新型コロナの感染者数が高止まりを続け、死者も増える中、いま何が起きているのか、沖縄県専門家会議の前座長で琉球大学名誉教授の藤田次郎氏に聞いた。

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救命できる可能性のある命を救えない…「コロナ以外」の救急診療がひっ迫

コロナ第7波の中、沖縄県は8月20日時点での病床使用率が82.5%、重症病床使用率32.3%で、かなり医療体制が逼迫しているように見える。実情はどうなのか。

琉球大学藤田次郎名誉教授:
コロナ診療に対しては、県全体が一つの病院として機能しています。ただ、やはり感染者数が多いですね。さらに医療従事者の感染が多いために、コロナ診療以外の救急診療が逼迫しております。さらには救急搬送できず、本来救命できる可能性のある高齢者が施設で亡くなっている。コロナ以外の患者さんが非常に入院しにくいという状況もあります。

お盆明けにはピークアウトとの予測もあったが、高止まりが続く。今後の感染者数はどうなっていくのか?

琉球大学藤田次郎名誉教授:
これだけ患者数が多いと集団免疫ができて、本来はピークアウトするべきなんですね。ただ、この新変異株の出現っていうのは予測できないですよね。新たな変異株が出ることで、日本全体でピークアウトせずに第8波が起きる可能性もある。ですから感染予想が本当に困難な病気だなというふうに感じています。

第6波を超える死者数の増加も?それでも第7波は「身近な感染症」なのか

第7波の死者数は、第6波を超えるという専門家の指摘もある中、いまでも第7波はインフル並みの「身近な感染症」と考えてよいのだろうか。

琉球大学藤田次郎名誉教授:
沖縄県の人口を考えますと、3.3人に一人が感染しているんですね。ですから、ますます身近な感染症になっているんじゃないかなというふうに感じています。

沖縄の死者に関するデータでも、オミクロン株で注意すべきは「高齢者」ということがはっきりとわかる。一方で、第7波の主流である「BA.5」について藤田教授はこう語る。

琉球大学藤田次郎名誉教授:
「BA.5」は非常に感染力が強いですね。さらに、一部の症例なんですけど、デルタ株に近いような重症例があるんですよね。そういった意味で非常に手強い感染症かなと感じております。

コロナ対策の切り札は、広く使える「国産の新薬」

コロナが流行してから2年以上たつが、藤田教授は、いまだに国産の薬・ワクチンが流通していないことについて“異常事態”だと厳しく指摘する。

琉球大学藤田次郎名誉教授:
10年ぐらい前から抗微生物薬の適正使用ということで、抗微生物薬の使用が制限されたんですね。そうすると日本の大手製薬メーカーは抗微生物薬の開発からほとんど撤退したんですよね。いま、日本で開発された薬剤ですら海外の供給に頼っているような、異常事態が起こっているんです。その中で「made in Japan」の抗ウイルス薬が出てきているので、ぜひ臨床現場で使いたいというのは私の実感です。

国産の抗ウイルス薬である「ゾコーバ」については…

琉球大学藤田次郎名誉教授:
オミクロン株に対する有効性は証明されておりますし、さらにはウイルス量を減らすということも実証されているんですね。そして若い方、平均年齢35歳の方で臨床試験が行われていますので、臨床現場で導入されると、広く使用可能になると思います。

国産の飲み薬が導入されれば、医療逼迫は一気に解決へ?

琉球大学藤田次郎名誉教授:
感染症の診療の原則は早期診断と早期治療なんですね。私たちには今、広く使える薬がないわけです。ですから新薬が出て初めて、いろんな問題点が解決するのではないかなというふうに思っています。

(「Mr.サンデー」8月21日放送分より)