霧島山系の豊富な地下水で作られる「みそ」を、食文化の架け橋として世界に発信する老舗メーカーの挑戦を紹介する。
「重い・水で調理」みその弱点を克服
霧島連山などに降った雨が土壌を通り、長い年月をかけて「ろ過」され、蓄えられた都城市の地下水。古くから稲作や水道水など様々な用途で利用され、市民の生活を支えてきた。
この記事の画像(11枚)美しい水に恵まれた宮崎・都城市の食文化の一つが「みそ」。
創業137年目の老舗、「早川しょうゆみそ」も地下水を利用し、麦みそを主力に100以上の商品を製造している。旨味や風味の決め手となる麹菌の熟成や温度管理など、職人の技で伝統の味を受け継いできた。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
地元の味、ふるさとの味をやっぱり大切にしていかないといけないということと、調味料のメーカーとして、新しい挑戦をしていかなければいけないなと思っています
人口減少や食生活の変化で国内のみその需要が減ったことから、2017年に海外への輸出を開始。都城市の工場から10カ国に製品が送られるようになった。
さらなる販路拡大の切り札として、2020年に開発されたのが、みそを粉末にした「umami・so」。
きっかけは東日本大震災。7代目で専務の早川薫さんが、みそを使って栄養バランスを考えた食事を被災地などで手軽に食べてもらいたいと、開発をスタート。みそを運ぶ労力と水で調理する手間を省く、画期的な商品を目指した。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
みそが現代に上手くマッチングしていない感覚がして、重さだったり手間だったりとか…粉末化のヒントをいただいたことがきっかけで、みその弱点が改善されると感じたので
みその風味を損なわないよう「無加熱」で乾燥する、独自製法の開発で5年の歳月がかかった。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
見た感じ、サラサラした形でみそに見えないんですけど、県の研究機関でも(酵素が)「生きている」みそとして、お墨付きをいただいている商品です
新しい調味料として世界から評価
粉末状のスパイスとして売り出したことで、調理の幅が広がり、海外の様々な食文化とつながっていった。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
食文化によって見られ方が全然違うなというか、チーズのような風味だったり、岩塩のように使ったり、自分たちが想像しないような使い方を提案されるので、みその可能性が広がっている気がして…
海外で評判を呼んだ「umami・so」は、10月7日にイギリスで開催された故エリザベス女王即位70周年の関連イベントで展示され、「世界で最も優れた食品・飲料製品の一つ」として評価を受けた。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
色んな国の食文化との懸け橋になってくれるような、アップデートされたスパイスになったりすると、みそとしての存在価値が高くなる
老舗メーカーの挑戦が「みそ」の新しい姿と可能性を見出し、都城市で愛される味が世界へとつながり始めている。
早川しょうゆみそ・早川薫専務:
粉末の「みそ」とか形を変えて世界に認められるようになった時に、都城の食文化が世界に誇れるものだと評価につながるかと思います。もっと愛される地元の味につながってくれると、すごくうれしいです
(テレビ宮崎)