「希望しない」チェック欄を削除した“独自の申請書”を配布

新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策として、政府が国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」。

オンライン申請では、自治体で1件ずつの確認作業に追われ、申請の中止も相次ぐなどトラブルが多発しているが、一方の郵送申請する際に用いる“申請書”についても懸念がある。河野太郎防衛大臣は「定額給付金の申請書の『希望しない』に勘違いでチェックをつける人が多いようです。間違いないように気をつけましょう」と、Twitterで注意を呼びかけている。

国が示した申請書の見本では、給付対象者の氏名欄の右側に「受給を希望されない方は×印を御記入ください」というチェック欄が設けられているのだが、これを「希望する」のチェックだと勘違いし、誤って記入してしまうケースが多発しているのだ。

(関連記事:10万円給付金の申請で「希望しない」に勘違いでチェック注意…あとで修正は可能? 総務省に聞いた

申請書の見本(総務省HP)
申請書の見本(総務省HP)
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こうした中、「受給を希望しない」のチェック欄がない、“独自の申請書”を各世帯に配布している自治体がある。

5月14日から申請書の配布を始めた、山形市だ。

山形市の申請書(山形市HP)
山形市の申請書(山形市HP)

削除した4つの理由

なぜ、申請書から「受給を希望しない」のチェック欄を削除したのか?

山形市の佐藤孝弘市長は自身のFacebookに4つの理由を記している。

・本来は受け取りたい方が間違えてチェックしてしまい受給できない、あるいは受給が遅れるリスクがある。

・そもそも受け取らないという方は申請書を提出しないし、家族の一部だけ受け取りたいという方は極めて少数と推測できる。

・チェック欄にチェックされて送られてきた場合、市役所からお電話して、本当にその意思なのか確認する必要が生じる。これは、ただでさえ膨大な事務に追われている状況に拍車をかけてしまい、本末転倒になってしまう。

・万が一、家族の一部だけ受給したいという方(ほとんどおられないと思いますが)がいれば、申請書にその旨、書き込んでお送りいただくか、電話で市役所にお問い合わせいただければよい。

「受給を希望しない」のチェック欄が勘違いしやすいのではないかと問題になっているだけに、この決断はネット上で好意的に受け止められている。

一方で気になるのが、国が示した見本を市町村の判断で変えたこと。
国が示した見本を市町村が変え、独自の申請書を配布しても問題はないのか?

今回の取り組みについて山形市・特別定額給付室の担当者に話を聞いた。

「市町村の裁量で手を加えてもよいと聞いている」

――国が示した見本を変えても問題ない?

国からはあくまでも見本(申請書の様式案)なので、市町村の裁量で手を加えてもよい、と聞いています。

――チェック欄を削除することによって、業務は減った?

山形市では元々なかった業務なので何とも言えませんが、確実に2つの手間は減っています。

1つは「受給を希望しない」のチェック欄のチェック。もう1つはチェックがあった場合の確認作業です。

山形市の申請書(山形市HP)
山形市の申請書(山形市HP)

――チェック欄を削除しても、申請書の確認作業は大変?

大変です。
口座番号に間違いがないか、書類に不備がないか確認し、不備があれば、それを郵送でお知らせしなければならないなど、作業に追われています。
 

新型コロナウイルスが経済に大きな影響を与える中で、大切なことは必要な人になるべく早く届けることだ。そのためにも、少しでも手間を減らす山形市のような取り組みを行う自治体が増えていくことを願いたい。
 

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プライムオンライン編集部
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