9月10日、ロンドン市内のセントジェームズ宮殿で行われたチャールズ新国王の即位宣誓式。イギリスにとって、約70年ぶりとなる新たな君主の誕生です。

その即位について、生前エリザベス女王は、ある言葉を遺していました。

「チャールズと妻のカミラにも私が皆さんから受けたものと同じ支援を…」

そこには、やがて訪れるチャールズ新国王の即位に対する、国民への“最後の願い”が込められていたといいます。

新国王即位で変化していくイギリス

チャールズ国王の即位に伴い、様々なものが新たに変更されることになります。
ひとつめは、「国歌」です。これまでは、「神よ女王を救いたまえ」と歌っていたものが、「神よ王を救いたまえ」に。
イギリス紙幣・硬貨に使用されていた女王の肖像も、今後チャールズ国王の肖像に変わっていきます。
さらに、郵便ポストに刻まれていたエリザベス女王の印章も、新造分からチャールズ国王の印章に変わります。

新国王を国民全てが“祝福”しているわけではない?即位に異論も…

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変化していくイギリス、しかし全ての国民が新国王を祝福しているわけではありません。
6月24日付の「エクスプレス」紙には、「ウィリアム皇太子に仕事を譲れ!英国国民人は王位の“スキップ”を支持している」という見出しが。
継承権第2位のウィリアム皇太子に王位を譲るべきか?というアンケート(計2367人が回答)には、約76%が「YES」と答えたのです。

チャールズ国王と、ダイアナ元妃の間に生まれた長男のウィリアム皇太子。
なぜここまで、イギリス国民がウィリアム皇太子に王位を継がせたがったのか。それは、イギリス王室最大のスキャンダルといわれた、「離婚劇」にあります。
さらに、今年は、偶然にも、ダイアナ元妃の没後25年という節目の年にあたります。国内ではドキュメンタリー映画が公開されるなど、再び注目を浴びています。

イギリス中が震撼、世紀の大暴露“カミラゲート”

ダイアナ元妃の悲劇、きっかけは1993年の “カミラゲート”騒動にあります。
当時、皇太子だったチャールズ国王が現在の妻であるカミラ王妃に「君の下着の中で暮らしたい」とささやく不倫音声が流出。カミラ王妃はこのとき別の男性の妻だったため、イギリス中を揺るがす大騒動に発展しました。

報道が過熱した理由には、次々と明らかになったチャールズ国王による“裏切り”がありました。
チャールズ国王がカミラ王妃と出会ったのはダイアナ元妃と結婚する11年前。2人は意気投合し恋人関係になるも、1973年カミラ王妃は別の男性と結婚します。しかし、結婚後も親密な関係は続いたといいます。
さらに、ダイアナ元妃と結婚する際も、結婚の相談をカミラ王妃にしていました。

チャールズ国王公認の伝記でも、チャールズ国王はダイアナ元妃に対して「私は今までダイアナを愛したことは一度もない」と告白。
結婚は世継ぎのために、父に無理強いされたとも書かれていました。

英国王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子氏は…

ジャーナリスト 多賀幹子氏:
世継ぎを持たなくてはいけないという父親からのプレッシャーがあったから、心ならずもダイアナ元妃と結婚したという言い方になっているんですね。
王室としても、カミラ王妃はあまり“ふさわしくない”という考え方で、当時時間的・距離的にあけましょうということで、当時皇太子のチャールズ国王を海軍の船に乗せて、演習に出てもらったんですね。1年近く離しました。
その間に、カミラ王妃は他の方と結婚したわけですけども、それをチャールズ皇太子(当時)は忘れられなくて、帰ってきましたら「離婚してください」とカミラ王妃に頼んだそうです。カミラ王妃は、もう結婚していてそれはできない、でも「お付き合い」ならできるわ。ということで、ずっとつないでいったと。

チャールズ国王とカミラ王妃はこの後、国民の反感を押しのけ再婚。
それも、“王位スキップ論”につながっていきます。

国民感情に“変化”が…チャールズ国王の“献身”

しかしこの数年、その好感度に上昇の兆しが。
2022年3月、ミラー紙に掲載されたイギリス王室好感度調査では、チャールズ皇太子(当時)に好感を持てる人がYES 43%と、2018年に比べて11ポイント上昇しました。
多賀氏によると、2012年以降、高齢だった故・フィリップ殿下の代役として、露出機会が増えたことがきっかけだと言います。
女王の即位60周年記念コンサートでのエリザベス女王へのスピーチや、開局記念ゲストとしてテレビ局を訪問した際、 “新人”のお天気キャスターとして登場するなど、大評判を呼びました。

さらに、チャールズ国王は環境問題に深い関心があり、果樹園や牧草地などを備えた持続可能なニュータウン開発を進めるなど、3月に行われたリサーチ会社による世論調査(イギリスの成人2055人が回答)では「チャールズ皇太子は良い仕事をする」と答えた人が48%にもあがったのです。

エリザベス女王の“最後の願い”

少しずつ変化していた国民感情に、生前エリザベス女王は、こんな言葉を残しました。

「私が皆さんから受けたのと同じ支援をチャールズと妻のカミラに与えてくださると存じます。その時が来たら カミラが忠実な奉仕を続けるよう“王妃”として知られてほしいと心から願っています」(2022年2月 在位70年のメッセージより)

これは、カミラ王妃がチャールズ国王と再婚した際、結婚後も「妃」の呼称を使わず「夫人」で通すと公言していたことを受けての発言だったのでしょうか。

ジャーナリスト 多賀幹子氏:
結婚してからカミラ王妃はずいぶん気を使って、目立たないように、控えめに粛々と一生懸命公務をなさって、やはり努力の結果でしょうかね。女王にも認められるようになりました。やはり、国民の中にはまだ抵抗があるようですけども、「女王がおっしゃるのだから」ということで、受け入れる人も増えてきています。

それでも、未だ根強い「スキップ論」について、多賀氏はこう話します。

ジャーナリスト 多賀幹子氏:
一代飛ばして、(国王を)ウィリアム皇太子にしてはどうでしょうというお話もとても強いんですけれども、やはりウィリアム皇太子は大変子煩悩でいらっしゃって、3人のお子さんとよく遊んでいると。子育てをするということは、ウィリアム皇太子にとっても大事なことなんですね。自身のつらかった子供時代を取り返すかのように、子供をとてもかわいがっていると。
ですから、もう少し子育てのお時間を差し上げたらどうだろうと。チャールズ国王には頑張っていただいてというような声が高くなってきています。
ウィリアム皇太子はいずれ、最高の素晴らしい“王”になるわけですから。

(めざまし8 「わかるまで解説」より9月12日放送)