バイデン大統領が機密文書を持ち出していた問題で来年の大統領選への再出馬が難しくなるという見方が広がり、代わって民主党の大統領候補に現カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏55歳の名前が取り沙汰されてきた。

この問題をめぐっては、バイデン大統領が副大統領当時の機密文書が9日ワシントンの同大統領の個人事務所から見つかったのに続いて12日には、デラウエア州の自宅の車庫などから新たに複数の機密文書が発見され、単なる過失では済まされない規模に拡大してきた。
当初は、文書数も少なく発見後直ちに国立公文書館に届けたことなどから米国の主要マスコミもトランプ前大統領の機密文書持ち出しとは違うとしていたが、ここまでくると司法省も見過ごすこともできずトランプ前大統領同様に特別検察官を任命して本格的な捜査を始めることになった。
これとは別に議会共和党も先の中間選挙で下院の支配権を奪還した勢いで、バイデン政権を徹底的に追求してゆくことを公言している。

バイデン大統領は中間選挙で民主党が予想外に善戦した後支持率も回復傾向にあり、近く来年の大統領選に再出馬を表明すると見られていたが、捜査の展開によってはその道を閉ざされることもあり得る状況だ。
加えて、機密文書の発見はバイデン大統領の高齢を不安視する民主党内の分子が仕掛けた「バイデン下ろし」だという陰謀説が共和党支持者の間で希望的観測のように広まりはじめてきた。
フォックス・ニュースの超保守派のキャスターで、バイデン大統領には手厳しいショーン・ハニティ氏は12日の放送でこうその疑惑を述べた。
「なぜ一週間に2回も機密文書が発見されたんでしょうね?これはジョー・バイデンを大統領選に再出馬させたくないものが仕掛けた結果ではないのでしょうか?」

カリフォルニア州の共和党下院候補者のデビッド・ギグリオ氏はこうツイートしている。
「バイデンが2024年に再出馬の動きを始めようという矢先に、機密文書スキャンダルが発生したのは偶然ではない。民主党員たちはバイデンが再出馬すべきでないと考えていたが、これで彼は再出馬できなくなった。任務完了だ。ギャビン・ニューサム(カリフォルニア州知事)が次の選択だ」

テキサスのジャーナリストのグラント・スティンチフィールド氏のツィートはこうだ。
「バイデン追放劇は続く…新たな機密文書発見される。ギャビン・ニューサムはブルペンでウォーミングアップ中」
ニューサム氏は昨年の中間選挙で共和党の対立候補を60%近い得票率で破り知事二期目に就任したばかり。知名度の高さでは民主党でも抜群だが、これまでは「バイデン大統領と競ってまで大統領選には出馬しない」と公言してきた。
しかし、そのバイデン大統領が再出馬できないとなると、ニューサム氏に出番がめぐってくるということにもなる。
バイデン大統領の機密文書問題は、2024年の大統領選を大きく動かすことになるかもしれない。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】