日々の業務の中で、メールに加えチャットツールを使う機会がある人も多いだろう。
スタンプ機能を使うなど、文章でのやりとり以外にもいろいろな使い方ができるチャットツールだが、『デジタル化の窓口』を運営する株式会社クリエイティブバンクが「ビジネスチャットの使い方」に関するアンケート結果を公開している。
調査は、国内在住の会社員・役員の20~60代男女1090人を対象としたインターネットリサーチ(期間:2022年10月25日〜11月1日)。その結果、まず「勤め先でのビジネスチャットを使用(導入)しているか」という質問に対して「はい」と答えたのは43.8%、「いいえ」は46.8%。

「はい」と回答した人は社内・社外を問わず、Microsoft Teamsを最も多く使っているという結果に。また、Slack、LINEなどのツールも好んで使われていることがわかった。

また、「ビジネスチャットのスタンプ機能は使うか」に対しては、「使う」が50.1%、「使わない」が40.6%。
「使う」の中には、「上司相手には使わないが同僚相手には使う」などの“使い分け”をしている人も含むという。

世代別に見ると、ほとんどの世代で「スタンプを使う派」が「使わない派」を上回っていたが、「使う派」は20~29歳では61.2%、30~39歳では56.2%。それ以上の世代になると、40~49歳では40.0%、50~59歳では44.3%、60歳以上では42.9%と、「スタンプを使う派」は半数に満たなかった。
また、40代のみ「使う」人が40.0%、「使わない」人が49.2%と、「使わない派」が優勢という結果も出た。

リモートワークの普及によって社内・社外ともにチャットツールの導入・使用も増えているように感じていたが、調査では約半数の人が使用していないことが判明。
また、「スタンプを使う人」も約半数と、チャットツールを積極的に使っていないと思われる結果となった。
メールよりスピーディーにやりとりができ、かつ手軽に感情を表現できるスタンプ機能などもあるチャットツールだが、使用率が半数にも達していないのはなぜなのだろうか。
また、スタンプ機能について、唯一「使わない派」が優勢だった40代についても気になる。株式会社クリエイティブバンクに、調査結果の受け止めなどについて聞いた。
働く分野によって、導入状況に大きな差
――この調査を行ったきっかけは?
弊社クリエイティブバンクはIT製品の導入事例や特徴・選び方を解説する紹介サービス『デジタル化の窓口』を運営しています。活動の一環として、ITツールについて定期的に調査レポートを配信しており、8月に「リモートワークとITツール」というテーマでアンケートを取ったところ、コロナ禍のリモートワークの中で役に立ったツールとして「グループウェア・ビジネスチャット」に票が集まりました。今回の調査ではそのテーマを掘り下げたいと思い、テーマとして「ビジネスチャットの使い方」を選びました。
――ビジネスチャットの使用率は約4割。この数字をどう受け止めた?
私どもの視点としては、率直に申し上げて「まだ4割」という感想を抱くのですが、業界別でみると、8割以上が導入していると回答があった業界もあれば、導入が3割に満たない業界もありました。働く分野によって、ここまで導入状況に大きな差が出るという事実が調査によって分かりました。

