記録的な大雨に襲われた、新潟県関川村で語り継がれてきた“大蛇伝説”。その物語をアニメーション化した男性が被害の大きかった集落を訪れ、ボランティア活動に参加した。

被災した村で語り継がれてきた 洪水にまつわる伝説

被害を受けた新潟県関川村
被害を受けた新潟県関川村
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8月3日からの記録的な大雨により、土砂崩れや住宅の浸水が相次いだ関川村。
国指定重要文化財・渡邉邸にも、泥水が流れ込んだ。

国指定重要文化財・渡邉邸
国指定重要文化財・渡邉邸

渡邉邸・井浦慎一郎 事務局長:
渡邉邸は床下浸水だけで済んだが、山沿いの集落では大きな被害を受けたのが残念

この渡邉邸を、洪水が襲う様子を描いたアニメーション作品がある。

アニメ「大里峠大蛇伝説」
アニメ「大里峠大蛇伝説」

集落に洪水をもたらす大蛇を退治するという、関川村で語り継がれてきた伝説をもとにした「大里峠大蛇伝説」だ。

昔話を題材にアニメ化・Youtubeで配信されたこの作品。大島祐輝さん(35)が、新潟市で会社員をしながら制作した。2022年3月に完成したばかりだ。

アニメを制作した大島祐輝さん
アニメを制作した大島祐輝さん

アニメの完成当初、大島さんは「アニメを見た人が水害について考え、それが何かに役立つかもしれない」と話していた。

2m近く浸水 お盆を前に仏壇も…復旧作業に追われる被災地

家族の絆と、村人が協力しながら困難を乗り越える様子を描いたアニメの完成から5カ月後。
実際に、関川村高田地区は多くの家が浸水してしまった。

記録的大雨に見舞われ、復旧作業が続く被災地に、大島さんの姿があった。

大島さんが心配していたのは、高田地区に暮らす須貝信夫さん。

アニメには関川村の人たちが声優として参加していて、須貝さんは、庄屋の主を担当していたのだ。

須貝信夫さん:
アニメの水害がそのまま起きたみたい

大島祐輝さん:
アニメは昔のことを描いたのに。そうならなければよかったけれど

須貝さん夫婦と娘夫婦、そして孫2人の6人で暮らす須貝さんの住宅には、大人の頭が浸かるくらいまで泥水が押し寄せたと言う。

須貝さんの次女・睦さんの職場の同僚などが、泥だらけになった家具を洗ったり廃棄したりする中、大島さんも作業を手伝う。

大島祐輝さん:
アニメで関わったことによって、自分のことのようにつらい。なんとか助けになりたい

2m近い浸水によって、孫のこいのぼりも泥だらけになっていた。

須貝信夫さんの次女・睦さん:
こいのぼりは子どもたちの身代わりに流されたと思う。みんな無事だったから

トラック数台分もの大切な思い出を廃棄することになった。

須貝信夫さん:
やっぱり悲しい。思い出もいっぱいあるから

大島さんは、少しでも残せるものがあればと、泥だらけになって家具を洗っていた。

大島祐輝さん:
いっぱい人がいないと終わらない。いっぱい助けがいる

家の中を整理していた須貝さんの長女・歩さんが、高田地区が泥水に覆われた直後の映像を見せてくれた。

泥水に覆われる関川村高田地区
泥水に覆われる関川村高田地区

須貝信夫さんの長女・歩さん:
本当に切ない。子どものものや思い出のもの、学校のものも、おもちゃも全部ダメになった

お盆を前にして、仏壇も泥水に浸かってしまった。それでも…

須貝信夫さんの長女・歩さん:
みんなが復旧作業を手伝ってくれるのがありがたい。それが原動力になって頑張らなきゃと思う

作品作りに生かす被災地での経験 思い出失っても「前を向くしかない」

記録的大雨から10日ほど経ち、被災地で迎えるお盆。
8月14日、須貝さんの自宅は…

須貝信夫さん:
だいぶ片付いた。手伝いに来ていただいているので、ありがたい

片付けが進む須貝さんの自宅
片付けが進む須貝さんの自宅

床下を乾燥させるため、畳や床板がはがされた1階部分からは、仏壇がなくなっていた。

須貝信夫さん:
仏具店が仏壇の洗濯と修理をしてくれる。ご先祖様には申し訳ないけど、お墓で待っていただく

同じ日、大蛇伝説のアニメを制作した大島さんは、新潟市にある自宅で新しい作品に向き合っていた。

被災地での経験を作品に生かす
被災地での経験を作品に生かす

大島祐輝さん:
被災地で色々な人が力を合わせているのを見て、胸が熱くなった。そういうものを作品作りに生かせたら

自宅が床上浸水した須貝さん。大切な思い出を失いながらも…

孫と歩く須貝さん
孫と歩く須貝さん

須貝信夫さん:
孫と歩けるのは幸せ。起きてしまったことは仕方ないので、あとは前を向いていくしかない

日常を取り戻す、確かな歩みが前へと続く。

(NST新潟総合テレビ)