国内で生まれた子どもの数が2022年、はじめて80万人を割り込み過去最少を更新する見込みで、政府は「異次元の少子化対策」を行うとしている。
「なぜ、日本で子どもは増えないのか?」少子化対策の問題点を専門家に聞くと日本特有の事情が見えてきた。

「異次元の少子化対策」は給付中心

仕事始めの1月4日。年頭の記者会見で岸田総理が発表したのは・・。
岸田首相:
異次元の少子化対策に挑戦する

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東京都の小池都知事も・・。
小池都知事:
0歳から18歳の子どもに対しまして、月5000円程度を念頭に給付を行う

次々と打ち出される新たな少子化対策。2022年の国内の出生数は過去最少を更新してはじめて80万人を割り込むと予想されている。なぜ、子どもは増えないのか?少子化対策の問題点は何かを子育てを専門とする人たちに聞いた。

妊娠、出産に寄り添う助産師は行政の「切れ目ない支援」の問題を指摘。
MY助産院 田中美佳 助産師:
切れ目ない支援と国は言っていますが切れ目がないと言っても保健センターの人が担当したり病院の人が担当したり、地域で助産師が担当したり、担当者が変わっていくので支援は切れ目なくされているが、人が切れているというところがある

MY助産院 高島麻季 助産師:
やはり人間なので、人対人で信頼関係を持った中で、1人の人や少人数の人たちが関わる中で、ずっと一緒に歩んでいく、伴走スタイルの支援があるといいのではないかといつも思っている

“手当より正規雇用への道を”

生活面では非正規雇用のシングルマザーの現状は深刻だ。
和(かず) 法律総合事務所 寺西環江 弁護士:
非正規で離婚する人の収入はだいたい手取りで10万円から15万円くらい。フルタイムのパートで月曜日から金曜日まで働いて、そこに児童手当と児童扶養手当をのせて、だいたい24万円から25万円での生活。みんなここに収まる。そこに養育費をもらえている人が全体の2割。養育費があれば25万円から30万円くらいの間になる。シングルマザーは、その収入でみんな子育てをしている

和 法律総合事務所 寺西環江 弁護士:
5000円増やすよりは、もっと夢のある社会に、つまり正規社員で働きたいと思えば正規社員で雇ってもらえる社会にしないと、生きたお金の使い方もできないと思うので、支援金の給付は、すごく付け焼き刃な感じがする。

別の視点でこの意見に賛成するのは青木優子さん。「子育てをしながら安心して働ける環境を作る」というコンセプトで創業した企業に勤務している。
ピーカーブー・青木優子 編集長:
子育てに専念している女性はほめられないので、そこが辛いねという話はよく出る。

ピーカーブー・青木優子 編集長:
それが働く、外に出ることで誰かから評価される、ほめられる、自分も目標を達成することで、自分の幸せがつかめるのは、すごくいいと思う。そう考えると、”ほめられない子育て”で5000円もらうよりは、働ける環境で自分が何かを達成した時にキャリアアップできるとか、給料がアップするというほうに、お金を費やしてほしいと思う

“子どもをつくろうと思える社会環境を”

さらに青木さんは行政のやり方には根本的な問題がある、と指摘する。
ピーカーブー・青木優子 編集長:
今やっていることは少子化対策というよりは子育て支援ですよね。少子化対策だったら子育ての前に、そもそも、子どもを作れる環境を作ることが先だ。

これは様々な立場で共通の意見だ。
MY助産院 高島麻季 助産師:
妊娠、出産、子育てが、すごくいい経験だなと思える人を増やしてくことが大事。そうすれば周りの人も”そうなんだ”と価値を見出していく。そのためには、そう思えるような環境にならないといけないと思う

そのためには「子育ては女性」という社会の考え方を変える必要があると寺西弁護士は指摘します。
和 法律総合事務所 寺西環江 弁護士:
子育てって素晴らしいよねという価値観が持てればいいですが、その前提として経済的、肉体的、精神的な余裕が必要で、それを作り出すのがお金も1つだが、それよりジェンダーロール、つまり子育ては女性という社会的な性別役割の解消が必要だと思っています

婚姻率の低下も問題だ。結婚しない男女が増え、2020年の厚労省の調査では30~34歳では、男性はおよそ二人に一人(47.4%)が、女性では三人に一人(35.2%)が未婚だ。また、結婚した男女のおよそ3分の1が離婚している。離婚原因の大きな要素に女性の家事負担の大きさがあると言う。

寺西弁護士は、子供を産み、育てるモチベーションが持てる社会環境の整備を訴える
和 法律総合事務所 寺西環江 弁護士:
子育ては大変だけど、やりたいと思えないと産めないのです。育てるのがすごく大変だということが分かっているので、だから産めない。でも子どもを増やさなければいけないのなら、子どもを産む選択を女性がしやすくする。つまり、育てやすい環境をつくることが大事で、それはお金のことだけではない

日本ではこの10年ほど、ほかの国に比べ、賃金があがっていない。経済的な理由からも、結婚して子どもを育てる余裕がないという指摘も多いが、この課題の解決がまず必要ではないだろうか。

そのうえで、「子育ては女性」という日本特有の固定観念の打破が重要だ。
総務省の2021年の調査によると、6歳未満の子どもがいる家庭で、1日の家事に関わる時間は夫が2001年の48分から2021年は1時間54分に、妻は7時間41分が7時間28分になっており、夫の家事に関わる時間は増えつつあるものの、妻は夫の3.9倍の時間を家事に費やしており、欧米諸国と比べると男性の家事分担はまだ道半ばだ。

また、フランスなど出生率の低下を食い止めたといわれる海外との比較で気を付けたいのは、移民の存在と婚外子(結婚していない親の子)の比率が高いなど、日本とは事情が大きく異なることだ。

(テレビ新広島)

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