自民党の小野寺五典元防衛相(党安全保障調査会長)は18日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、国家安全保障戦略など安全保障3文書改定について中国が反発していることについて、「抑止力が効いている」という見方を示した。

小野寺氏は「抑止力は相手が嫌がることをきちんと準備することだ。中国の反応は、平和を保つための第1歩としてむしろ抑止力が効いていることを感じる」と述べた。

安保3文書には初めて「反撃能力」保有が明記されたほか、中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけ、中国外務省は「中国の脅威を誇張して軍拡の言い訳とする企みは思い通りにはならない」と反発している。

「反撃能力」に関し、立憲民主党の渡辺周衆院議員(元防衛副大臣)は、相手国による攻撃着手の認定は困難だとして、先制攻撃と見なされるリスクを念頭に「懸念」を表明した。

番組コメンテーターの橋下徹氏は反撃能力保有の問題と、攻撃着手時期の認定の問題は「全くの別物だ」として分けて考えるべきだと主張した。

一方、3文書に、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備品移転三原則」の運用指針の見直し検討が盛り込まれたことについて、小野寺氏は「武器を提供された国は当然、全ての武器の技術やその他を提供した国に知られているから敵対しない。武器は戦うだけでなく、提供することでむしろ(提供した)国の抑止力が高まる両面がある」と指摘し、三原則緩和に前向きな考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
政府は16日、外交・安全保障政策の基本方針となる新たな「国家安全保障戦略」など安全保障3文書を閣議決定した。自衛のために敵のミサイル基地などを攻撃する「反撃能力」の保有が初めて明記された。
バイデン米大統領は「われわれは平和と繁栄への日本の貢献を歓迎する」と好意的な反応を示した。一方、中国外務省は「中国の脅威を誇張して軍拡の言い訳とするたくらみは、思い通りにはならない」と強く反発している。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
エマニュエル駐日米大使にインタビューした。大使は、今回の安保3文書改定は「非常に歴史的な出来事だ」と強調していた。これにより日米の軍事的な協力関係がさまざまな面でどんどん変わっていくと。その大きな節目になるとも話していた。増税の財源をめぐる問題については、自分は大使として「コメントしない」と言いながらも、岸田首相が総額43兆円の防衛費増額を打ち出したことについて、日本の現在の危機に対処するものとしては、どうしても必要なものではないか、との見解を示していた。日本の防衛政策の大転換に米国は非常に好意的な見方をしている一方、中国は反発している。どう見るか。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長・元防衛相):
今回の防衛力整備の目的は抑止力だ。戦争を起こさせない、この地域で安定した今のこの状況を維持していくことが大事だ。東アジアで1番の不安定要因は中国だ。中国はもしかしたら力で台湾に対して、あるいは日本に対して影響を及ぼすかもしれない。抑止力は相手が嫌がることを、こちらはきちんと準備するということ。その意味では、中国がこういう反応をしているということは、抑止力は十分効いている、平和を保つための第1歩としてむしろ(抑止力が)効いていることかなと感じる。

松山キャスター:
安保3文書の防衛力整備の7つの柱には、反撃能力を担うスタンドオフ防衛能力が明記された。国産ミサイルの量産態勢を整えることも盛り込まれている。国産ミサイルか外国産ミサイルかという議論があるが、スタンドオフ防衛能力が明記された意義についてどう考えるか。

小野寺氏:
日本の抑止力を高めるためには、日本を攻撃するミサイルを相手領域内でも食い止めるためには、どうしても必要だということで反撃能力を持つのだが、そのためのアセット、道具が、長射程ミサイルだ。弾は本来やはり国産で持っていた方がいい。攻撃を受けて反撃したときに弾が足りない、輸入すると言っても海を渡っては来ない。弾薬、ミサイルは本来国産で十分用意することができ、備蓄ができ、いざというとき補充できるのが1番だ。今まで日本はそういう能力を政治的に持たないと言ってきたので、当然日本の技術開発もそれをやってなかった。これからそれを伸ばすまでには少し時間がかかる。だが、安全保障は待ってくれない。そのため、すぐに配備できるものは何かということで、米国製で1番能力の高いトマホークがいいのではないかと検討している。トマホークは多少のプログラムを変更すれば、日本のイージス艦のセル(発射管)にそのまま載せて使える。最も早く取得できて、しかも1番上のハイスペックのバージョンのものを取得すれば、相当の反撃能力を一定時期、日本は維持できる。その後、本格的に国産でしっかり対応する。やはり最終的には弾は自前で持ってないと継戦能力で心配だ。

松山キャスター:
反撃能力の保有について、立憲民主党の泉健太代表は「容認できない」という声明を出した。これは、立憲民主党として反撃能力の保有そのものに反対という正式表明か。

渡辺周氏(立憲民主党衆院議員・元防衛副大臣):
いや、そうではない。自公による今回の3文書については容認できない。反撃能力を行使するにあたり、本当に(攻撃)着手の段階を間違いなく判断できるのか。残念ながら、ミサイルが飛び去ったあとにJアラートが鳴る現状がある。(相手国がミサイルを)まだ打ってない時点で100%打つと判断することは非常に難しい。

橋下徹氏(弁護士・元大阪府知事):
その着手時期の話を、反撃能力の議論の中に持ってくるのは違うのではないか。反撃能力はあくまでもその能力を保有する問題であり、着手時期というのは、いつやるかの話で全然別物だ。着手時期を詰めていくと、では、日本は一撃を受けてからしか反撃できないのかという議論になる。立憲民主党としては、日本は一撃を受けてからしか動けないという立場なのか。

渡辺氏:
いや、そこまでは...。橋下さんが言うように能力保有と行使は別だ。日本の自衛のために長射程化する、あるいは反撃能力を向上させることについて、わたしたちは変わりゆく安全保障環境の中で、整備していくことは必要だと言っている。ただ、その行使について曖昧なままにしておくことで、歯止めがなくなることをやはり懸念する。

松山キャスター:
3文書には、「防衛装備移転三原則」の運用指針見直し検討も含まれている。

渡辺氏:
歯止めなく殺傷兵器や破壊兵器までも売っていいのかということにならないように(すべきだ)。例えば、非常に軽くて強靱(きょうじん)性の強い防弾チョッキなどは積極的に輸出してもいいと思うが、議論は必要だ。わが国は人を殺すようなものや大量破壊をするようなものは作って売らないと。死の商人にはならないということを議論すべきだ。

橋下氏:
渡辺さんの考え方も1つあると思う。これは議論してもらいたいが、「死の商人になるな」ということだけではなく、では、欧州などで武器を輸出したり融通したりしている国が安全を脅かされているかと言えば、むしろ防衛産業がきちんと整っている方が安全に資するという考え方もある。軍国主義を解体するために、戦後さまざまな制約を課された日本の今の状況を、なにか所与の前提として考えずに、国際情勢に合わせた考え方を持って議論してもらいたい。

渡辺氏:
これは絶対だめだとは決めていない。

小野寺氏:
1番大事なこと。どうしていろいろな国が自分たちの武器をいろいろな国に提供するかというと、武器の提供を受けた国は当然、全ての武器の技術やその他を、その武器を提供した国に知られているから、敵対しない。逆に言うと、武器がたくさん広がることにより、その国自身は安全保障の抑止力が高まる。だから米国は一生懸命やっているし、中国もロシアもやっている。武器というのは戦うだけではなく、それを提供することはむしろ抑止力が高まる、その両面がある。

日曜報道THE PRIME
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