50歳の挑戦。長野県駒ヶ根市に住む写真家の男性が一念発起し、「肉体美」を極めようとトレーニングを積んでいる。写真家が肉体を鍛える理由・・・。短い人生の中で自分のやりたいことを追求する姿を取材した。
「ロケーションフォト」
紅葉の木々の下でポーズを取る女の子。撮影しているのは、駒ケ根市の写真家・下宮伸一さん(50)だ。
この記事の画像(16枚)下宮伸一さん:
(スタジオと外だと表情違う?)全然違います。スタジオだと表情固まっちゃう子が多いけど、外行くとすごいはっちゃける子が多いので
この日は神社などで七五三の記念撮影をした。
父親:
自分たちが好きなところにも行けるし、下宮さんのおすすめのところにも連れて行っていただけるというのが一番の魅力
下宮さんはスタジオも構えているが、主に手掛けているのは希望の場所で撮影する「ロケーションフォト」。
「相棒」のビンテージカーに機材を積み、県内外を飛び回っている。
下宮伸一さん:
スタジオの中にお客さんの思い出というのはないわけですから、入学・入園とか七五三とか、ここの場所でこういう思い出があったんですというようなものがあるからこそ、本当の思い出になると思うんですよ
肉体美を追求
実は、下宮さん、写真とは別にもう一つ、情熱を注いでいるものがある。
ダンベルでトレーニング。重さは片方だけで32キロもある。鍛え上げられた肉体。でも、本人は…
下宮伸一さん:
本当、(筋力が)足りないところばっかりで恥ずかしいです
以前は「ぽっちゃり体形」だったが、4年前から体を鍛え、肉体美を競うコンテストに出場。
50歳を前に、新たな挑戦を始めたのだ。
写真家として国際的に高い評価
下宮さんは広島県の出身。前の職業はプロスキーヤーで、専門誌の表紙を飾ったこともある。良い写真を残そうと20代後半からカメラを手にするようになり、やがてスキーなどのスポーツ写真を手掛けるようになった。
下宮伸一さん:
オリンピック選手とか追いかける中で、そこまで苦しかったり、楽しかったり、努力したり、その部分があるからこそ金メダルの写真が良いものになるのではと。そのストーリーを(写真で)残したいなと思って、今に至ります
2004年から駒ヶ根市を拠点に活動し、数々の国際コンテストで入賞。2022年、実績が評価され、全米プロ写真家協会から優れた会員に贈られる「マスターオブフォトグラフィー」の称号を授けられた。
下宮伸一さん:
『マスター』になるためにアメリカに(作品を)出していた十数年っていうのもありますので、すごくうれしい部分はありますし、コツコツの積み重ねがそこにたどり着かなければいけないものなので、やったかいはありました
筋トレ…「自分との戦い」
何事にも努力を惜しまない下宮さん。自分にピッタリの新たなチャレンジとして見つけたのが「筋トレ」だ。
下宮伸一さん:
(筋トレは)すごく辛いし、苦しいし、大変だし、やめようと思えばいつでもやめられるけど、仕事もそうですけど、勉強もそうですけど、毎日の積み重ねが成果を生む。(年齢を重ねると)なかなか新しいことにチャレンジってしなくなってくる。失敗も怖いだろうし、そうではなく、そういうのを吹っ切って50歳からのスタートっていうことで
自宅の敷地に自前のジムを造り本やインターネットで知識を吸収。撮影の傍ら、ほぼ毎日、1時間半ほど筋トレをしてきた。スキーや写真にストイックに向き合ってきただけに、肉体改造にもストイックだ。
下宮伸一さん:
弱え!最後の1レップ上がんないのは、自分の弱さです。しんどいですけど自分との戦いなので、やったらやった分、筋肉は応えてきますので、やらなかったら増えないですし
食事も徹底している。体脂肪の蓄積を防ぎ、筋肉に栄養を与え続けるため、1日2000キロカロリーを3時間おき、7回に分けて取っている。
この日の昼食は焼いた鶏のむね肉と玄米。タンパク質とビタミンを取り込む。
下宮伸一さん:
(食事は)1年中、基本これです。(味付けは)塩だけですね。お酒はやめました、浴びるように大好きだったんですけど…
記者:
家族はどう思っている?
下宮伸一さん:
シラーっとしてますけど(笑)
長野大会でグランプリと準グランプリ
徐々にコンテストで入賞や優勝を果たすようになり、満を持して2022年6月には「ベストボディ・ジャパン」の長野大会に出場。
エントリーしたのは、筋肉の量が重視されるマッスルモデル部門マスターズクラス(40歳以上)と、全体のバランスが重視されるベストボディ・ジャパン部門ゴールドクラス(50~59歳)の2部門。
「キレキレ」の状態で臨んだ下宮さんは、それぞれグランプリと準グランプリに輝いた。11月には全国大会に出場する。
下宮伸一さん:
負けるつもりで出なかったから、通過点でしかなかった。そこはゴールじゃないですし。長野代表として出るわけですから、笑顔で帰って来られればと思いますし、それを励みに年齢に関係なく、努力すれば実るんだなという強い気持ちの人が増えればなと思う
写真家として被写体に向き合いながら自身の肉体とも向き合う。
最後に、2つに情熱を注ぎ続ける訳を聞いた。
下宮伸一さん:
私の父も早く亡くなっているんですよね。やりたいことあったけど、一生懸命仕事して亡くなった。すごく人生は短い中で、一生懸命生きたいなっていう、全力で生きたいなっていうのはずっと思っていて。周りにどんなことを思われようが、自分の決めたことをやり抜くってだけかなと思います
(長野放送)