夏休み本番を迎え、観光客で賑わう沖縄県の西表島。世界自然遺産にも登録されたこの島が、いま、野生化したヤギに脅かされています。実態を取材するため、めざまし8は西表島を取材しました。

野生化したヤギが群れに…「食害というか、生態系が狂い始めている」

取材班が遭遇したのは、道路にたたずむ1匹のヤギ。首輪はしていません。ヒトや車を恐れる様子も無く、悠々と道路脇に生えた葉っぱを食べています。

いま、西表島では野生化したヤギが増加し、マングローブなどの植物が食い荒らされて、生態系への影響が懸念されているというのです。

7月25日に撮影された写真には、山の中でヤギが4匹が群れをなしている様子が。さらに周辺で撮影されたのは、ヤギに食い荒らされた植物の姿でした。

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野生化したヤギが増え、植物を食べる「食害」が増えているというのです。その被害は、西表島を代表する植物や動物にも及んでいます。現地のツアーガイドは…

西表島ツアーガイド:
“食害”というか、生態系が狂い始めているのは最近目立っていて。マングローブの葉っぱも好きみたいなんで、あれも食べ始めちゃうと、マングローブも成長が遅いから減っていくんじゃないかというのが懸念されています

被害は植物だけではありません。

環境省・自然保護官事務所:
徐々にヤマネコにとっても住みにくい環境が広がっていってしまう、ということで、『イリオモテヤマネコ』にも影響があるだろうと考えられます

日本最大級のマングローブ林や、国の特別天然記念物に指定されている「イリオモテヤマネコ」など、島固有の動植物などの生態系が崩れることが懸念されているのです。

ナゼ?西表島で野生化したヤギが増えすぎた理由とは

いったいなぜ、西表島で野生化したヤギが増えてしまったのでしょうか?島を歩くと、そこかしこにヤギを飼っている家があります。

雑草を食べてくれる飼われたヤギは重宝されていますが、そのヤギが逃げ出して野生化、自然の中で繁殖してしまったというのです。

野生化したヤギは約100匹いるとされ、環境省は2021年に61匹を捕獲。しかし、まだ山奥などで野生のヤギの群れが目撃されています。

過去には奄美大島でも繁殖…草木を食べ尽くし土砂被害も

野生化したヤギの被害は、別の島でも起きていました。

2007年、鹿児島県の奄美大島では野生化したヤギが草木を食べつくし、土砂が海に流れ込むなどの被害が出たため、島で捕獲作戦が行われました。
こうした事態を受け、奄美市などでは「ヤギの放し飼い防止条例」を制定。ヤギをつないだり、柵で囲ったりして逃げないようにする措置を講じるなどの規則を設けました。

自治体によるとその結果、一時は逃げ出すヤギがほぼいなくなりましたが、捕獲しきれないヤギが繁殖。県によると、2014年度に確認された野生のヤギは477匹でしたが、2021年には642匹に増加しています。

対策の動きがあるものの「すでに時間との闘い」

環境省は西表島の事態も重く見ています。

環境省・自然保護官事務所:
間違いなく野ヤギっていうのは繁殖力が非常に高いので、植物を食べることによって、どんどん土地、地面が裸地化していく。土砂災害とか土壌流出が起きやすい環境になる

環境省によると、西表島では今後、飼育方法をルール化するなど、対策に踏み出す動きもあるものの、すでに時間との闘いとなっているといいます。

環境省・沖縄奄美自然環境事務所:
増える余地はいくらでもある生き物なので、これから怖い。だからこそ今叩かなくてはいけない

(めざまし8 7月28日放送)