天皇皇后両陛下は9月17日、イギリスのエリザベス女王の国葬に参列するため、長女・愛子さまのお見送りを受け、お住まいの御所を出発されました。

御所で愛子さまがお見送り
御所で愛子さまがお見送り
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両陛下 国葬参列へ出発

羽田空港では秋篠宮ご夫妻に見送られ、政府専用機に乗り込まれました。

皇室の慣例により、天皇は通常、葬儀には参列しませんが、昭和天皇から三代にわたる女王との長い交流の歴史に鑑み、異例の参列が決まりました。

両陛下は2年前、エリザベス女王の招待でイギリスを公式訪問される予定でしたが、コロナ禍で延期され、今回が即位後、初めての外国訪問となります。

秋篠宮ご夫妻らに見送られ イギリスに出発される両陛下(羽田空港)
秋篠宮ご夫妻らに見送られ イギリスに出発される両陛下(羽田空港)

国葬前日 3年ぶりにチャールズ国王と再会

国葬の前日、陛下は各国の王族らと共にチャールズ新国王夫妻が主催したレセプションへ。
皇后さまは体調を整えるため、ホテルで過ごされました。

チャールズ国王と3年ぶりに再会した陛下は、直接お悔やみを述べた上で、長年、女王と交流のあった上皇ご夫妻から託された弔意も伝えられました。

また、女王の棺が安置されたウェストミンスターホールを訪れ、女王から温かく接していただいたことへの感謝の気持ちを込め、静かにお別れをされました。

チャールズ国王に弔意を伝えられる陛下(イギリス外務省提供)
チャールズ国王に弔意を伝えられる陛下(イギリス外務省提供)

皇室と女王の3世代にわたる交流の歴史

昭和28年(1953年)、イギリスを訪問するため横浜から出港された、当時19歳の上皇さま。
終戦から8年、イギリス国内に反日感情が残る中、昭和天皇の名代としてエリザベス女王の戴冠式に参列されました。

昭和28年(1953年)イギリスに向け横浜から出港された上皇さま (当時19歳)
昭和28年(1953年)イギリスに向け横浜から出港された上皇さま (当時19歳)

それから18年後、昭和天皇は天皇として初めて、イギリスを訪問。
この時は女王自ら駅で出迎え、バッキンガム宮殿まで同じ馬車に乗りパレードをするなど、昭和天皇は大歓迎を受けました。

昭和46年(1971年)天皇の訪英歓迎パレード(英・ロンドン)
昭和46年(1971年)天皇の訪英歓迎パレード(英・ロンドン)

昭和50年(1975年)、今度はエリザベス女王夫妻が国賓として初来日。
昭和天皇は迎賓館で女王を出迎え、3年半ぶりの再会で親交を深めました。

女王夫妻は滞在中、各地を訪問。皇室ゆかりの伊勢神宮などを巡り、日本の文化や歴史に親しみました。

昭和50年(1975年)伊勢神宮を参拝するエリザベス女王(三重・伊勢市)
昭和50年(1975年)伊勢神宮を参拝するエリザベス女王(三重・伊勢市)

上皇ご夫妻は、来日中の女王をお住まいにご招待。この時、15歳の陛下も初めてお会いになっています。庭の散策を楽しまれた折には、当時6歳の清子さんが、わすれな草を摘んで女王にプレゼントするという微笑ましい光景も。

昭和50年(1975年)当時の東宮御所に招かれたエリザベス女王
昭和50年(1975年)当時の東宮御所に招かれたエリザベス女王

昭和51年(1976年)にイギリスを訪問した上皇ご夫妻は、女王の案内でアスコット競馬場に足を運び、温かいもてなしを受けられました。
その後、何度もイギリスを訪れ、交流を重ねられました。

平成24年(2012年)には、在位60年の記念行事に出席するため、ウィンザー城へ。
女王夫妻の出迎えを受けられた上皇ご夫妻。30ヵ国の国王らが招かれた昼食会では、女王と同じテーブルに座り、楽しいひとときを過ごされました。

平成24年(2012年)エリザベス女王在位60年を祝う昼食会に参加された上皇ご夫妻
平成24年(2012年)エリザベス女王在位60年を祝う昼食会に参加された上皇ご夫妻

昭和58年(1983年)から2年間、イギリスのオックスフォード大学に留学されていた陛下。
留学中、女王ファミリーの夏の静養に招かれ、夫のフィリップ殿下とスコットランドの自然を楽しまれたり、女王の誕生日パレードをバッキンガム宮殿のバルコニーからダイアナ元妃の隣でご覧になるなど、「家族の一員」のような時間を過ごされました。

昭和59年(1984年)フィリップ殿下とスコットランドの自然を楽しむ陛下
昭和59年(1984年)フィリップ殿下とスコットランドの自然を楽しむ陛下

また、平成13年(2001年)には女王の招きでウィンザー城をご訪問。
王室の秘蔵コレクションが収蔵されている図書室では、日本の皇室から贈られたゆかりの品々について、女王自らの説明を受けられました。

女王:
この刀は、私の祖父(ジョージ5世)が頂いたものです。あなたにゆかりのある方ですか?

陛下:
伏見ですね。

女王:
この紋章は、あなたの家のもの?

陛下:
はい、天皇家です。

刀は、大正天皇からジョージ5世への贈り物で、大正7年(1918年)に、イギリスを訪れた東伏見宮が届けたものです。こうして、皇室とイギリス王室は長きにわたる交流を重ねてきました。

平成13年(2001年)ウィンザー城の図書室で女王から説明を受けられる陛下
平成13年(2001年)ウィンザー城の図書室で女王から説明を受けられる陛下

両陛下 エリザべス女王の国葬に参列

9月19日、天皇皇后両陛下は、エリザベス女王の国葬に参列されました。

イギリス史上最長の在位70年を誇り、「イギリスの母」と呼ばれ、多くの国民に愛されたエリザベス女王。ウエストミンスター寺院で行われた国葬には、各国から約500人の元首や王族らが参列しました。

厳粛な雰囲気の中、イギリスの伝統に則り行われた国葬。

両陛下は、心からの哀悼と深い感謝の気持ちで、96歳で亡くなった女王を偲ばれました。女王の棺は、長年住み慣れたロンドン郊外のウィンザー城に移され、去年亡くなった夫のフィリップ殿下の隣に埋葬されました。

国葬後記帳される両陛下 ©️David Parry/PA Media Assignments
国葬後記帳される両陛下 ©️David Parry/PA Media Assignments

両陛下は国葬終了後、会場を移して行われたイギリス外務省主催のレセプションにご出席。

記帳では、エリザベス女王とイギリス国民への気持ちを込めて、お悔やみのメッセージを書き、英語と漢字で署名されました。

また、レセプションでは、参列者と共に女王を偲び、オランダやベルギー、ブータンの国王夫妻やトンガの国王など各国の王族と旧交を温められたということです。

日本に向けイギリスを出発される両陛下(スタンステッド空港)
日本に向けイギリスを出発される両陛下(スタンステッド空港)

両陛下は国葬が終わったその日の夜、帰国の途に着かれました。今回の国葬参列で、皇室や日本国民の弔意をイギリスに伝えられた両陛下。
これからもイギリス王室との交流は、世代を超えて受け継がれていきます。

(9月25日放送「皇室ご一家」)