2023年から広島県の公立高校入試が変わる。これまでの推薦入試が廃止され、学力テスト重視に。さらに、社会で求められる能力の流れに沿って「自己表現力」も試される。これを受験生はどう受け止めているのか。

「あなたなら…」記述式で難易度アップ

まずは近年の入試問題の傾向を見てみよう。例えば、2022年の広島県公立高校入試の社会の学力テスト。一部抜粋で「日本の食文化である和食の価値が世界に認められた」という話題から始まり、「和食を継承するために、あなたならどのような取り組みを提案しますか」が問題だ。

広島県公立高校入試より(2022年 社会)
広島県公立高校入試より(2022年 社会)
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用意された答えの中から選ぶのではなく、“自分の意見”を述べる必要がある。問題文は長く、記述式がほとんど。広島県公立高校入試5教科の平均点が、2022年では250点中107.5点と、半分にも満たない年が多い。

この状況を受験のプロはどう見ているのか?学習塾「田中学習会」の浅尾智也先生に話を聞いた。

田中学習会・浅尾智也 先生:
かつて、お父さん・お母さんの世代は比較的点数を取りやすい問題だったが、ここ数年で入試が非常に難しくなってきている。広島県は、ほかの都道府県と比べても平均点が低くなっています

田中学習会・浅尾智也 先生:
大学入試がセンター試験から「共通テスト」という名前に変わった。センター試験は知識があれば解けるマークシート形式だったが、共通テストではすべて記述式とまでいかなくても“考えさせる問題”が非常に増えてきた。大学入試が変わったから、それに合わせて中学生・高校生にも考えさせる問題に変わってきているのではないでしょうか

内申点よりも学力テスト重視

入試が“考えさせる問題”へと移行する中で、広島県の公立高校入試はどう変わるのか。
2022年まで行われていた入試制度は、2月の「選抜Ⅰ」いわゆる推薦入試と、3月の「選抜Ⅱ」一般入試に分かれていた。それが2023年から推薦入試は廃止され「1次選抜」に“一本化”される。

この「1次選抜」の内容も大きく変わる。変わるポイントは「学力テスト重視」と「自己表現が加わる」の2点だ。
まず、学力テスト重視について。これまでの評価は、学校の成績などから作られる調査書いわゆる「内申点」と「学力テスト」の評価の割合が“1対1”だった。しかし2023年からは「学力テスト」と「内申点」そして新たに「自己表現」という対面での試験が加わり、評価の割合は“6対2対2”に。試験当日の学力テストがより重視されるようになる。

学力テストはこれまで2日間の日程で行われていたが、2023年から1日で5教科を受けるようになるため集中力もカギになってきそうだ。

「自己表現」は5分以内のプレゼン

学力テストに新しく加わる「自己表現」の試験は、基本的に学力テストの翌日に行われる。対面の試験だが、面接とは違う。受験生が主体となって、5分以内のプレゼンテーション方式。その中で自分自身をPRし、高校入学後の目標などを“自らの言葉で表現する力”が求められる。タブレット端末を使って写真や動画を見せたり、必要に応じてスポーツ大会のメダルなどを持ち込むことも可能だ。

そもそも、なぜ入試制度を変えたのか。広島県の平川理恵教育長は「内申書の内容を気にして中学校生活を送るのではなく、好きなことを大切にして自分の将来を選択し、それを表現する力を身につけてほしい」としている。

県によると、今回の変更で内申点に関わる調査書を“簡素化”し、「先生の所見」や「出欠席」の項目をなくして「成績」だけを残すという。これまで内申点にビクビクしたり、内申点のために生徒会や部活動に入る生徒もいたかもしれない。それが新しい入試制度に変わることで、自分らしく好きなことに時間を使えるようになりそうだ。

“自分を見つめ直す”成長の機会に

実際、受験生からは戸惑いだけでなく前向きな声も聞かれた。

中学3年生・女の子:
入試制度が変わるって聞いたときは「え…?」ってなりました。1日で5教科一気に試験をするのは体力的にしんどいので点数が下がるんじゃないかという心配もありました

中学3年生・男の子:
「自己表現」は自分を表現することだから、自分の良さや欠点を見直すことができて、自分を成長させることができたかなと思います

受験生を支える塾の先生は…

田中学習会・浅尾智也 先生:
学力重視になったから今までの生活をそれに向けて大きく変えないといけないかというと、やらないといけないことは変わらない。まずは学校の宿題やテストをきっちりやって、早いうちからコツコツと努力をすること。それはどんな制度になっても大きく変わることはない

変わる公立高校入試。“将来につながる入試制度”になったと言えるだろう。大学入試共通テストを見据えた「考えさせる問題」に加え、「自分は何に興味があって、将来どうしたいのか」と自分を見つめる貴重な機会になりそうだ。

(テレビ新広島)

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