温泉旅館が立ち並ぶ観光のまち、静岡県東伊豆町で「同期会」という若者が集うイベントが開かれた。このイベントに集まったのは地元の若者たちではない。町の課題、そして参加した若者たちの悩みの解決に向けた新たな一歩だった。
町外出身者の居場所づくりを
静岡県東伊豆町の温泉旅館に集まった約60人の若者たち。楽しそうに会話をしているが、ほとんどが初対面だ。
参加者：
音楽を聴くことが好きで吹奏楽もやっていたので、演奏することもライブに行くことも大好きです
参加者：
趣味は海沿いをドライブすることです。江の島などに行くのが好きです
イベントの名前は「ひがしいず同期会」。町内の旅館やホテルなどで働く入社3年以内の若手従業員が参加した。
参加者：
30秒ずっとしゃべりました。初めてこんなにたくさん自己紹介して、ちょっと緊張したけど頑張りました
イベントを企画したのは以前、町の地域おこし協力隊として活動し、現在は空き家を改修して旅館業を営んでいる荒武勇希さん。
荒武勇希さん：
旅館に勤める若手社員の早期離職問題が地域の課題としてありました。企業の枠を取り払って同年代の交流を作ることで、職場以外の地域の中に新しい居場所を作るというのがメインの目的です
東伊豆町では、温泉旅館で働きたいと町外から就職するものの、知らない土地での生活に孤独や寂しさを感じ離職する人は少なくない。2017年と2018年の平均値は1年以内の離職率が25.1％、3年以内となると45.8％にまで上昇する。
移住者として同じような思いを感じてきた荒武さんは、若者同士の交流の輪を広げることで、仕事への定着を図ろうと、この「同期会」を企画した。
全国からやって来た若者たち「いい機会」
参加者：
出身は埼玉県八潮市です。今年から新入社員として働いています。仕事柄、同じ世代の人をあまり見ないので、一緒に話すことができていい機会だと思っています
参加者：
出身は県内の沼津市です。仕事をしていると利用客としか関りがなく、近辺で働いている人との交流がなかなかいので、すごくいい機会だなと思っています
参加者：
三島市出身です。会社の人たちだけではなくて、いろんな人がいるなって思ったり、友達できたりするので、こういう交流があるのはすごくありがたいです
稲取温泉の代表的な温泉旅館「稲取銀水荘」。この旅館にも、1年目から3年目までの若い従業員が多く働いている。町外から来た従業員は、少なからず不安や寂しさを抱えていた。
（Q. ホームシックには？）
岐阜県出身 立元咲おりさん：
毎日帰りたいです。不安ですけど先輩や上司がケアをしてくれるので、楽しく働けています
意外と知らない東伊豆町のこと
普段は違う旅館やホテルで働いている若者たち。グループになって外へ出かけた。町の魅力を再発見し、普段の生活をより楽しいものにしてもらおうというフィールドワークだ。
東伊豆町役場を訪れた参加者たちは、町と観光の関わりなどについて職員から話を聞いた。
東伊豆町企画調整課 森田七徳課長：
東伊豆町はどちらかというと、高校を卒業すると若い子たちが外へ出て行ってしまうのが悩みの1つ。逆に外から町に来て働いてくれるということは、町にとってもうれしいしありがたいことです
また、通りすがりのキンメダイの漁師と話をする機会もあった。2時間程度のフィールドワークだったが、町民の温かさに触れることができたようだ。
あまり機会がなかった地元の人たちとの交流。参加者たちはフィールドワークを通して感じた様々なことを付箋に書きつづった。
同期会が仕事の意欲に 町の定住促進へ
最初は緊張気味だった若者たち。1日を共に過ごすことですっかり打ち解けたようで、最後には笑顔があふれていた。
参加した人たちは、この同期会に参加した経験が仕事への意欲にもつながっていると話す。
沼津市出身 植松莉央さん：
東伊豆町に来て2年目になりますが、周辺の観光施設や銀水荘の周りもあまり散歩をしたことがないので、地元の人の話が聞ける貴重な体験になったと思っています
荒武勇希さん：
町全体として若い人たちの定住支援・つながり支援が出来ているので、こういう機会を増やしたり、参加者がこういう場の大切さを実感して、プライベートでもいろいろな会が開かれたりするようになったらいいと思います
東伊豆町をはじめ伊豆南部の市や町は、若者の人口流出が大きな課題となっている。
町外から働きに来てくれる若者に定住してもらうためにも、こうしたイベントが果たす役割は決して小さくないはずだ。
（テレビ静岡）
