ファーストレディーが口を滑らす
ジョー・バイデン米大統領が、2024年の大統領選に再出馬することをはじめて認め、選挙戦の前途を祝して乾杯していたことがわかった。
それは12月1日にホワイトハウスで行われたエマニュエル・マクロン仏大統領夫妻を迎えての公式晩餐会でのことで、出席者2人の話として6日のニューヨーク・タイムズ紙電子版が伝えた。

晩餐会では両首脳の挨拶と乾杯など公式の行事が終わり、報道陣も会場を退出して料理のサービスが始まっていた。メインテーブルにはバイデン大統領夫妻とマクロン大統領夫妻、仏政府の高官、それにナンシー・ペロシ下院議長ら米民主党幹部が座り会話が弾んでいった。

その時、ファーストレディーのジル・バイデンさんが日頃のフィットネス活動について自慢げにこう言った
「おかげで頭が冴えて、選挙運動の助けになっています」
その「選挙運動」という言葉をマクロン大統領は聞き逃さなかった。バイデン大統領が選挙運動をする、つまりは2024年に再出馬するかどうかは仏大統領にとっても米国滞在中の最大の関心事であったはずだからだ。仏大統領は即座にファーストレディにこう尋ねた。
「また選挙運動をするのですか?」
「もちろん」という答えが返ってきた。
そこでマクロン大統領はバイデン大統領の方に向き直り「おめでとう」と言ったという。
さらにマクロン大統領は、バイデン大統領の2024年の選挙戦の前途を祝す乾杯をメインテーブルの出席者に呼びかけ、マクロン大統領はワインをバイデン大統領はコカコーラの盃を上げた。

ニューヨーク・タイムズ紙はこの時の乾杯の発声について仏側の報道官に尋ねたが「記憶がない」とかわされ、ホワイトハウスにもコメントを求めたが記事を書いている時点では回答はなかったという。
高齢のバイデン軽んずべからず?
バイデン大統領はかねて2024年の大統領選への再出馬に意欲的だったが、就任すれば82歳という高齢が不安視されたり、インフレの深刻化や犯罪の増加などを共和党側から攻撃されて民主党内にも交代論が燻っていた。
それにもかかわらず11月の中間選挙では上院の多数を確保し、下院で破れたとはいえ僅差で大方が大負けと言った予想を覆したので民主党内の交代論がいっきに終息していったと言われる。
一方の共和党からも「バイデン軽んずべからず」という声が上がり始めた。
1994年の中間選挙で共和党を率いて下院で52議席、上院でも8議席逆転させて「中間選挙史上最大」と言われる逆転劇を演出したニュート・ギングリッジ元下院議長も自身のホームページで「共和党はバイデンを過小評価するのを止めるべきだ」と提言している。
「ドワイト・アイゼンハウワー大統領やロナルド・レーガン大統領は過小評価されることを好んだ。人々に恐れられるよりも好まれることを求めた。過小評価されることが彼らの大きな資産だったのだ。人々が彼らを笑い者にしているときに、彼らは目的達成に努力し政策の執行に努めていたのだ」
バイデン大統領も過小評価されることを喜んでいるのだろうか。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】