自民党の佐藤正久元外務副大臣は19日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、北朝鮮による18日の弾道ミサイル発射について、「実戦配備、大量配備の段階に入った。米国にとって脅威の段階は格段に上がる」との見解を示した。

同席した防衛研究所の高橋杉雄氏は「技術的なテストの段階ではない。ある種不意打ちの発射演習で、実戦で使う準備だ。それぐらい技術的には信頼度が高いということ」と述べた。

北朝鮮は19日、前日に発射した弾道ミサイルについて、ICBM(大陸間弾道ミサイル)級の「火星15」型と発表した。

一方、米国が中国の偵察気球を撃墜したことに関し、佐藤氏は「(中国は)気球を使ってミサイル攻撃のための情報を得ることもできる」と指摘。高度50kmまで上がる気球もすでに存在することに触れ、「(高度)50kmでは戦闘機から撃つミサイルでは多分届かない。地上から数十億円するミサイルでないと届かない。(偵察気球が)群れで来た場合にどうするのか。費用対効果が悪すぎる」と話し、対応の難しさをにじませた。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
北朝鮮メディアは、ミサイル総局がICBM(大陸間弾道ミサイル)級「火星15」型の発射訓練を18日に行ったと伝えた。防衛省によると、ミサイルは66分間飛翔、飛行距離は約900km、最高高度は約5,700kmでロフテッド軌道で発射されたとみられている。米国全土が射程に入る可能性も指摘している。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、当初は「火星17」型ではないかとの情報があったが、北朝鮮の労働新聞は19日、「火星15」型で、新設されたミサイル総局が訓練を実施したと発表した。
            
高橋杉雄氏(防衛研究所防衛政策研究室長):
「火星15」はすでに何度も(発射が)成功しているミサイルで、技術的なテストではない。今回、北朝鮮側のリリースで注目されるのは、朝8時に発射命令が出され、ある種不意打ちの発射演習であったこと。朝8時に命令が出て、準備をして、約10時間後に発射に成功している。「火星15」は液体燃料ミサイルなので、燃料を注入してTEL(発射台)を展開して撃つという非常に即応性が高いことをチェックしたということが言える。

松山キャスター:
「火星15」は全米ほぼすべての領域を射程に入れるとみられている。
            
高橋氏:
弾頭重量によるが、米国には届く。不意打ち演習をやるというのは実戦の準備だ。それほどもう技術的には信頼度が高いということだ。        

佐藤正久氏(元外務副大臣、自民党前外交部会長):
北朝鮮の発表が仮に正しいとすれば、「火星15」も「火星17」もともに大量配備、大量生産の段階に入ったと言える。「火星15」は今まで射程約1万キロ以上と言われたものが、1万4,000キロとなると、「火星15」であれ、「火星17」であれ、米国全土を射程に入れることになる。米国にとって脅威の段階が格段に上がる。先の軍事パレードで「火星17」の発射用車両は11確認された。「火星15」の発射用車両はそれよりも多い。米国が一撃ですべての車両を叩くことは難しい。ICBM級の弾道ミサイルを移動して発射できるわけで、北朝鮮からの報復があることを示唆している。脅威の段階が一段上がったと言える。

木下康太郎キャスター(フジテレビアナウンサー):
米国が撃墜した中国の偵察気球は全長約60m、搭載物の重さ900kg超と非常に大きいものだった。飛行機や気象現象などが起きる高度を超える高度約18kmのところを飛んでいた。気球は中国の海南島から飛んで太平洋を越え、米国本土を横断して結果的に4日、サウスカロライナ州沖で撃ち落とされた。注目されるのは米国本土での飛行ルートだ。空軍基地や核ミサイルが配備されている場所など軍事的に重要な施設の上空を飛行していたことが分かる。

中国の狙いについて、元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「中国は、気球を武器化できる可能性があるか実習しているのではないか」と指摘している。

