11月下旬、厳しいゼロコロナ政策に対する異例の抗議デモが、中国各地に広がった。政府は規制の緩和をアピールし始めたが、一部ではマンションの封鎖などが続いていて、市民の不満がくすぶっている。

ゼロコロナ政策「一部緩和」

厳しいゼロコロナ政策に抗議する市民と警察が衝突し、複数の人が拘束された中国・上海。その動きは若い中国人留学生を中心に、海外まで広がっている。

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ロイター通信によると、習近平国家主席は12月1日、EUのシャルル・ミシェル大統領との会談の中で、抗議活動を「3年に及ぶコロナの流行に人々が不満を募らせていたためで、主に学生や10代の若者によるものだ」と説明。また、オミクロン株はデルタ株より致死率が低いことから、「規制を緩和する道を開き、一部地域ではすでに緩和されている」と述べたという。

この習主席の発言について「衝撃だった」と語るのは、キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員で青山学院大学の客員教授を務める峯村健司氏だ。

峯村健司さん:
衝撃でした。強気な態度をしていたのが、今回初めて弱気なエクスキューズを言った。恐らく私が知る限り初めてだろうと。これまでばらばらの砂だった中国14億の人が初めて、中国政府の政策のミスによって団結したといってもいいぐらいのインパクトがあった

こうした中、上海市では12月5日から一部の対策を緩和。地下鉄やバスなどの公共交通機関で、陰性証明書の提示が不要になった。
首都・北京市でも同様の対応が始まるなど、中国の各地で規制緩和が始まっている。

マンション封鎖は今も…カメラマンからのリポート

一方、関西テレビ上海支局のカメラマンが住むマンションは、12月3日の夕方から封鎖されている。

PCR検査で陽性と判明した人物が12月1日にこのマンションに訪れていたことが分かり、封鎖措置が取られたということだ。

ゼロコロナ政策を巡り新たな局面を迎えた中国で、今、何が起きているのか。マンション封鎖に見舞われているカメラマンに、詳しく話を聞いた。

粟村文彦カメラマン:
上海市内の自宅マンションから出られなくなって、今日で3日目です。3日前は外出中だった夕方4時ごろに突然、マンションの管理人から携帯にメッセージが届きました。そこで「マンションを訪れた人がその後、陽性になったことが分かった。今からマンションを封鎖します」と知らされ慌てて帰宅、そこからは一歩も外に出られない状況になりました

(Q:4月の大規模なロックダウンとの違いは? )
粟村文彦カメラマン:

春の封鎖と比べると、規制はかなり緩和されています。春の封鎖は2カ月間も続きましたし、上海市全体でした。私も部屋から一切出られず、ほとんどの店も閉まっていて宅配もなく、「物資の争奪戦」が行われるような大変な状況でした。しかし今回の封鎖は3日間で、スーパーも開いていますし、出前を取ることもできます。1階のロビーに下りて荷物を受け取ることも許されているので、食料の不安はありません。現在の上海市内は車も走っていて人も歩いています。春なら確実に封鎖されていたであろう隣の建物も封鎖されておらず、範囲・レベルともにかなり緩和された印象です

(Q:緩和されているということは、上海市民はこの状況を前向きに捉えている?)
粟村文彦カメラマン:
前回より緩いとは言っても、住民の不満はかなりたまっていると思います。マンションの住民同士がやり取りするグループチャットでは「これは不当な隔離だ!」「自由のためにみんなで力を合わせて外に出よう」と呼び掛ける人もいるほどです

(Q:先月末に起きた抗議デモの印象は?)
粟村文彦カメラマン:

今までの抗議は「食料がほしい」といった目の前の生活への不安に対するものでしたが、先月の上海で起きた大規模なデモを取材したときは「習近平は退陣せよ」という声を上げる人たちもいました。20代くらいの若い人たちが、政権に対してダイレクトに不満の声を上げているのは初めて見たので、とても驚きました。それだけ国民の不満もたまっているという印象です

維持? 緩和? 習近平国家主席の本音は

中国各地で起きた大規模デモを受けて、揺らぐ習近平政権。中国政治に詳しいキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司氏は、習近平国家主席はかつてない難しい判断を迫られているという。

ゼロコロナ政策を大きく緩和すれば、これまでの実績やメンツが丸つぶれになってしまう。しかし、「天安門事件」のトラウマもあるため、デモは早く沈静化したいということだ。

峯村氏は今後のポイントを、1月22日から始まる春節と見ている。規制や旅行で人々の大移動が起こるため、規制を緩和すれば感染拡大の恐れがある。しかし、しなければさらなるデモの可能性がある。それまでに何らかの判断を迫られるだろう、ということだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月5日放送)

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