子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性を意味する言葉「イクメン」。このイクメンが「新語・流行語大賞」のトップ10のひとつに選ばれたのが2010年。それから10年以上が経過したことになる。では、男性の育児参加の現状は今、どうなっているのか? 鹿児島県内の実情を取材した。

職場でたった1人“イクメン”の先輩 当時振り返る

鹿児島市産業支援課・高橋卓也課長:
男の親が子どもを育てる、抱っこするとか、そうやってお世話をすることで、子どもが喜ぶわけないだろうって言われたこともありました

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当時を振り返る、1人の男性。2004年、鹿児島市役所の男性職員として、初めて育児休暇を取得した高橋卓也さん(52)。当時赤ちゃんだった娘の奈々さんは2023年、20歳を迎える。その経験は、地元の情報紙につづられていた。

「寝ぼけながらミルクを作ろうとしたら、哺乳瓶がない! 夕べ洗っていなかったのだ。急いで洗浄、煮沸する間にさらに大きな泣き声に。こっちはパニック状態」(南日本新聞フェリア 2005年7月2日)

美川愛実アナウンサー:
最初から大変だったみたいですね

鹿児島市産業支援課・高橋卓也課長:
想像以上にやることが多かった。妻の大変さがわかったので、家事は半々でやらないといけないというのは、強く思いました

鹿児島市役所1人目の育休取得者が生まれて18年。男性の育児への向き合い方は、どう変化したのか。

厚生労働省が発表している2011年度~2020年度の男性の育児休業の取得率の推移をみると、2020年に初めて10%を超え、増加傾向にあるものの、80%以上を維持している女性と比べると、差は大きく開いている。街で話を聞いてみると…。

子連れの夫婦(夫):
制度はあります

美川愛実アナウンサー:
取っている人はいますか?

子連れの夫婦(夫):
あまり浸透していないですね

子連れの女性(母親):
(夫に育休を)取れたら取ってほしいが、会社がまだ難しそうな感じ

仕事を辞めたタイミングと出産が重なり、育児に参加できたという男性もいた。

男性:
子どもに対しての感覚というか、すごく大切な子だなという意識が芽生えた

男性の妻:
いてくれて心強かったし、助けてもらった

生活は子ども中心に「成長を一緒に見届けられる」

鹿児島市の企業で働く川床誠志郎さん(28)は、自動車保険の加入者に事故対応のサポートなどをする企業に入社して、8年になる。

プライムアシスタンス 鹿児島センター部・川床誠志郎さん:
1分でも早くレッカー車を現場に向かわせるために、集中して取り組んでいます

後輩たちをまとめる管理者の役割を任されている川床さんは、一人娘、菜乃(なの)ちゃんと妻・早織さん(28)と暮らす新米パパ。8月に菜乃ちゃんが生まれ、2週間あまり、育児休暇を取得した。

川床さんの妻・早織さん:
育児ノイローゼ、産後うつになるのではと不安でしたが、育休を取れることになって、気持ちが楽になりました

育休が始まると同時に、生活は菜乃ちゃん中心に。

川床誠志郎さん:
だいたい朝9時ぐらいに起きて、そこから菜乃ちゃんの着替えや保湿を一緒に行って、朝ごはんを食べて…

川床さんの妻・早織さん:
(スマホで撮影した動画を見せながら)これがはじめてのミルク

川床誠志郎さん:
(哺乳瓶の)持ち方がわからなかった(笑)。今は慣れたね

川床さんの妻・早織さん:
成長を一緒に見届けられるというのが一番大きかったので、すごく幸せな時間でした

シフト制で業務内容を共有…希望者の育休取得100%も

川床さんが育児休暇を取っていた約2週間。会社では、川床さんの業務をどうフォローしていたのか?

プライムアシスタンス 鹿児島センター部・芝田翔平さん:
シフト制の会社なので、そのメンバーがいないと仕事が止まってしまうということはないので、安心して産休、育休に入れる環境かなと思う

会社の勤務形態はシフト制で、一緒に働くメンバーも日によってさまざま。そのため、業務内容を共有する仕組みが整っていて、川床さんが抜けた穴をスムーズにカバーできたという。さらに…。

プライムアシスタンス 鹿児島センター部・芝田翔平さん:
弊社は年齢層が30代前後というところもあり、結婚だったり出産の適齢期というところもあるので、結婚に対しても出産に対しても「おめでとう」という気持ちと、フォローしようという気持ちを、みんなが持っている

結婚、育児の経験者が多い職場ということもあって、出産したタイミングで、会社の方から育休を提案。2022年度の希望者の育休取得率は100%という。

2004年、職場でたった1人の育休取得者だった“イクメン”の先輩は…。

鹿児島市産業支援課・高橋卓也課長:
相当、職場のフォローが大きくないと大変なんだろうと思いますね。部署の長がしっかりと働きかけをしてフォローする体制を作っていくこと、言葉だけではなく。それができないと、難しいのかなと思います

男性の育児。子どもとの向き合い方はさまざまだが、全国的にもその選択肢はまだ多くない。「こうしたい」を形にできるように。引き続き職場のサポートが求められている。

(鹿児島テレビ)

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