静岡県の農業高校の女子生徒たちが、レトルトカレー作りに挑戦した。学校栽培の野菜などを使って商品を企画し、パッケージも考えて学園祭で販売した。行列もできるほどの人気だったが、採算は赤字。生徒たちは商品開発を通じて何を学んだのだろうか。

「アボカド」を使ってインパクトを

レトルトカレー作りに挑戦したのは、函南町にある田方農業高校の生産科学科の3年生3人だ。

カレーのコンセプトを検討する生徒たち
カレーのコンセプトを検討する生徒たち
この記事の画像(15枚)

商品開発が始まったのは2022年8月。どんな商品を作りたいのか、まずはコンセプトをまとめる。

田方農業高校 生産科学科・鷲山 比奈乃さん
田農祭(学園祭)に来る、たくさんの人に手に取ってもらえるような商品にしたい

具材はアボカドに着目
具材はアボカドに着目

具材として着目したのは、栄養の豊富な食材として知られる「アボカド」だ。

生徒
高校生が作ったといっても、(お客さんに)「ああ、いつものか」と思われてしまうかも。インパクトを残そうとすると、“アボカド”がいいのでは

田村商店・滝あろうさん
アボカドは聞いたことない。アボカドのカレーは、(これまで)ないのでは

商品名や値段も自分たちで

3人をサポートするのは、地元の卸売会社でレトルトカレーの開発を担当している、滝あろうさんだ。

滝さん「加工や流通など全体を見てほしい」
滝さん「加工や流通など全体を見てほしい」

田村商店・滝 あろうさん
原価が発生しそれに見合った利益を出した上で、商品を販売していかなければいけない。(生徒たちが栽培の後の)流通・加工・販売など全体的に見てもらえるような、そういう経験になれば一番うれしい

アボカドなど野菜たっぷりのカレーに
アボカドなど野菜たっぷりのカレーに

商品名は「農女(のうじょ)セレクト!! 食べれば食べるほど健康になっちゃうんぢゃない!? カレー」に決まった。
地元産のニンジンやジャガイモなどに、アボカドを加えた野菜カレーだ。

高田さん「野菜嫌いの子供で食べられるように」
高田さん「野菜嫌いの子供で食べられるように」

田方農業高校 生産科学科・高田 成美さん
野菜が多い商品なので、野菜が嫌いな子供でも食べられるような商品になったらうれしい

具材が決まり、生徒たちは値段設定について話し合う。

生徒
600円? いける気がする

別の生徒
700円でもいけそう。買ってくれるとは思うんだよね、田農祭(学園祭)だったら買うよ

楽観的な生徒たちだが、大丈夫だろうか。

学校野菜も使い100食分を用意

具材には、学校で有機栽培しているナスも使うことにした。

学校で有機栽培しているナスも使用
学校で有機栽培しているナスも使用

準備するのは約100食。切った具材は重さを量って、1食分ずつにとりわける。開始から2時間半で、ようやく作業が終わった。

野菜を切って100食分を袋詰め
野菜を切って100食分を袋詰め

田方農業高校 生産科学科・木下 奈津さん
私は普段料理をしないが、たくさん野菜を切ってグラムで量って均等に分けるのが大変でした

この日 3人が訪れたのは、静岡市の食品加工会社。
食材とカレーのルーを詰める作業。

食品加工会社で野菜とルーを袋詰め
食品加工会社で野菜とルーを袋詰め

真富士食品・鈴木 雅博さん
基本的に110gを切っていなければセーフです。110gを切っていると、「内容量が足りない」とお客さんからクレームが入ってしまう

ルーは動物系の原料を不使用のものに
ルーは動物系の原料を不使用のものに

カレーのルーは生徒たちのコンセプトに合わせて、動物系の原料を使っていないものが用意された。担任の先生の手も借りて、約2時間で終了した。

600円カレーの原価が1200円超

パッケージのデザインは、3人が考えたものとプロの手によるものとの2種類を用意した。
これで商品は完成。

パッケージは2種類を用意
パッケージは2種類を用意

経費はいくらかかったのか。

田村商店・滝さん
人件費が入っていない段階だと5万円くらいだが、人件費を入れると一気に商品原価が10万円で、倍くらいになってしまう

田方農高・高田さん
今回は(1食当たり)1212円?

田村商店・滝さん
原価が1200円かかるということ。原価1200円かかるということは、もし店で売ろうとなったら、2000円くらいかな。1800円で売ると、やっとみんなが時給1000円の給料がもらえる

600円で販売するのに原価は1200円
600円で販売するのに原価は1200円

商品の原価は1200円を超えた。学園祭では600円で販売するので、商売としては大赤字だ。

プロの仕事に触れて学んだこと

2022年11月、学園祭の当日を迎えた。

学園祭でカレーを販売
学園祭でカレーを販売

生徒
課題研究で作ったカレーです。いかがですか

販売テントには行列が
販売テントには行列が

お米と並べて販売したことも功を奏し、レトルトカレーとしては高めの600円という値段にもかかわらず次々と売れていく。

田方農高・高田 成美さん
大変なこともあったがこうやって実際に販売して、いろいろな人が手に取ってくれて、すごくうれしい

田方農高・木下 奈津さん
カレーに何の野菜を入れるかとか、自分たちでパッケージを考えるなど協力してできて、良い経験ができました

鷲山さん「(経験を)就職先の仕事で生かしたい」
鷲山さん「(経験を)就職先の仕事で生かしたい」

田方農高・鷲山 比奈乃さん
進路は就職するが、商品開発もする機会がある職種なので、今回のカレー作りを生かして頑張りたい

商品開発に挑戦した3カ月。
プロの仕事に触れた経験は、生徒たちの将来にきっと役立つはずだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。