年10月から全国の17~19歳1000人を対象に、インターネットで価値観、政治・選挙に対する態度、社会課題の理解などを継続的に調査しています。

民法の改正に伴い、2022年4月に成人年齢が18歳となり、次代を担う若者の意識を知り、記録する重要性が高まっていると考えています。


――“子どもを持つ”ことに関する質問を、ニュアンスを微妙に変えて、2つ(「将来、子どもを持ちたいと思いますか」「実際には、自分は将来、子どもを持つと思いますか」)設けた理由は?

実際に子どもを持つかどうかは、経済的・心理的な事情や家族・パートナーの意向などの影響を受けるため、本人の「子どもを持ちたい」という希望とはズレがある可能性を考慮して、2つ、質問を設けました。

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――「子どもを持ちたい」と「子どもを持つと思う」の回答のギャップは、どのように受け止めればいい?

この2問のギャップは、本人の希望と、経済的・心理的な事情や家族・パートナーの意向などとの間にあるギャップを示す数字だと考えています。

「持つと思う」人の割合が低くなった背景としては、「将来子どもを持たない理由」に対する回答が参考になります。男女とも、金銭的な負担、精神的な負担、パートナーの不在が上位3つに挙がり、特に女性は金銭的・精神的な負担を挙げた人の割合が高く過半数を超えています。

「子どもを持ちたい」という意向・希望を持つ若者ですら、6割に留まる中、少子化対策においては、子育てに係る金銭的な負担感を取り除くことはもちろん、保育制度や日常の家事・育児など幅広く精神的な負担を下げる施策も、重要であると言えると思います。

子育て費用や子育て中の働き方に過半数が懸念

――“子どもを持つ”うえでの「障壁」については、どのように受け止めている?

「持つと思う」と回答した、子育てに積極的である層においても、子育て費用や子育て中の働き方について、過半数が懸念を持っていることが明らかになりました。

仕事との両立への懸念は、男女の間でも差は小さく、共働き世帯が年々増加する中で、現在の18歳前後の若者は性別を問わず、子育て中の働き方への関心が高いことを示唆する結果かと思います。

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――「将来、子どもを持たない理由」については、どのように受け止めている?

男女とも上位3項目は一致しておりますが、女性では「金銭的な負担」と「精神的な負担」が過半数と、特に高くなりました。

今回の調査では、この男女差の背景までは聴取しておらず、明らかにすることができておりません。一般論として、女性は、子育てに必要になる費用負担や家事・育児の負担などについて、より深刻に・現実的に捉える傾向にある可能性などが考えられると思います。

「幅広く精神的な負担を下げる施策も重要」

――今回の調査結果を踏まえ、どのような少子化対策が必要だと思う?

子育て積極層でも消極層でも、男女を問わず、経済的な不安が上位に挙がる中で、そうした不安の裏返しとして、実施してほしい政策としては「教育無償化」や「手当の拡充」といった経済的な支援が多く挙げられています。

子育ての意向を高めるには、まずは子育てに関する金銭的な負担感を取り除くことや、職場での働き方の改善などが不可欠です。

また、「子どもを持ちたい」という意向を持つ人が6割にとどまっている点も、大きな課題です。保育制度や日常の家事・育児など、幅広く精神的な負担を下げる施策も重要であると推察します。

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今回の調査で明らかになった、18歳前後の若者の「子どもを持つこと」に関する意識。「子どもを持つと思う」人があげた障壁や、「子どもを持たないと思う」人の理由を踏まえることが、現実に即した少子化対策になるのだろう。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。