「副業」を認める企業が増えつつある中、三井物産は今年1月、副業を認める制度を新たに導入した。

対象は、主に国内で働くおよそ3800人の社員および嘱託社員。YouTuberや作家、画家など、本業から大きく離れた副業についても、会社が認めれば可能となる。

副業を認める条件は、本人のキャリア形成に役立つことや、報酬を主な目的にしないことなどだ。

本業から大きく離れた副業も認めるということだが、これには、どのような狙いがあるのか? また、副業を認める条件として、「報酬を主な目的にしない」ことがあげられているが、この理由は何なのか?

三井物産人事総務部HR戦略第一室の鈴木利尚次長に“制度導入の狙い”を聞いた。

「機が熟したと捉え、導入を決めた」

――副業を認める制度を導入した理由は?

社会環境の変化を捉えると、労働力の流動性を高めていこうという、日本社会全体の課題を認識していまして、当社も、そうした要請に応える必要があるという認識に至りました。

また、副業は社員の関心も高く、経営との対話の場でも過去数年、議題に挙がっていました。

リモートワーク制度やフレックスタイム制度の導入が順次、定まり、さらなる社員の自律的なキャリア形成と新しい働き方の両方を追求するタイミングとして、機が熟したと捉え、副業を認める制度の導入を決めました。

三井物産・本店の外観(提供:三井物産)
三井物産・本店の外観(提供:三井物産)
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――これまでは一切、副業を認めていなかった?

従来は、原則禁止として基本的に認めておらず、「やむをえない場合」には報酬金額などにも条件を付けて、例外的に許可をしていました。


――「やむを得ない場合」とは、たとえば?

資格を取得して、資格維持のための実務経験で報酬を得るケース、執筆活動で報酬を得るケースなどです。

イメージ(副業)
イメージ(副業)

――「報酬だけが目的の場合などは対象外」、これはどうして?

当社が掲げる人材主義の理念を起点に、社員一人一人の成長意欲、ライフデザインを通じて、多様な経験や能力の開発をし、会社に中長期的な還元をすることが目的です。その文脈を踏まえると、「報酬のみが目的」の場合は対象外となります。


――「報酬だけが目的かどうか」は、どのように判断する?

人事総務部に申請する際の理由を見て、会社の制度運用の目的(社員の能力開発、経験の蓄積、将来の当社での活用など)と照らし合わせて、個別に判断します。

申請で多いのは「20~30代と50代」

――この制度を利用したいという申請は、すでにある?

あります。申請者の数については、現時点での公表は控えさせていただきます。年齢層は幅広く、多いのは20~30代と50代です。

若い世代に限らず、セカンドキャリアを意識した申請もあります。


――この制度によって、社員や会社自体がどうなっていくことを期待している?

この制度によって、「労働力の流動性を高めていく」という日本全体の課題の認識に応えると共に、社員の自律的なキャリア形成を後押しし、当社と社員双方の成長への好循環につながることを期待しています。

三井物産のロゴ(提供:三井物産)
三井物産のロゴ(提供:三井物産)

認める企業が増えつつある「副業」。三井物産のように本業とは離れた副業を認める企業が増えると、副業を始める人も増えていくのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。