北海道の酪農がかつてない危機に立たされているという。

酪農現場を訪ねてみると…

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ホースから排水溝に流れていく白い液体。牧場で搾られたばかりの生乳だ。

友夢牧場 植田 昌仁 社長:
(1日に)1トンから2トンくらい廃棄せざるを得ない状態です

十勝の新得町で牛900頭を飼育する植田昌仁さん。コロナ禍などで生乳の需要が減ったことで、4月から生産量を減らすように求められたという。

2021年は1日29トンほど搾っていましたが、現在は1日25~26トンにとどめている。

牧場の牛をこの半年で50頭ほど減らしたが、11月には生乳を廃棄する苦渋の決断をした。

友夢牧場 植田 昌仁 社長:
排水溝に流れているのを見ると、本当にやるせないというか、この思いをどこにぶつけていいのかという思いです

そこに追い打ちをかけたのが、エサ代の高騰だ。

友夢牧場 植田 昌仁 社長:
2021年のエサ代は3億8000万円くらいだったが、2022年は5億1000万円以上かかっています。それだけ飼料費が上がっています

ロシアのウクライナ侵攻と急激な円安により牛のエサとなる牧草やトウモロコシの価格が跳ね上がった。燃料費や資材費もかさみ、2022年は約1億円の赤字となる見込みだ。

友夢牧場 植田 昌仁 社長:
牧場の経営が続けていけるのか、すごい危機を感じています

十勝の豊頃町で牛1600頭を飼育している牧場。生乳の廃棄はしていないものの、1頭あたり10万円の赤字が出ているという。

国は飼料価格高騰の緊急対策として、牛1頭あたり7200円を支給しているが、赤字の補填には足りない。

Jリード 井下 英透 代表:
搾れば搾るほど赤字になっているのが現状です。(国が支援策を)きちんとした形で示してもらわないと、私たちは経営を続けることができないと思っています

北海道内の大規模牧場の経営者らがつくる団体で副部会長を務めている井下英透さんは、酪農家の廃業がこれからも続くのではないかと懸念を強めている。

Jリード 井下 英透 代表:
北海道でもすでに180戸ほどの農家が経営をやめています。道内の酪農家、5000戸を切りました。これがさらに大きく減少するのではないかと非常に心配しています

北海道の酪農を守るため、釧路市の農業関連団体は生乳の消費拡大への取り組みを行っている。

釧路市内の温泉施設では北海道内の生乳を使ったソフトクリームを半額の160円で販売。

温泉に来た人には牛乳1本を無料で提供している。

釧路市 農林課 道山 慶祐さん:
牛乳を消費することで、地元の大切な産業である「酪農が身近にあるということを再認識した」という声があります

コップ1杯の牛乳からでも何かが変わるかもしれない…酪農関係者は生産現場の苦悩を知ってほしいと呼びかけている。