2022年、11年越しに悲願の全線再開通を果たしたJR只見線。「熱狂」とも言える再開通直後の人気ぶりも落ち着き、沿線ではこの人気を一過性のもので終わらせず、定着させようと取り組みを進めている。
熱狂の只見線再開をブームにしない
2022年10月1日。JR只見駅で多くの人が、上りの始発列車を出迎えた。車内は乗客で大混雑。2011年に発生した新潟・福島豪雨で被災し運転見合わせが続いてきた只見駅と会津川口駅の区間へ、11年ぶりに客を乗せた列車が進んで行った。
この記事の画像(19枚)沿線には、多くの鉄道ファン。出迎えた人も乗客も満面の笑顔で全線開通を祝った。
季節は進み、只見線の車両は雪深い奥会津地方を変わらず走り続けている。
観光客:景色が良くて初めて乗ったんですけど、すごくよかったですね
車内がすし詰め状態になるほどだった「熱狂」は少し落ち着いたが、人気は続いていた。ただ、課題もある。
只見線の利用客:観光地として(二次交通が)充実してたほうが。来る人が利用しやすいという環境を作ったほうが、もっと増えるんじゃないかなと思うのでいいと思う
地域への誘導…二次交通が課題
只見線を目的に訪れた観光客を、どうやって周辺の地域に誘導するか。以前から課題になっているのが、バスやタクシーなど列車を降りた後の交通手段、いわゆる“二次交通”だ。
会津川口駅前にある金山町観光物産協会は、只見線の全線再開通に合わせてレンタカー事業を始めた。ただ「特別豪雪地帯」に指定され、2022年12月19日には「顕著な大雪に関する気象情報」も出された金山町と只見町。この「雪」がネックとなっている。
金山町観光物産協会・渡部貴裕さん:
12月は積雪があって、なかなか車の運転というのがハードルが高い方もいらっしゃると思うので、利用状況としてはかなり落ち込んでいます
会津川口駅に到着した車に次々と乗り込む人たち。駅を出発した車が向かったのは、玉梨温泉の恵比寿屋旅館。駅と旅館の間で宿泊客を送迎している。
全線再開通の直後は紅葉シーズンとも重なり、ほぼ満室の状況が続いた。12月は雪や寒さも影響してか7割程度。
恵比寿屋旅館・坂内譲専務:
ブームではなくて根付いた形で、只見線の人気をある程度持続させていけることを考えなくちゃいけないし、考えてやっているつもりなので
絶景で只見線の人気定着へ
人気の定着へ、期待することの一つが海外からの観光客。
海外からの観光客を呼び込むことに大きな役割を果たしているのが、霧幻峡を世に広めた郷土写真家・星賢孝さんの只見線と奥会津の写真。
恵比寿屋旅館・坂内譲専務:
星賢孝さんの写真展を一緒にやらせてもらってましたので、反応がいいのは台湾の人たちすごく反応がいいですね
星さんの写真が火付け役となって、台湾やタイで只見線が人気となり、新型コロナの感染が拡大する前には多くの人が訪れた。
台湾からの観光客:只見線は台湾でも有名なだけあって、評判通りきれいで魅力的でした
只見線の全線再開通に新型コロナの水際対策の緩和もあって、2023年2月に只見町で行われる雪まつりの前後には、台湾からの団体や個人の予約が入っていると言う。
車の運転をためらう理由にもなってしまう大量の雪は、雪が降らない国の人にとっては魅力の一つ。そして何より、雪深い景色は奥会津そのもの。
恵比寿屋旅館・坂内譲専務:
春夏秋冬の良いところをどんどんPRして、今までにないものも、これから発見しながらPRしていくことかなって思っています
悲願の全線再開通を果たし「熱狂」に包まれた只見線。四季折々の魅力の発信に利便性の向上と、人気の定着へ沿線の模索は続く。
(福島テレビ)