「伊予の小京都」としても知られる愛媛県大洲市。新しく移住してきた人たちから広がる、ふるさとの新しい魅力と笑顔を取材した。

「合わせうかい」の屋形船を操る新人船頭

名護谷希慧アナウンサー:
穏やかな肱川を舞台にした夏の大洲といえば、やっぱり“うかい”ですよね。船がずらりと並んでいて、今年の夏は通常通り開催されています。その船を操る方にご案内をいただこうと思います

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案内してくれるのは、2021年9月に大洲に移住してきた中村光一さん(30)。

名護谷希慧アナウンサー:
船を動かすのは重たいですよね、きっと

中村光一さん:
そうですね、最初は

中村さんは大洲のうかいで、お客さんが乗る船の船頭として6月にデビューしたばかり。

名護谷希慧アナウンサー:
どうして船頭さんをやりたいなと思ったんですか

中村光一さん:
大洲といえば、三大うかい。もし関われる機会があったらということで

2021年9月に大洲に移住してきた中村光一さん(30)
2021年9月に大洲に移住してきた中村光一さん(30)

名護谷希慧アナウンサー:
デビューしてみていかがですか

中村光一さん:
かなり難しさは…。毎日怒られながらやっております。「合わせうかい」なので難しくて。スピードと精度が結構いるので

「合わせうかい」とは、鵜舟とお客さんが乗る屋形船が並走するうかいで、全国でも何と大洲だけ。

鵜との距離の近さが魅力だが、その分、船を操る技術が必要になってくる。

名護谷希慧アナウンサー:
やっていてどうですか

中村光一さん:
毎日発見、勉強なので、大洲に来たからこそできるものかなと

中村光一さん:
新しいことにチャレンジしてみたいなってことで、地域おこし協力隊が面白いかなと

名護谷希慧アナウンサー:
実際にどうですか。いろいろできてますか

中村光一さん:
就農しに来たんですけど、おかげさまで船頭もやらさせてもらったり、新しく個人事業主で「お花屋さん」をやらさせてもらったり

古い食器や古道具を鉢に 自生植物の作品

前職は庭師という、植物好きな中村さんの「お花屋さん」とは。

中村光一さん:
協力隊の山本有華さんです。僕が1期生で彼女が2期生

地域おこし協力隊の後輩、山本有華さん(36)
地域おこし協力隊の後輩、山本有華さん(36)

後輩の山本有華さん(36)もお手伝いしている中村さんの花屋「THUGIKI(つぎき)」。軽トラックでマルシェなどに出店している。

軽トラックでマルシェなどに出店
軽トラックでマルシェなどに出店

中村光一さん:
白いノゲイトウとか、奥のちっちゃな花。紫色のあれはアレチハナガサといって、その辺の河原とかにも生えている植物なんですけど

名護谷希慧アナウンサー:
これは生えてる?

中村光一さん:
その辺に…その辺にって言ったらあれですけど(笑)

名護谷希慧アナウンサー:
気になったのがこれ、急須ですよね

使われなくなった古い食器や古道具などを鉢にして、大洲に自生する植物たちを作品に。中村さん、実は「盆栽師」の資格も持っている。

山本有華さん:
こうやって採ってきて飾るだけで、こんなに見応えのあるものになる。驚かされっぱなしです

中村光一さん:
これは風鈴じゃなくて、クマよけの鈴なんです

生活のそばにあるものを上手に生かす。まさにセンス。

中村光一さん:
せっかくすてきなものなので、それが今の時代に合わないから使われなくなってしまうのはもったいないなと思っていて。よそから来たからこそ見えるところかなと。大洲の人だとこの植物なんて当たり前のものだと思うんで、こんなものをよくやったねって言われたりする

複数の植物をつなげる「接ぎ木」にちなんで、草花を通じて大洲と人がつながるように、地元の植物や古い器が未来に継がれていくように…。店の名前の「THUGIKI」には、そんな思いが込められている。

築80年の古民家カフェ 西日本豪雨を乗り越え

続いて訪れたのは、歴史感じるたたずまいの建物。

名護谷希慧アナウンサー:
すごくすてきな建物ですね

Chez利太郎・宮本幹江さん:
ここは元々、お醤油屋さんの店舗兼、醤油を作ってた人の住宅だったんですよ。上を見ていただくとわかるんですけが非常に凝った作りというか。「ベンガラ」という塗料を塗ってありまして、普通の家というよりお店なので、見せる建物ですよね。「どう?見てください」っていう

築80年の元醤油販売店を改装したカフェ「Chez利太郎」
築80年の元醤油販売店を改装したカフェ「Chez利太郎」

築80年、醤油を販売していた店を改装したカフェ「Chez利太郎」。かつての店主、大石利太郎が店名の由来だ。

Chez利太郎 宮本幹江さん:
この建物がいいなって思ったのは、ガラス戸になってるでしょ。人が来てもらいやすいウエルカムな建物だなと思ったので。地域活性化のために

東京で30年、小説の編集をしていた宮本さんは、ふるさとを盛り上げたいと12年前にUターン。建物の改装を始めようとした矢先、あの夏を迎えた。

Chez利太郎 宮本幹江さん:
上の方、天井から60cmくらい下のところに白い薄い線があると思うんですが、そこまで水が…

西日本豪雨で2m70cmも浸水。それでも地元の大工さんたちの力を借りながら、2020年に歴史風情を生かした店へと生まれ変わった。

週替わりランチは絶品 人と人をつなぐ場所

店のおすすめは週替わりのランチ。塩こうじに漬け込んだ豚肉をカリッと焼きあげたら…。

Chez利太郎 宮本幹江さん:
これ、ナスのジャムなんですよ

旬のナスを砂糖と白ワインで煮た、お手製の甘いジャムをたっぷりと。地元食材にこだわった彩り豊かなランチだ。

塩こうじに漬け込んだ豚肉をカリッと焼き、ナスのジャムをたっぷりと
塩こうじに漬け込んだ豚肉をカリッと焼き、ナスのジャムをたっぷりと

名護谷希慧アナウンサー:
お肉がしっとり柔らかくて、厚みがあるので食べ応えもありますね。なすびのジャムは甘さが引き立っていて、ちょっと塩気のある豚肉と合います。驚きです。おもしろい

Chez利太郎 宮本幹江さん:
このお店がオープンしてから毎日欠かされたことないんです。皆勤賞で来ていただいて、お店の応援団というか

お客さん:
それを目標に通っている。自分も元気でお友達ができて、めちゃ楽しいんです

名護谷希慧アナウンサー:
このお店に来るのを楽しみに?

お客さん:
もちろん!週に3日しかオープンしないから、私は何日間かは食べずにじーっと待ってるんです

名護谷希慧アナウンサー:
食事をするだけの場所じゃないですよね

Chez利太郎 宮本幹江さん:
コミュニティカフェ。場所があれば人が集まる、人が集まれば何か生まれると思っているので、人をつなぐことで何かが生まれるようにしていきたいと思っています

(テレビ愛媛)

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