近年、急激なスピードで生息地を拡大させ、数を増やし続ける“ある厄介者”。その被害は住宅街にも広がり、夜になれば「ギャー!」という不気味な鳴き声が響き渡る。
この記事の画像(26枚)昼夜を問わず、住民を悩ますその厄介物の正体は、中国や台湾が原産地の「キョン」。
体長は約1m。濃い茶色の毛並みに鹿のようなかわいらしい見た目をしているが、特定外来生物に指定されている。
木の陰で休憩、人がいても道路を横断
このキョンが大繁殖しているのが千葉県勝浦市。住宅街を歩いてみると…。
取材スタッフ:
庭に柵をしているお家が多いですね。こっちも柵をしてありますね。
多くの家が柵や網で囲いを作っている。その理由は。
住民A:
みんなこういうのでも食べていきますよ。今、スイセンを植えているんだけど、そういうのも。嫌いな物ないんじゃないかな。
キョンが庭で育てている花や作物を食べてしまうため、それぞれの家で対策をしているという。
住民A:
厄介者だわね。自分が大切にしているのを食べていくわけだから。
すると、取材を続けていたその時…。
取材スタッフ:
いたいたいた!木の陰で休んでますね。じっとこちらを見ています。
住宅のすぐ近くの木の下でじっと伏せているキョン。さらに。
取材スタッフ:
目の前を堂々とキョンが歩いています。後ろには散歩する住民の方もいます。
人がいても堂々と道路を横断。一方でこちらのキョンは…。
取材スタッフ:
前足を地面にたたきつけて、威嚇しているのでしょうか?こっちを気にしていますね。
取材班に威嚇するようなしぐさを見せる。こうした状況は、2021年9月に取材した時にも。
取材スタッフ:
いたいた!あ、こっち見ましたね。あちらにも2頭います。
至る所にキョンがいた。なぜ、住宅街で大量発生しているのか?
対策の柵も飛び越え…7年間で2倍近くに急増
住民B:
勝浦の向こうに公園みたいなのを作って、動物の施設。そこから逃げたらしい。それが増えて。
1980年代に勝浦市のレジャー施設からキョンが脱走し、野生化したという。その後、数は増え続け、2014年度には推定で約3万4700頭だったキョンが、2021年度の調査では約6万7300頭に。7年間で2倍近くに急増している。
さらに生息域も拡大。勝浦だけにとどまらず、千葉県の半分ほどにまで広がっているという。
被害が報告されている千葉県いすみ市の住宅街でも…。
取材スタッフ:
いたいた!家の庭先に2匹。何か、もぐもぐとしています。
家の庭など、人々の生活エリアに何匹ものキョンが入り込んでいる。勝浦市と同じように柵や網で対策をしている家は多いが、効果はあるのだろうか?
住民C:
1mくらいだと飛び越えられちゃう。だから、ちょっと高めにしないとダメって状態で。
低い柵だと、簡単に飛び越えて家の敷地に入ってくるという。
住民C:
頑丈な網だったらいいんだけど、角で切って入ってきちゃう。お花とか植えてもみんな食べちゃうんで、もうそれの戦いって感じですね。
暗闇に光る目、響く鳴き声 「気味悪い」
そんなキョンが最も活発になるのが、夜だ。午後6時前、車で走っていると…。
取材スタッフ:
いたいたいた!あそこに2匹いますね。
車を降りて住宅街を歩いてみる。
取材スタッフ:
うわっ、びっくりした!いたいた!ここにもいました!家の庭先なんですが、あそこにもいますね。ちょっと歩いただけですぐ出会うくらい数が多いですね。
日中とは比べものにならないほど、たくさんのキョンがいた。
そして、住民を悩ますもう1つの問題が、キョンの鳴き声だ。
取材スタッフ:
すごい鳴き声ですね。ギャー!という音が聞こえます。
夜間に響く不気味な鳴き声。この声は日中にも…。相次ぐ騒音に住民の怒りは募るばかりだ。
住民D:
聞いていて心地良い鳴き声じゃないですね。うるさいですよ。結構静かなところだから、(音が)通りますからね。
住民E:
うるさい!響きわたりますよ、ギャーって感じ。すごく気味悪い。
住民F:
この町、全部来る。ちゃんと(対策)やんない限りは来るから大変だ…。
千葉県では、猟友会に委託しキョンの捕獲などを行っているが、繁殖力の高さなどから、なかなか進んでいないのが現状だ。
(「イット!」11月17日放送)