天皇皇后両陛下は、11月22日、皇居・宮殿「松風の間」で、学問や芸術の分野で卓越した業績を残した今年度の文化功労者とお会いになりました。

11月4日 令和4年度の文化功労者に顕彰状が手渡された
11月4日 令和4年度の文化功労者に顕彰状が手渡された
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今年度の文化功労者に選ばれたのは、将棋棋士の加藤一二三さん、シンガーソングライターの松任谷由実さんら20人です。

両陛下主催の茶会に代わり設けられた面会の場

例年は、両陛下主催の茶会が行われますが、コロナ禍の影響で令和2(2020)年以降は見送られており、代わりに、面会の場が設けられています。
この日出席した17人の紹介を受けられた陛下は、お祝いのおことばを述べられました。

今回両陛下とお会いになった文化功労者は17人
今回両陛下とお会いになった文化功労者は17人

《陛下 おことばより》
皆さんが文化功労者に選ばれたことを心からお祝いいたします。皆さんが努力を重ね、学術、文化、芸術、スポーツの分野で大きな成果を収められたことを喜ばしく思います。今回は茶会を催して皆さんとお話することができず残念ですが、どうかくれぐれも体を大切にされ、今後ともそれぞれの分野の発展のために力を尽くされますよう願っております。

約30分にわたり 出席者一人一人にお声がけ

そして、両陛下は出席者一人一人に声をかけられ、将棋の棋士として長年第一線で活躍し、引退後はタレント活動を通じて将棋の普及に貢献し、「ひふみん」の愛称で知られる加藤一二三さんとも話されました。

陛下:
将棋界の発展のために。

加藤一二三さん:
ありがとうございます。長年良い将棋をさすために精進して、77歳で引退した後、たまたまタレント活動なんかもしまして、将棋の認知度を世界に広めたということが、受賞理由にもなっておりまして。まあこれからもですね、元気ですから、いろいろと頑張っていくつもりです。

皇后さま:
お若いときからご活躍で。

加藤一二三さん:
14歳でプロになりまして、77歳で引退しましたけど、将棋の解説などは続けております。

陛下:
若い人たちもね。(活躍されていて…)

加藤一二三さん:
結構優秀なのがいっぱい出てきていて、ありがたく思っています。

陛下:
藤井聡太さんはじめ、楽しみですね。

加藤一二三さん:
ありがとうございます。

将棋棋士 加藤一二三さん(左)とシンガーソングライター 松任谷由実さん(右)
将棋棋士 加藤一二三さん(左)とシンガーソングライター 松任谷由実さん(右)

また、「卒業写真」や「春よ、来い」など数多くのヒット曲で知られ、今年デビュー50周年を迎えたシンガーソングライターの松任谷由実さん。陛下は、どんなときに曲を思いつくのか尋ねられました。

陛下:
どういうときに楽想っていうのが?

松任谷由実さん:
最初のアイデアはいつ来るか分からないんですが、翻訳小説が多かったような。自分で言うのもなんですが文武両道を心掛けています。これからもさびないようにこれを励みに頑張りたい。

皇后さま:
50周年おめでとうございます。お元気でご活躍ください。

脚本家 池端俊策さん(左)
脚本家 池端俊策さん(左)

さらに、NHKの大河ドラマ「太平記」や「麒麟がくる」などで知られる脚本家・池端俊策さんとは、歴史ドラマの描き方についてのお話に。

池端俊策さん:
このところ、日本人の歴史をドラマで描きたいということで中心にやっております。日本人がどう変わってきたのか、あるいは変わらないのか。日本人の情緒みたいなものを描ければなと。

陛下:
ずいぶん資料もいろいろご覧になるのでは?

池端俊策さん:
歴史学者の方に助けていただきますけれども。ただ我々は真実を描くというよりは、自分なりに作って、歴史の中に沈み込むという作業を毎回やります。大変面白い仕事です。

陛下:
大河ドラマも。

池端俊策さん:
はい。「麒麟がくる」などをやらせていただきました。室町(時代)は面白いですよ。

陛下:
とても面白かったです。
 

そのほかにも、染織家で京都市立芸術大学名誉教授の中井貞次さんと徳島県で藍染め体験をしたときのお話や、平成30(2018)年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞し、「霧の彫刻」で有名な中谷芙二子さんと人工的に霧を発生させて作り上げる独特の作品について話されました。

染織家 中井貞次さん(前列・左端)と「霧の彫刻家」中谷芙二子さん(前列・右端)
染織家 中井貞次さん(前列・左端)と「霧の彫刻家」中谷芙二子さん(前列・右端)

両陛下は、およそ30分にわたり、出席者ひとりひとりの話に耳を傾け「お体に気をつけて」と声をかけられました。また、お声がけを終えた出席者には「どうぞおかけください」と着席をすすめるなど気遣っていらっしゃいました。

(「皇室ご一家」11月27日放送)