8月11日、2度目の会見を行った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)。
約1時間10分に及んだ会見で田中会長は、何度か司会者に制止されたにもかかわらず、主張を続ける場面も見られました。

旧統一教会の問題に長年取り組んでいる、全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士は、会見をどう見たのか?めざまし8はお話を伺いました。

会見の内訳は?紀藤弁護士「一方的な会見」

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世界平和統一家庭連合の田中会長による会見、通訳も含めて合計で約1時間10分でした。スピーチが冒頭45分、質疑応答25分。
めざまし8が「どこに」時間を使ったか、内訳を確認したところ、

・政治家との関係 約9分10秒
・メディア批判 約11分30秒
・団体の名称変更について 約12分30秒
・高額献金、霊感商法について 約9分10秒
(※残りはその他の話題)

というものでした。
紀藤弁護士は、会見を見た率直な感想をこう述べました。

紀藤正樹弁護士:
率直に言うと、被害に向き合っていないと思いましたね。
時間(の使い方)を見ても、被害者に対する謝罪ないしは、被害者に対する思いみたいなものは感じられなかったし。
今回の会見の目的を、自分たちの信徒とか、教会が被害を受けていると冒頭に言っていましたけども、具体的な内容も明らかにされていませんので、人が見えないというか、具体的な被害者、自分たちの信徒、人が見えない会見。
つまり、一方的な自分たちの団体の言い分だけを伝える会見という印象を、強く受けました。

「団体の言い分を伝える会見」と読み解く紀藤弁護士。

教会と政治との関わりは?新たに7人の閣僚が関係認める

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会見と日を同じくして、発足された第二次岸田改造内閣。
閣僚19人のうち、留任はわずか5人。初入閣は9人という顔ぶれです。
この中で、11日新たに7人の大臣が旧統一教会との関係を明らかにしました。

7人の教会と関係があった大臣を外して、新たに改造内閣をつくったその日のうちに判明した、新たな教会との関係。
岸田首相は「関係を絶つことを了承した人のみを登用した」としていました。

政治家と旧統一教会との関わりを、紀藤弁護士はどう見ているのでしょうか?

紀藤正樹弁護士:
想像以上に、今回の入閣組も含めて旧統一教会の浸透度が深いのだなと言う風に、改めて思わされたんですけども。
それにしても、しっかり点検して説明をうるということが尽くされていればいいんですけども、昨日の(閣僚の)会見を拝見しているとそれぞれの大臣の“トーン”が違う感じがするんですよね。
しっかりと説明している人と、そうではない人がいて、やはりしっかりきちっと説明してくれないと、我々から見たら判断材料になりませんし。
むしろ岸田さんが言っている通り、丁寧に説明していただく時間をとっていただきたいなと思います。

丁寧な説明のための時間が必要だと言う紀藤弁護士。

紀藤正樹弁護士:
自民党はまだ旧統一教会に対する調査を、党としてやっていないんですよね。
だから我々、全国霊感商法対策弁護士連絡会のメンバーをよんでいただいて、旧統一教会がどんな組織かということも、しっかり自民党の中で検討会を開いてほしいと思います。

さらに、政治家との関係について“危うい”ポイントを指摘します。

紀藤正樹弁護士:
新人議員だったら(選挙活動のボランティア等に対する)見返りを求めないということは言えるんですけども、次第に「この議員はつかえる」ということになれば、やはり広告塔として使えるとして、「世界日報」の取材から入り、そして「世界日報」で対談し、そして関連団体のイベントに来てもらい、だんだん広告塔として使われて、信者の士気だったり、あるいは旧統一教会は“ちゃんとした団体なんだ”というところで、“利用”されていくという関係があるんですね。

それから、当然対談なんかを繰り返してやっていると、人間的にも付き合いができるわけですよ。ですから、安倍元首相がイベントでビデオメッセージを送ったときも、これまで旧統一教会側が築いた人間関係とか、貢献が評価されたという形で。
人間関係を築かれてしまうとなかなか断りにくいという面もあると思うんですね。
ですから、これはやはり“持ちつ持たれつ”の関係があるわけで。

「人間関係」の構築から「断れない関係」ができてしまうことへの、危険を語る紀藤弁護士。

これからの政治 紀藤弁護士「基準作り」の議論必要

紀藤正樹弁護士:
政治家は“反社チェック”はするわけです。
それから、外国人献金という問題があるので、外国人の献金をどう処理するか、外国法人からの献金をどう処理するかと言うことについては、これは日本の政治が影響を受ける可能性がありますから、政治資金規正法で規制されていますから、その辺のチェックもやっているわけですよ。

