「プレゼント」といえば、誕生日やクリスマスなどにもらったり、大切な人や自分自身へ贈る人もいるだろう。しかし、目に見えないプレゼントもある。

全世界で3000万部近い人が読んだ『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)の著者、スペンサー・ジョンソン。
 
迷路のなかでチーズを探すネズミと小人の物語を通して、変化に対応する大切さを説いたビジネス寓話で、日本でも400万部を超えて読まれつづける名著である。

『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)
『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)
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スペンサー・ジョンソン氏は、もともと心臓ペースメーカー開発にもかかわった医師であったが、ケン・ブランチャード氏との共著『一分間マネジャー』をはじめとする多くのビジネス書を手がけ、世界中に多大な影響を与えて来た人物である。

そんな彼の名作が2022年に復刊され、ふたたび大きな注目を集め、ベストセラーとなっているのが『プレゼント』(扶桑社)。『チーズはどこへ消えた?』とおなじように、100ページ程度の小さな本だが、そこには人生の知恵が豊富に詰まっているのだ。

少年が聞いた“プレゼント”の話とは?

本書のテーマは「いまをよりよく生きる」こと。

使い古された言葉のように思えるが、著者が長い年月をかけて磨きあげた叡智の結晶と言える。

ある少年が、人生の達人である老人から、大切な“贈り物(プレゼント)”の話を聞くことから本書ははじまる。それをもらえば、もっと幸せになれるし、したいと思うことができるようになるのだという。

老人から教えられた“プレゼント”とは何なのだろうか?(画像:イメージ)
老人から教えられた“プレゼント”とは何なのだろうか?(画像:イメージ)

少年は“プレゼント”とは何かを考えながら成長していく。彼は若者となり、自分の仕事や生活、人生そのものと向き合うなかで、あらためて“プレゼント”を探すことになる。
 
そして、導き手となる老人は、こう言う。

「きみはすでに“プレゼント”が何か知っている。すでに、どこへ行けば見つかるか知っている。そして、なぜ幸せになり、成功できるのか知っている。きみは幼いころにはよく知っていた。ただ忘れているだけだ」

これは、物語中の若者だけでなく、本書を読んでいる我々へも向けられた言葉である。

「成功」とは何だろうか

誕生日やクリスマスなどでもらうプレゼントではない。本書が意味する“プレゼント”は、「幸せ」と「成功」をもたらしてくれるもの。

しかし、成功とは何だろうか。

スペンサー・ジョンソン氏は、物語の終わりでこう語っている。

「成功とは、その人の能力・素質を十全に開花させることである。そして、有意義な目標に向かって歩むことである」

つまり、本書が教える「成功」とは、たんに富や名声を得ることではない。自分が自分らしく生き、有意義な人生を送ることなのだ。そうすることによって、「友だちや愛する人を導き、世話し、支えることができる」と著者は言う。

いま、長引く不況にコロナ禍が追い打ちをかけ、さらに物価の高騰や戦争など、人は余裕を失い、先行きが見えない不安に陥っている。

そんなときだからこそ、スペンサー・ジョンソンのメッセージが読者に受け入れられているのではないだろうか。

自分らしく生きることで、人とのつながりを取りもどし、よい影響を与え合い、みんながより幸福な方向へ進む。

晩年、がんに冒されたスペンサー・ジョンソン氏は、最後の執筆に情熱を傾け、家族はもちろん、長年の知人たちに連絡を取り、愛と感謝を捧げて、2017年にこの世を去った。

『プレゼント』(扶桑社)カバーイラスト:長崎訓子
『プレゼント』(扶桑社)カバーイラスト:長崎訓子

スペンサー・ジョンソン(1938~2017年)
心臓のペースメーカーの発明に携わった医学者でもあり、さまざまな大学や研究機関の顧問をつとめ、シンクタンクに参加。ケン・ブランチャード氏との共著『1分間マネジャー』は、マネジメント論の古典として読み継がれる。ほか、著書には『チーズはどこへ消えた』『迷路の外には何がある?』(ともに扶桑社)などがある

スペンサー・ジョンソン
スペンサー・ジョンソン