松山キャスター:
米国は気球について「中国が偵察用に使っていた」と主張している。香田氏は将来的な「武器化」の可能性を指摘している。
            
櫻井よしこ氏(ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長):
2015年だったと思うが、中国は戦略支援部隊という新しい部隊をつくった。中国人民解放軍の雑誌「解放軍報」に、大きく分けて三つの役割が書かれていた。サイバー、偵察衛星、宇宙戦略部隊もこの中に入るということだった。これはのちに習近平国家主席が言った軍民融合の組織だ。彼らは民間用の気象情報(の収集)と言ったが、中国では気象衛星は中央軍事委員会が所管する。まさに軍事のためのバルーンだった。基本構造として、中国の法体系としても中国共産党の決定としても、最初から軍事目的ということは打ち立てられている。香田氏の指摘はそのとおりだ。

佐藤氏:
それ(軍事目的)はもう明確だ。「非対象戦」と言われるが、米国が得意でない分野、深海、成層圏や中間圏といわれる高高度の上空の部分、ここに何らかの武器を置きたいという(中国側の)思惑は前からあって、高高度の気球は低すぎず、高すぎずという点で非常に有効だ。人工衛星と違い、一箇所に長くとどまることができる。衛星より通信傍受に優れている。移動スピードが遅いがゆえにレーダーに映りにくい。気球を使ってミサイル攻撃のための情報を得ることもできる。通信妨害、ジャミングもできる。気球を武器として使うエリアとしては、高高度の成層圏、あるいは中間圏というのは軍事的にも非常に大事なエリアだ。

櫻井氏:
米国もそうだが、中国は高層圏の風の流れの地球マップを完璧に作っていると言われている。どこのエリアで、どの高度に気球を乗せるかによって風の流れでこっちに行くとか、あっちに行くとか、あっちに行かせたい時には高度を少し下げたり、上げたりということをしているわけだ。国家基本問題研究所の奈良林直氏という原子力の専門家が言っていたが、今回の中国の気球は恐らく二重構造になっているだろうと。大きな外側の気球の内側にヘリウムがたくさん入っている小さな気球があり、コンプレッサーでヘリウムを出し入れすることで、高度を変えて乗せたい風の流れに乗せる。ヘリウムが外側の大きな気球から出ることはなく、循環させるので非常に長い時間飛び続けることができるという。彼らは今回、おおよそのルートを全部計算して米国の軍事施設の上空を飛んだのだろう。また、南シナ海から日本の上空に飛ばす時は、必ず台湾の上を通っている。彼らは非常に戦略的に戦術的にもよく考えてやっているなと思う。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
自然を研究しているというのはその通りだと思う。最先端のテック企業の人たちの話では、数年もかからないうちに人工衛星を通じて気球をコントロール、操作できるようになるそうだ。

松山キャスター:
米国は撃墜前に中国側が完全にこの気球をコントロールしていることを確信していると、国防総省が言っていた。かなり発達したものだという可能性はある。

佐藤氏:
成層圏ドローンというものができていて、高度20km、30kmぐらいを100日間飛行できる。気球は一週間だ。100日間滞在できる無人機にどう対応するか。主権国家として、日本の上空にスパイ気球やスパイドローンが遊弋することを絶対に看過してはいけない。

松山キャスター:
今回米国が撃墜した気球は高度約18kmを飛行していた。その高度だと、自衛隊のF-15戦闘機でも何とか撃墜することは可能だと言われている。気球によっては高度50kmまで上がることができるものも。

佐藤氏:
日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)は高度50kmまで成功している。

松山キャスター:
自衛隊の能力で高度50kmの気球撃墜は可能なのか。

佐藤氏:
(高度)50kmになると、地上から発射するミサイルでないと届かない。戦闘機から撃つミサイルでは多分届かない。地上から発射する射程100kmを越えるようなミサイルは数十億円する。それで気球を撃墜するのか、となった場合、費用対効果は悪すぎる。気球が群れで来た場合はどうするのだ。全部ミサイルで撃ち落とすのか。相手からすれば逆に日本に負荷をかけることができる。(武器使用の)運用の話と法律の世界、現代の技術にマッチングする形でやらないと、日本の主権、公共の秩序維持を守れない時代が来ている。

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