海難事故から新潟県民の命を守るため、日々過酷な訓練に取り組む、第九管区海上保安本部の新人機動救難士の一日に密着した。
潜水士から“機動救難士”に…より高度な知識・技術習得へ
7月28日、厳しい檄が飛んでいた新潟市西蒲区・角田浜。

先輩からの指導を受けていたのは、新人機動救難士の上松航大隊員(28)。上松さんは「巡視船やひこ」の潜水士として活動していたが、その潜水技術が評価され、2022年4月に機動救難士に任命された。

(Q.潜水士との違いは?)
新人機動救難士 上松航大さん:
ヘリコプターからロープ1本で降りるという点が潜水士と大きく違うし、それだけ危険のある仕事をやっている

海難事故などが発生した際、ヘリコプターで出動し、救助活動を行う機動救難士。海上での行方不明者の捜索などを主な活動とする潜水士とは異なり、海難事故の初動対応に当たることが多く、より高度な知識と技術を必要とする。

第九管区海上保安本部 橋本翔志 上席機動救難士:
第九管区には新潟航空基地に機動救難士が9人在籍していて、管轄は新潟県・富山県・石川県、あとは内陸だが長野県を含む4県が管轄となる
10kgの重りを水面につけないよう立ち泳ぎ
この日行われていたのは、最も過酷な訓練の一つ、立ち泳ぎ訓練。人に見立てた10kgの重りを濡らさないように、5分間体勢を維持しなければならない。
まずは上松さんの先輩、井上涼介隊員(26)が挑戦。息を切らすことなく、安定した立ち泳ぎを見せる。

上松さんの先輩 井上涼介さん:
上松隊員に、なるべく苦しい顔を見せないよう心がけた

続いて上松さんが挑戦するが、重りを濡らさないことに気を取られ、体勢を維持することができない。それでも…

第九管区海上保安本部 橋本翔志 上席機動救難士:
5・4・3・2・1、終了!ナイス!
新人機動救難士 上松航大さん:
重りが水面に着いたり、まだまだ

過酷な訓練に食らいついて…忍耐力の秘密は
2021年、第九管区の機動救難士の出動件数は55件。

機動救難士は2人1組での活動が基本となり、背負う責任の重さに新人もベテランもない。そのため、訓練は「過酷」のひと言だ。
それでも訓練に食らいついていく上松さん。その忍耐力の秘密はある趣味にあった。
新人機動救難士 上松航大さん:
趣味が筋トレ


その恩恵はこんなところにも…
(Q.弁当は手作り?)
新人機動救難士 上松航大さん:
嫁さんが作ってくれた

第九管区海上保安本部 橋本翔志 上席機動救難士:
新婚なんですよ
新人機動救難士 上松航大さん:
結婚したのは2022年3月。ジムで筋トレしているときに、妻が重りを外さないでどこかへ行った。使いたかったので、「使っていいですか?」と話しかけたのがきっかけ。筋肉は裏切らないですね

重大な事故につながるおそれも… 訓練中のミスに隊長から厳しい言葉
午後に入り、崖下約5mに取り残されている要救助者の吊り上げ救助訓練が行われた。タイムリミットは30分。

新人機動救難士 上松航大さん:
海上保安庁です。分かりますか?お名前言えますか?今から隊員が降りるので、上がれるようなら安全なところに上がってください
上松さんは救助を担当。しかし、ロープの締め付けが甘く、滑り落ちる様に降下してしまった。

その後は大きなミスもなく訓練を進め、制限時間内の26分20秒で終了したが、橋本翔志隊長からは厳しい言葉が。
第九管区海上保安本部 橋本翔志 上席機動救難士:
あれ、磯場だったらどうなるの?訓練じゃなく実働になっているよね。午前中の訓練でもあったけど、やることは声を出して情報共有しろと。それもできていない。一個一個の訓練を別々に考えるのではなく、前回の訓練をこっちの訓練でも生かしていかないと、どれだけ時間があっても足りなくなる

一つの判断ミスが、重大な事故につながりかねない現場。そのため、訓練中は厳しく指導にあたる橋本隊長だが、それほど上松さんへの期待も大きいと話す。
第九管区海上保安本部 橋本翔志 上席機動救難士:
非常にストイック。自分で課題を見つけて何でも取り組むし、分からないことは先輩に聞く。しっかり一つ一つのことを自分のものにしようという姿勢は見受けられるので、そこは私たちも見習わなければならない


上松さんが一人前の機動救難士の証・オレンジ色の服に身を包み、現場任務に就くまで残り約2カ月。
新人機動救難士 上松航大さん:
知識面での不足を補いつつ、技術を高めていかなければ先輩方と同じレベルで活動できない。私自身、新潟県出身なので「新潟県の海は任せてくれ」と言えるような機動救難士になりたい

(NST新潟総合テレビ)