静岡県の農業高校の女子生徒たちが、レトルトカレー作りに挑戦した。学校栽培の野菜などを使って商品を企画し、パッケージも考えて学園祭で販売した。行列もできるほどの人気だったが、採算は赤字。生徒たちは商品開発を通じて何を学んだのだろうか。
「アボカド」を使ってインパクトを
レトルトカレー作りに挑戦したのは、函南町にある田方農業高校の生産科学科の3年生3人だ。

商品開発が始まったのは2022年8月。どんな商品を作りたいのか、まずはコンセプトをまとめる。
田方農業高校 生産科学科・鷲山 比奈乃さん:
田農祭(学園祭)に来る、たくさんの人に手に取ってもらえるような商品にしたい

具材として着目したのは、栄養の豊富な食材として知られる「アボカド」だ。
生徒:
高校生が作ったといっても、(お客さんに)「ああ、いつものか」と思われてしまうかも。インパクトを残そうとすると、“アボカド”がいいのでは
田村商店・滝あろうさん:
アボカドは聞いたことない。アボカドのカレーは、(これまで)ないのでは
商品名や値段も自分たちで
3人をサポートするのは、地元の卸売会社でレトルトカレーの開発を担当している、滝あろうさんだ。

田村商店・滝 あろうさん:
原価が発生しそれに見合った利益を出した上で、商品を販売していかなければいけない。(生徒たちが栽培の後の)流通・加工・販売など全体的に見てもらえるような、そういう経験になれば一番うれしい

商品名は「農女(のうじょ)セレクト!! 食べれば食べるほど健康になっちゃうんぢゃない!? カレー」に決まった。
地元産のニンジンやジャガイモなどに、アボカドを加えた野菜カレーだ。

田方農業高校 生産科学科・高田 成美さん:
野菜が多い商品なので、野菜が嫌いな子供でも食べられるような商品になったらうれしい
具材が決まり、生徒たちは値段設定について話し合う。
生徒:
600円? いける気がする
別の生徒:
700円でもいけそう。買ってくれるとは思うんだよね、田農祭(学園祭)だったら買うよ
楽観的な生徒たちだが、大丈夫だろうか。
学校野菜も使い100食分を用意
具材には、学校で有機栽培しているナスも使うことにした。

準備するのは約100食。切った具材は重さを量って、1食分ずつにとりわける。開始から2時間半で、ようやく作業が終わった。

田方農業高校 生産科学科・木下 奈津さん:
私は普段料理をしないが、たくさん野菜を切ってグラムで量って均等に分けるのが大変でした
この日 3人が訪れたのは、静岡市の食品加工会社。
食材とカレーのルーを詰める作業。

真富士食品・鈴木 雅博さん:
基本的に110gを切っていなければセーフです。110gを切っていると、「内容量が足りない」とお客さんからクレームが入ってしまう

カレーのルーは生徒たちのコンセプトに合わせて、動物系の原料を使っていないものが用意された。担任の先生の手も借りて、約2時間で終了した。
600円カレーの原価が1200円超
パッケージのデザインは、3人が考えたものとプロの手によるものとの2種類を用意した。
これで商品は完成。

経費はいくらかかったのか。
田村商店・滝さん:
人件費が入っていない段階だと5万円くらいだが、人件費を入れると一気に商品原価が10万円で、倍くらいになってしまう
田方農高・高田さん:
今回は(1食当たり)1212円?
田村商店・滝さん:
原価が1200円かかるということ。原価1200円かかるということは、もし店で売ろうとなったら、2000円くらいかな。1800円で売ると、やっとみんなが時給1000円の給料がもらえる

商品の原価は1200円を超えた。学園祭では600円で販売するので、商売としては大赤字だ。
プロの仕事に触れて学んだこと
2022年11月、学園祭の当日を迎えた。

生徒:
課題研究で作ったカレーです。いかがですか

お米と並べて販売したことも功を奏し、レトルトカレーとしては高めの600円という値段にもかかわらず次々と売れていく。
田方農高・高田 成美さん:
大変なこともあったがこうやって実際に販売して、いろいろな人が手に取ってくれて、すごくうれしい
田方農高・木下 奈津さん:
カレーに何の野菜を入れるかとか、自分たちでパッケージを考えるなど協力してできて、良い経験ができました

田方農高・鷲山 比奈乃さん:
進路は就職するが、商品開発もする機会がある職種なので、今回のカレー作りを生かして頑張りたい
商品開発に挑戦した3カ月。
プロの仕事に触れた経験は、生徒たちの将来にきっと役立つはずだ。
(テレビ静岡)