「美容室」の1回あたりの利用金額が、男女ともに最高額を更新している。理由の1つには髪を染める「カラー」の人気があるという。
株式会社リクルートの美容に関する調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」が2022年2月10日~2月18日、全国の人口20万人以上の都市居住者のうち、15歳~69歳の男女1万3200人を対象に、過去1年間における美容室・理容室の利用に関する実態調査を実施。その結果を「美容センサス2022年上期≪美容室・理容室編≫」として、6月23日に公表した。
これによると、「美容室の1回あたりの利用金額」は女性が7345円(前年比415円増)、男性が4553円(同189 円増)で、男女ともに、ここ10年の(調査が行われている2012年以来の)最高額を更新した。
コロナ禍前の2018年には、女性の「美容室の1回あたりの利用金額」は6475円だったことから、約1割増えている(870円増)。
この理由の1つが、「カラー」利用の増加だ。
女性の「カラー」利用率は53.7%(前年比0.5ポイント増)と、引き続き増加。男性も「カラー」の利用率が前年から1.2ポイント増加し、19.0%となった。
調査の中で、株式会社リクルート「ホットペッパービューティーアカデミー」の研究員、田中公子さんは以下のように分析している。
女性の「カラー利用率」も過去10年で最も高く、今回初めて調査した「カラーの施術内容」では、若年層ほど、ハイトーンカラーの利用率が高いことも明らかに。
特に15~19歳ではカラー利用者のうち「ブリーチ」が4割超、「インナーカラー」が約3割と、より日常的な身近な施術となっているようです。
田中公子さんによると、「ハイトーンカラー」とは、明るい髪色全般を指す。
また、「ブリーチ」とは、一般的に、髪の毛の色素を抜くことを指し、色素を抜くことで髪の毛が明るくなり、ヘアカラーだけでは出しにくい色を楽しめる。ブリーチをしてからヘアカラーを入れる「ダブルカラー」をする人も多いという。
「インナーカラー」は、外側の髪色は変えず、内側の一部の髪色だけを変えるカラーを指す。
男女ともに「カラー」の利用が増加しているわけだが、男女それぞれ、どのような理由があるのだろうか? コロナ禍でリモートワークが普及したことも影響しているのだろうか?
株式会社リクルート「ホットペッパービューティーアカデミー」の研究員、田中公子さんに“カラー人気の背景”を聞いた。
リモートワークで「挑戦しやすくなった」
――美容室1回あたりの利用金額が男女とも、過去10年の最高額を更新。この理由としては、どのようなことが考えられる?
女性は、カラー利用率の上昇(裾野の広がり)と、高付加価値カラー(ハイトーンカラー)利用者の増加による、カラーの金額が増えたことによる影響、および、店舗販売商品の購入金額の増加が影響しています。
「店舗販売の商品購入金額」というのは、サロンのお店で売っているシャンプーやトリートメントなどの商材を指しています。
男性は、男性の美容意識の上昇が背景にあります。メンズ専門のヘアサロン「メンズサロン」が台頭し、パーマなどを利用する男性が増えています。
――女性は「カラー」の利用が引き続き増加。こちらの理由としては、どのようなことが考えられる?
若年層のハイトーンカラーの流行と、オトナ女性(30代~40代)の「カラー」の利用拡大です。オトナ女性は「アムラー世代」で、学生の頃からサロンでカラーすることが定着している世代なのです。
――若年層ほど「ハイトーンカラー」の利用率が高い。理由として考えられることは?
ハイトーンカラーは、オシャレ染め(ファッションカラー)の延長として楽しむ方が多いため、オシャレ染めの利用の多い若年層が、より利用者が多いです。
また、昨今の韓流ブームなどの影響も受けていたり、ハイトーンカラーはSNSで流行が広がったため、若年層を中心に利用されています。
自分の顔を見せるのではなく、バックスタイルで髪色を見せる写真の投稿が流行し、「レインボーカラー」など鮮やかなカラーも注目されるようになってきました。
――コロナ禍のリモートワークの影響もある?
コロナ禍で外出機会の減少やリモートワークが進むことで、周囲に気づかれにくいインナーカラーなどにも「挑戦しやすくなった」と聞きます。
――女性の「カラー」利用の増加傾向は、今後しばらく続きそう?
増加傾向は、今後も続くと考えています。今後は、ハイトーンカラーの世代の広がりにも注目しています。
40~50代女性の白髪対策にハイトーンカラーを使った「白髪ぼかし」は、黒く染める、隠すではなく、白髪を生かしながら、オシャレを楽しむ施術です。美容感度の高い、オトナ女性を中心に広がってきています。
背景は「男性の美容意識の高まり」
――男性は「カラー」の利用が前年から1.2ポイント増加。こちらはどのような理由が考えられる?
特に、若年層を中心とした男性の美容意識の高まりが背景にあります。メンズサロンなど、男性専用のオシャレな美容室が出現したことやSNSの広がりなどによって、男性のカラーへの意識が高まり、オシャレの一つとして取り入れる若者が増えています。
――男性の「カラー」、人気の傾向のようなものはある?
男性もオシャレ染めの利用率は若年層ほど高く、ブリーチの利用も若年層のほうが高いです。
――美容室1回あたりの利用金額。男性も今後しばらくは増加傾向が続きそう?
特に若年層では、美容意識の高まりとともに、カラーやパーマ、眉カットといった、付加価値メニューの利用者が増えてくるのではないでしょうか。
ヘア以外にも「身だしなみ」として、メイクや脱毛をする、若年層の男性も増えています。韓流アイドルブームの影響で、女性同様にハイトーンカラーも広がっていくのかもしれません。
女性は「カラー」の人気、男性は「美容意識の上昇」などを背景に過去最高を更新した、「美容室」の1回あたりの利用金額。背景にはコロナ禍で人に会う機会が減ったことで、ハイトーンカラーやインナーカラーなどに挑戦しやすくなったということもあるようだ。