――チャット使用率が半数以下である理由はどんなことが考えられる?
2022年8月の調査でリモートワークが開始されてから導入されたIT製品で多かったのが、「グループウェア・ビジネスチャット」でしたが、その際「リモートワークをした経験」の割合が48%という結果でした。この場合、残りの52%がリモートワークを経験しておらず、従来通り出社していてビジネスを行っている中で、ビジネスチャットを敢えて利用するメリットを感じられていないのかもしれないと思いました。
――チャットツールを使うメリット・デメリットはどんなものがある?
チャットツールのメリットは気軽に短い文章で相手にメッセージを送信できるところだと思います。インターネットにアクセスできる環境であれば話し声を気にする必要もありません。文字で残りますので後から見返して確認をすることも可能です。
一方で、言葉のニュアンスが伝わりづらい場合もありますので、ミスコミュニケーションを起こさないよう注意が必要かと思います。
40代がスタンプに慎重な理由
なおクリエイティブバンクによると、2022年8月の調査で「リモートワークをしたことがある」人は48.0%。コロナ禍で導入数が増えつつあると思っていたリモートワークは実際はそれほど浸透しておらず、それに伴ってチャットツールの使用も広まっていない、ということのようだ。
では、実際にチャットツールを使っているにもかかわらず、スタンプ機能を使っている人が約半数だというのは何故なのだろうか。スタンプ機能の活用についても聞いた。
――スタンプを使う人は約半数。この数はどう受け止めた?
意外と多いなと思いました。会社のカルチャーにもよるとは思いますが、やはり長らく上下関係が厳しかった日本では例えば「いいね!」というスタンプを目上の人も含め迂闊に押せないという方も多いのではないでしょうか。この「いいね!」が「承知しました」「かしこまりました」という名称だったら日本の会社文化にフィットし、もう少し使用率が上がるかもしれないと感じました。
――40代が最も「スタンプを使わない世代」なのは何故だと思う?
団塊ジュニア世代や就職氷河期世代が含まれる現在の40代は、職場のパソコン導入、インターネットの普及などにより、急激なコミュニケーション方法の変化に対応してきた世代です。ITツールが無く、より上下関係を重んじた上の世代と、デジタルネイティブを含む下の世代間の橋渡し役として、ITツール有無の変化だけではなく、組織の上下関係の変化も乗り越えてきたこともあり、スタンプなど「軽い」と見なされがちなコミュニケーションツールの使い方に慎重であるといえそうです。

――スタンプを使うことへの抵抗感はなぜ生まれていると思う?
スタンプは文字よりも手軽に返すことができる一方で、相手や使用する場面によっては「誠意がない」と受け止められる可能性もあります。同じスタンプカルチャーを共有しているコミュニティならまだしも、相手に悪い印象を与えたくないと思う感情が抵抗感へ繋がるのではないでしょうか。
――今後、ビジネスツールとしてのチャット・スタンプ機能は企業が積極的に導入・使用していくべきだと思う?
もちろん企業の方針や業界、職種などにもよりますが、コロナ禍を経て、ビジネスのあり方やそれに伴うコミュニケーションの取り方は日々変化していきます。その変化に対応していくためにも、ビジネスツールとしてのチャットやチャットのスタンプ機能使用でより柔軟なコミュニケーションを取れるという点で導入を検討して頂きたいと思います。
また、どんなツールでも当てはまると思いますが、やはり役職が上の方が積極的に使うことが重要だと思います。上手く使いこなせないという方も、下の世代に聞くなどしながらコミュニケーションをとるきっかけになるかもしれません。

ちなみに、「社内で使用しているビジネスチャットのコミュニケーション」については「あくまでも業務上の連絡であることを心掛ける」ことを「気を付けている・どちらかと言うと気を付けている」人は72.4%。
「私語や雑談を控える」に対しても「気を付けている・どちらかと言うと気を付けている」と回答した人が46.2%なのに対し、「どちらかと言うと気を付けていない・気を付けていない」人は合わせて19.0%。あくまでチャットツールは「業務で使うもの」で、気軽に使うツールではないという意識が高いようだ。このような意識も、スタンプを使うことへの抵抗感の理由になっているのかもしれない。
クリエイティブバンクは「リモートワークが多い職場などでは気軽に話しかけづらく、コミュニケーション不足に陥る可能性があります。お互いの表情や感情が見えづらい環境だからこそ、『社内ではスタンプ推奨』など、社内のコミュニケーションはより伝わりやすい感情表現を積極的に心がけるのが良いかもしれません」と話している。

今回の調査では、そもそもリモートワークを経験したことのない企業も多く、それに伴いチャットツールの導入が進んでいないことがわかった。
しかし、現在リモートワークで業務を行っている人たちの中には、コミュニケーション不足を感じている人もいるだろう。今後、積極的にこのようなチャット・スタンプなどのツールを活用し、新しいコミュニケーション方法を試してみるのもいいかもしれない。
(出典:40代は「使用しない」が約半数!ビジネスチャットのスタンプ機能への抵抗感 ~「ビジネスチャットの使い方」調査レポート~)