天皇ご一家は、今年も夏のご静養を控えられることになりました。
新型コロナウイルスの感染者数の高止まりが続く中、同行する職員に感染者が出た場合、現地の医療現場に負担がかかることなどを憂慮し、判断されたということです。
ご一家が、夏の御用邸滞在を控えられるのは、これで3年連続となります。
夏のご静養は地元の人々との交流や、自然や動物と触れあうなど、経験の幅を広げられる機会でもありました。
陛下の登山好きのきっかけとなった 夏のご静養
天皇陛下は、子どもの頃、夏のご静養で、ご家族と共に自然の中で過ごし成長されました。
昭和40年(1965年)8月、上皇さまは5歳の陛下を連れ、長野県の小浅間山に登られました。この経験をきっかけに山の魅力を知られた陛下。登山歴は半世紀以上となりました。

そしてご結婚後も、皇后さまとお二人で、度々、山に登られました。
愛子さまが誕生されて最初の夏。陛下は、生後8カ月の愛子さまを、自らベビーキャリーで背負われ、那須連山の西の端にある沼ッ原湿原へハイキングに。
自然と触れあい、親子3人での初めての山歩きを楽しまれました。

平成21年(2009年)、7歳の愛子さまはご両親と初めての登山へ。
上皇さまから陛下に、そして娘の愛子さまへと、登山の楽しみは受け継がれています。

自然や動物と触れあわれた愛子さま
静岡県下田市の須崎御用邸に初めて滞在された愛子さま。
この年は上皇ご夫妻や秋篠宮ご一家も一緒に、御用邸の海岸で磯遊びを楽しまれました。

その後も御料牧場で牛をご覧になったり、那須町にある牧場で、「那須駒」と呼ばれる農耕馬とふれあったりするなど、様々な経験をされました。

愛子さまの教育方針について、陛下は平成17年(2003年)にこのように述べられています。
〈天皇陛下 45歳の誕生日会見〉
「愛子にはいろいろな経験をさせたいと思います。私自身、幼少のころから両親である今の両陛下にいろいろな場所に連れて行っていただき、そのなさりようを見ていたことが、今日でもとても良かったと思っております」
平成21年(2009年)からは、この年の春に引き取った保護犬の由莉を、静養先に毎年のように連れていき、一緒に過ごされました。

サマースクールに参加されるためイギリスへ
平成30年(2018年)、高校2年生の愛子さまは、学校のプログラムでイギリスを訪れ、サマースクールに参加されています。
イギリスの名門校イートンカレッジで、英語の授業を受けたほか、体験学習として、ご両親共に留学経験のあるオックスフォードも訪問するなど、思い出深い3週間を過ごされました。

令和4年(2022年)の「歌会始め」には、初めて、愛子さまが和歌を寄せられました。
「窓」というお題に、イギリスでの思い出を詠まれました。
〈愛子さまが詠まれた和歌〉
英国の学び舎に立つ時迎へ開かれそむる世界への窓
須崎御用邸での貝殻拾い ご両親との大切な思い出
平成30年(2018年)8月、イギリスでのサマースクールから帰国された愛子さまは、ご両親とともに須崎へ。
伊豆急下田駅で多くの人々から歓迎を受けられたご一家。サマースクールについて尋ねられた愛子さまは、「楽しかったです」と笑顔で応えていらっしゃいました。
ご一家はこの日の午後、須崎御用邸の三井浜で貝殻を拾いながら、ゆっくりと散策されました。

記者:
皇太子さま、気分はいかがですか?
陛下:
気持ちいいです。
記者:
手元には何をお持ちなのでしょうか?
陛下:
貝殻です。なに貝かな?
皇后さま:
ムラサキガイかな。
愛子さま:
たぶん。
毎年のように、海水浴や磯遊びなどをされている須崎の海岸。ご両親との貝殻拾いは、愛子さまにとって大切な思い出となっています。
愛子さまが12歳のとき、宮内庁の職員組合文化祭美術展に出品された置き時計には、須崎御用邸の海岸で拾った貝殻があしらわれていました。

須崎御用邸で3人サーフボードに座り「見事落下した思い出も」
令和4年(2022年)3月、愛子さまは記者会見で、ご両親との思い出を聞かれ、静養先でのエピソードを明かされています。
「静岡県の下田市にある須崎御用邸に行き、海で泳いでいる時に、きれいなお魚の群れを発見して皆で観賞しましたり、また、須崎はほとんど波のない穏やかな海でございますけれども、サーフボードを浮かべて、そこに3人で座る挑戦をして、見事全員で落下した思い出など、お話しし始めると日が暮れてしまうかもしれません」

両陛下、そして愛子さまが家族の思い出を紡いでこられた夏のご静養。
天皇ご一家は、ご静養を控えられましたが、健康維持のためにも、御用邸にゆっくりと滞在し、地元の人々と再び笑顔で交流される日が待たれます。
(皇室ご一家」8月28日放送)