だから結局“基準作り”なんですよ。
つまり、宗教団体だからとか言うことではなくて、「反社会的宗教団体」あるいは「外国発の宗教団体」とどう関係していくのかと言うことは、これは日本の政治のあり方、
形を考える上でとても重大な課題なんですね。今回突きつけられたと思うんです。
ですから、まさに基準作りを、これは自民党だけでもできない、野党だけでもできない話なんですね、だから超党派で政治とか、政治と人の関係をちゃんと議論していただかないといけないのですけれど、まだ自民党は「点検」の段階なんですよ。

階段で言うと、一歩もまだ踏み出していないんですよ。
点検と調査は「当たり前」の前提なんですね。これからどうやって、仕組みを作るか、基準を作るか、基準を作らないと、個々の議員も決められませんから。
やはり、基準を作る問題を、これから具体的に考えていっていただきたいなと、つくづく思いますけども。

旧統一教会「不正確であり不公正」会見内で“弁護士団体”を批判

会見の中で田中会長は、「弁護士団体は相談のあった当法人にまつわる案件のすべてを、被害と断定して集計発表していますが、その内容は実に不正確であり不公平です」と、ある意味で全国霊感商法対策弁護士連絡会を名指しで批判しました。

これについて紀藤弁護士は…

紀藤正樹弁護士:
我々は一度も“断定”したことはないんです。
これ「被害の相談」と言っているんですよ。被害相談があって、それを集計しているわけであって、その相談集計の中から、当然交渉すべき案件、訴訟するべき案件を切り分けますから、これは被害相談の中に、旧統一教会の被害が紛れ込んでいるという意味で、実相を表しているんです。

被害相談が増えると言うことは、それが全部被害と言っているわけではなくて、相談件数が増えるわけだから、当然その相談件数が増えると言うことは、おそらく旧統一教会の被害が、増えたり減ったりするわけですけども、その内容の実相を表しているということで、しかもメディアの報道があれば、被害相談が増えるんですね。
現実に我々、2021年から比べると圧倒的に増えているわけですね。そうするとこの被害相談というのは、あくまでも「形」、表層部分であって、表層部分を“嘘”と断定するのは、正直言ってやめていただきたいと思います。

こういうところも「被害に向き合っていない」証拠ですよね。
もう少し、被害者がいて、生身の人間が被害を訴えていると言うことの現実感を持っていただきたいなと思います。

旧統一教会の主張との隔たり

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、係属中の裁判件数は1998年に78件、今年は5件と20年あまりで20分の1になっていると主張しています。
これに対し、全国霊感商法対策弁護士連絡会がこれまでに確認した被害は、人数にして3万人以上、被害金額は1237億円以上。
さらに、襲撃事件以降、被害の相談は増えていると言うことです。

紀藤正樹弁護士:
この数字は一方的に旧統一教会が発表しているだけなんですけども、我々が裁判を起こしているのは、確かに今5件なんですよ。
だけど、この5件という数字が少ないというのは意図的な“コントラスト効果”なんですね。
コントラスト効果というのも、マインドコントロールのひとつなんですけども、5件でも多いですよね?1つの宗教法人に5件も裁判が続いているということ事態、異常な話であって、その5件をどう解決していくかを全く話をしないわけですよ。
つまり自分たちはコンプライアンスとか言いながら、じゃあ5件の裁判がどういう内容で、自分たちはどういう解決をしていって、どう旧統一教会の問題を収束していくか、自分たちが起こした結果をどう解決していくかを、全く言わないんですね。
ただ、78件が5件に減りましたと言って、一見コントラストがありますから、少なく減ったように見えますけども、5件自体が多いという感覚が全くないのだなと思わされます。

紀藤弁護士は、旧統一教会の「被害」への向き合い方にも苦言を呈します。

紀藤正樹弁護士:
(会見でも触れていた)信者の人が(今回の襲撃に関する報道を受けて)被害を受けていたということがありますよね?
この内容が本当だったら、普通は警察案件ですよね?
警察案件になっているものを、旧統一教会が具体的に信者を守るために何をしたかと言わないんですよね。

ですから、私は「被害」というものに、誠実に向き合っていないと思うんです。個々の信徒の問題も含めて、自分たちが生み出した、自分たちの活動から生み出されたものが、批判を受けたら、自分たちが被害に遭った、それは法人の被害は言うんだけども、個々の信徒の被害に具体的に向き合わないし、現実の金銭被害のある、霊感商法の被害者にも向き合わないんですね。
だから、私は人が見えない会見だと思うので、非常にそういう意味で不誠実だなという風に思っております。

会見を見て…紀藤弁護士の感じたこととは

紀藤正樹弁護士:
形式的な会見で一方的な言い分を伝えただけで、制止を振り切って40分間続けたと言うことで。
事前に時間は分かっている訳ですので、原稿を作っている以上、30分以内に終わるような原稿を作ればいいのであって、一方的な言い分に終始したという会見だったと思います。

(めざまし8 8月11日放送)