住宅に火をつけ7棟全焼「誠に独善的かつ身勝手」

「動機は在日コリアンへの敵対感情」。そう法廷で語った被告に対する、注目の判決が言い渡された。

京都府宇治市の在日コリアンが暮らすウトロ地区で、空き家などに火をつけた罪などに問われた有本匠吾被告(23)。

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増田啓祐裁判長:
動機は、在日韓国朝鮮人に対する偏見や嫌悪感に基づく誠に独善的かつ身勝手なものであって、およそ酌むべき点はない。被告人を懲役4年に処する

「深く反省してください」という裁判長の言葉に、被告が無言でうなずく姿があった。

有本被告は2021年8月、宇治市のウトロ地区の住宅にライターで火をつけ、空き家など7棟を全焼させた罪などに問われた。

有本匠吾被告:
放火が取り上げられ、歴史問題について考えてほしかった

その動機は「在日コリアンがウトロ地区を“不法占拠”している」という、誤った歴史認識に基づくものだった。

終戦後に行き場を失う…ウトロ地区の歴史

戦時中、日本政府が進める京都飛行場を建設するため雇われた、朝鮮半島出身者が暮らしていたウトロ地区。終戦後に計画は頓挫し、行き場を失った住民がその場に住み続けることになった。

終戦後に計画は頓挫し、行き場を失った住民がその場に住み続けた
終戦後に計画は頓挫し、行き場を失った住民がその場に住み続けた

約30年前には、土地の所有者が住民に立ち退きを求めた裁判で住民は敗訴したが、その後、韓国政府や日本人支援者らが土地を買い取るなどして問題は解決された。

2022年4月にはウトロ地区の歴史を伝える「平和祈念館」が開館したが、そこに展示する予定だった資料約50点は放火により焼失した。

ウトロ平和祈念館 金秀煥(キムスファン)副館長:
差別をしてしまう、人を傷つけるような言動をしてしまう。これらはこの人たちの悪意・悪行ではなくて、この社会によって刷り込まれたもの…。これをどうやって改善していくか

有本被告の本当の目的はどこにあったのか。ウトロ平和祈念館の副館長を務める金秀煥さんは、拘置所の有本被告を訪ねた。

拘置所で被告と直接向き合う 判決の受け止めは

ウトロ平和祈念館 金秀煥副館長:
結局のところ何が目的だったんですか?

有本匠吾被告:
今回目的としていたのは祈念館に対しての疑問、非難と言ったらあれですけど抗議の意識です

ウトロ平和祈念館 金秀煥副館長:
目的は達成されましたか?

有本匠吾被告:
「部分的に」としか言いようがないですね、今となっては

面会を終えた金副館長は…。

ウトロ平和祈念館 金秀煥副館長:
「自分がそもそも何をしたかったのか、混乱してしまうところがある」という話もあったので、被告は今までと違う考えになったのかなと期待しています。ちゃんとした情報を入れると変わってくるのかなと

8月30日、判決の日。京都地裁は「犯行動機は悪質で相当厳しい非難が向けられる」として、検察の求刑通り懲役4年の実刑判決を言い渡した。

判決を聞いた当事者たちは…。

ウトロ平和祈念館 金秀煥副館長:
この社会は一歩一歩進んでいるんだと住民たちに伝えられる判決だったので、そういう意味ではほっとしている。検察よりも踏み込んだ内容で裁判官が判断したところが勇気づけられるが、あそこまで言ってなぜ「差別」という言葉が出ないんだ、というところが残念

ウトロ民間基金財団 郭辰雄(カクチヌン)理事長:
ネットに氾濫する歪曲された情報や誤解に基づくデマ、そういったものに踊らされて(当時)22歳の若い男性が、自らの人生を棒に振ってしまうような犯罪を犯してしまう。こういった問題をどうなくしていくことができるのか、そのことを改めて感じた

憎悪や偏見、差別による犯罪をどう処罰すべきなのか。今回の判決は日本社会に大きな課題を投げかけている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月30日放送)