かつて、空から謡が降ってくると言われたほど能楽が盛んな金沢。能楽は室町時代から続く日本の代表的な古典芸能だ。今回は日本屈指の能面師である父・後藤祐自さんに憧れて600年以上に渡る伝統を継承し、能楽の魅力を発信する若き能面師・後藤尚志さんを取材した。

若き能面師が作る表情豊かな能面の数々

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石川県金沢市の後藤尚志さん29歳。金沢で生まれ、金沢で育った。若き能面師だ。

竹内章アナウンサー:
能面師になったのはいつなんですか?

能面師 後藤尚志さん:
本格的に作り始めたのは大学卒業後です。

竹内アナ:
お父様は能面師の第一人者ですよね?
尚志さん:
父が能面師の仕事をしている事もあって自分も何か作ってみようかなと思いました。

竹内アナ:
この面は誰が作ったんですか?
尚志さん:
これは全部僕が作りました。

竹内アナ:
すごいですね。これが般若?

竹内アナ:
あとの2つは?
尚志さん:
こちらは小面と呼ばれまして、若い女性の面で、表情も柔らかく少しふっくらした面持ちの面になります。

尚志さん:
こちらが男性の面で男性のお化けなんかに使われたりする面で若男と呼ばれます。

竹内アナ:
よく「能面のような表情」って「無表情」な例えで使われますが、実はそうじゃないんですね。能面は非常に表情があるんだと。
尚志さん:
面は舞台でシテ方がかけてゆっくり動くことによって少しずつ表情が変わってきますね。

尚志さん:
例えばちょっと上に傾けると「テル」と言って、ちょっと笑ったような幸せそうな表情になります。下に傾けると「クモル」と悲しげな表情になります。
竹内アナ:
角度によってちょっと憂いを帯びてくるわけですね。

尚志さん:
ちょっと斜めから見る時がすごく美しいというか可憐に見える角度になりますかね。
竹内アナ:
本当に生きているかのような。

尚志さん:
シテ方が着けた時はもっともっと表情が動いて見えるので、是非、舞台で見ていただきたいです。

「面を知るには能を知れ…」父の言葉

竹内アナ:
後藤さんは実際に能の舞台に立っているんですか?
尚志さん:
舞う方ではなく囃子方と呼ばれる笛方です。面を作るからには能の舞台、能の雰囲気を自分で感じ取らなければいけないと。

尚志さん:
父から「笛方をやれ、笛を吹け」と高校の時に突然言われ、「分かりました、吹きます」と答えました。10年ほど笛を吹いているうちに、父から「プロになりなさい」と。色んな先生方のご尽力もあって、金沢能楽会の笛方として活動しています。

様々な表情を作る…「能面師」の技

竹内アナ:
作業は膝を使いながらやるんですか?
尚志さん:
三点どこかで支えておかないと、手持ちだと掘りづらいんです。

尚志さん:
例えばこう言った、輪郭の型紙がありまして木に当てて輪郭を描きます。

尚志さん:
彫刻刀で輪郭の線に沿って型を作っていくんですが、それをする作業だけでも大変。

竹内アナ:
バラバラになっている型紙は?

尚志さん:
こちら横紙と言いまして、当たった所を少しずつ削っていきます。大きく削るのではなく、あくまでも人の顔なので滑らかな曲線だからこそ生々しく表情が出てくる。

尚志さん:
こちらが僕が作った小面で、こちらが父が作った小面です。これだけ品格というか重みが違って見えてしまう。
竹内アナ:
お父様が作った方はシュッとしていますよね。後藤さんの方はふっくらしている。

尚志さん:
ここまで品格を高めないと良い面にはならない。なので僕はまだまだ力不足。
竹内アナ:
何とも奥が深いですね。

尚志さん:
僕は、面を作ったり能の舞台で笛を吹いたりすることによって、能の魅力を感じることができました。

尚志さん:
能を知らない人、能を見たことがない人にも能の魅力を感じていただいて、日本人の心、感性を「能」から読み取って、今の生活と自分を見つめ直すきっかけになればなと。楽しみ方は人それぞれだと思うんですけれどきっかけになってくれればなと思います。

面に人の命を吹き込むという技の数々。偉大な父の背中を追いながら、日々研鑽を続ける若き能面師・後藤尚志さん。父に続く、素晴らしい職人になることを期待したい。

(石川テレビ)

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