新型コロナウイルス対策において様々な分野でのIT化の必要性が叫ばれている。それは治療の最前線である医療機関をめぐっても同様で、国がこれまで都道府県経由でアナログに把握していた情報を、ITを活用して直接把握出来るシステムの構築が進んでいる。ただこの度、そのシステムが必ずしも狙い通りに利用されているとはいえない状況が判明した。

医療機関の状況をデジタルで把握!政府の新システムとは

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、現在、全国の医療機関の医療提供体制を把握するシステムとして「GMIS(ジーミス:Gathering Medical Information System)」が導入されている。首相官邸の指揮下で厚生労働省と内閣官房が運営しており、主な機能として、病床数を20以上有する全国の病院等の患者受け入れ状況や空き病床、人工呼吸器の稼働状況などを把握することが可能となっている。

データは内閣官房のホームページで公開されているほか、オープンデータとして民間にも提供していて、地図上で「近くの病院が入院・外来を受け入れているか」などを確認出来るようにすることで、国や自治体が各病院の状況を一元的に管理するのが狙いだ。

内閣官房ホームページより:5月27日時点での一例

GMISは5月から本格運用が開始されていて、医療現場の要請に応えるべく、マスク、ガウン、フェイスシールドなど医療物資が不足する病院から直接、国に対し緊急配布を要請できる機能に加え、人工呼吸器の稼働台数や外来機能が低下していないかといった新機能を続々と追加している。

とりわけ、医療物資の緊急要請機能は「SOS緊急直送」と呼ばれ、物資が足りなくなりそうな医療機関がシステム上の「SOS」ボタンを押すだけで、都道府県を介さず国からマスク等を直接医療機関に発送する仕組みだ。仕組みの設計に携わる政府関係者は「マスクや物資の不足が大幅に改善される画期的なシステムだ」と強調する。

資材が不足する医療現場

また新型コロナウイルス治療薬として特例承認され注目を浴びる「レムデシビル」の投与状況についてもこのシステムを活用して把握されており、システムへの登録は病院の状況確認や適切な医療提供体制の確立の一助となっている。

レムデシビル

さらに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者や保健所職員の人手不足も指摘される中、新たに必要な人材の求人についてもGMISを用いて情報収集を開始し、6月上旬には募集が開始されることがわかった。

東京では2割が未登録…登録への働きかけは不十分なのか?

では、このGMISへの医療機関の登録状況・活用状況はどうかというと、FNNが入手した資料によって、都道府県・地域によって状況に差があることが判明した。

GMISは、26日現在で全国7222の一般病院が登録対象となっており、同日時点で全国の93%にあたる6,717病院が登録している。しかし、都道府県別に見ると青森、宮城、栃木、山梨、福井、愛媛、鳥取ではすべて登録されていた一方、東京都では未登録の割合が唯一2割を超えているなど、登録が進みきっていない地域も多いことがわかった。

【GMIS登録状況ワースト】
(1)東京都(未登録割合21.1%)
(2)富山県(同13.8%)
(3)奈良県(同12%)
(4)長野県(同11.7%)
(5)長崎県(同11.7%)
(6)広島県(同11.6%)
(7)佐賀県(同11.5%)
(8)沖縄県(同10.3%)
(9)北海道(同10.1%)​

このように、東京都の未登録割合は他の未登録率上位の県と比べてもかなり高い。医療機関の体制逼迫や物資不足が問題視されている東京において、「IT化」のカギとなる登録が進んでおらず、その恩恵が受けられていない医療機関が多いことが判明した。

この状況について政府関係者は「(登録率が高い都道府県は)自治体の働きかけが大きい」と話す一方、東京都については、「感染者も抱える中で新システムが走り出したため、病院の実情もあり毎日の入力の強制はできない」と語っている。

患者にとって最適な医療を受けられるようにするためにITの導入は急務とも言える。保健所においては手書き・FAXなどでの医療機関からの報告の入力や、患者への電話での聞き取り後の入力といった手間を省くため、患者が健康状態を直接報告できるシステム「HER-SYS」も導入された。

手書き形式の新型コロナ発生届け

国はこうしたシステムを導入するだけでなく、その活用についても都道府県や市町村により積極的に働きかけることで、患者などを含む国民がその利便性を実感できるようにすることが求められる。また多くの医療機関・感染者を抱える東京都をはじめとした各自治体は、医療機関へのきめ細やかなフォローが求められる。

(政治部 官邸クラブ 山田勇 杉山和希)