24日、新型コロナウイルス感染者数の「全数把握」について見直す方針を打ち出した岸田首相。日本に先立ち、「全数把握」をやめているアメリカなどはどんな変化が起きているのでしょうか?
めざまし8は、NY・マウントサイナイ大学病院で働く山田悠史医師にお話を伺いました。

全数把握“終了”の米英 どこまで把握しているのか?

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アメリカでは2022年の1月ごろ、事実上すべての数を把握することをやめ、代わりに検査キットの無料配布を開始しました。この検査キットで陽性が出た場合でも申告は不要で、病院等での検査で出た陽性者のみを把握するにとどまっています。

また、イギリスは2022年2月から「全数把握」を撤廃しました。陽性者の追跡も終了させており、こちらも病院等での検査で判明したものの数のみを把握するにとどまっています。

さらに、これらの国は検査も縮小させています。アメリカでは8月11日、疾患対策センター(CDC)が、「無症状かつ非濃厚接触者への検査は推奨しない」と発表。イギリスでは、4月から高齢者や基礎疾患がある人をのぞいた一般市民への検査が有料になっています。

一般市民のコロナへの「恐怖」は薄れているということなのでしょうか?

NY・マウントサイナイ大学病院 山田悠史医師​:
そうですね、感染者数の「数」への意識というのはなくなっていると思いますが、別の形で地域の感染流行のレベルみたいなものは日頃評価されて報告をされて、これにアンテナを張ってらっしゃる方というのはいらっしゃるので、意識というのは人によるのかなと思いますね。

死者数に変化は?

全数把握をやめることで、死者数に変化は現れるのでしょうか?

現在、全数把握を行っている日本では、1週間の合計(8月15日~21日)の新規感染者数は世界最多の147万6374人。死者数は1624人で、こちらも世界で2番目です。一方アメリカでは、新規感染者数は61万2378人で日本と比べると少なく感じますが、死者は2714人と世界最多です。

人口100万人当たりの新規死者数の推移を見てみると、アメリカは、1月に全数把握をやめた後いったんは増加しているものの、現在は減少傾向にあります。同じく2月にやめたイギリスも一時的に上昇する期間はあったものの、全体としては減少傾向です。一方、日本は現在、死者数は増加傾向にあります。

全数把握をやめることで、死者を減らすことができるとみて良いのでしょうか?

山田医師:
時系列の前後関係を見ると、因果関係があるかのように見えてしまうかもしれませんが、それらは全く「イコール」ではないという捉え方が大切で、全数把握をやめたから死亡者が減った、という因果関係は言及できないと思います。

日本での死者数増加の不安について、山田医師はこう話します。

山田医師:
現状では増えてきていますけども、これはもう感染流行を押さえることでしか、この数というのは減らしていけないので、そこに注力する必要があります。

コロナの死亡リスク減少に関してCDCは、パンデミック初期に比べて重症化や入院など死亡リスクは大幅に減少したと指摘します。その背景には、ワクチン接種や治療薬が普及したことをあげ、これをもってして、8月11日、新たなガイドラインとして「ソーシャルディスタンス不要」という発表がなされました。

山田医師:
病気のリスク自体がワクチンの普及や治療薬の普及によって下がっている、という捉え方をした上での決定なのだろうなと思います。

「全数把握」をやめたことで、病院のひっ迫度はどうなっているのでしょうか?

山田医師:
特に検査をする場所や医療機関の負担、こういうところはかなり減ったと思います。これは全数把握というよりは、自宅で行う検査が国民全体に広がって、自分で検査をして陽性かどうかを判断するパターンが増えたので、そういったところで医療機関の負担は減ったかなと思います。

日本の「死者数過去最多」減らす方策は?

過去最多の死者数を出している日本は、これからどうしていけば良いのでしょうか?山田医師は「ワクチンの追加接種の推進」そして、「十分に使われていない治療薬の活用」が大切だと話します。

山田医師:
日本国内では重症化リスクのある方に、重症化リスクを下げる治療薬というものがあるんですけども、これを処方するプロセスが複雑で、そのせいで十分に活用されていないという問題を現場から聞いています。
これをNYでは広く処方していて、大きく活躍してくれているので、もっともっと日本国内で活用ができるようプロセスを簡略化するなど、そういった対応というのは今後必要になると思います。

これから日本がアメリカに「学ぶべき点」とは?

山田医師:
今回の感染流行で、重症化リスクがある方たちに十分治療薬を使えていなかった、それはあると思うので、ここはアメリカから学べることと言いますか、日本でも積極的にもっと治療薬を使える体制を作って頂きたいなと思います。
医療ひっ迫という観点では、例えば遠隔診療が広がらなかったなど、業務の効率化が十分にできていなかったという点があると思いますので、こういった所も、これからしっかり見直して、次の感染流行に備えていかなくてはいけないかなと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」 8月25日放送)