スマホやPCの使いすぎで目の疲れや肩こりに悩んでいる人は多いだろうが、“デジタル教科書”を使う小中学生はどうなのだろうか?
実は文部科学省が調べたところ、2~4割の子どもが「目」「首・肩」などに疲れや痛みを感じていることがわかったのだ。

デジタル教科書とは、紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した学習用の教材。
「GIGAスクール構想」を推進する文科省は、2021年度には全国約4割の小中学校等にデジタル教科書を提供した。その効果や影響を検証するため、参加した全国の約1万2000の小中学校の中から、大規模アンケートによって約6万5000人の小中学生から回答を得た。
“目の疲れ”を訴えた小学校低学年は約3割
その結果、デジタル教科書を使った授業のあと、「頭」「首・肩」「手」の痛みや疲れを感じた(感じる・少し感じるの合計)小学校低学年は2割以上。特に目の疲れを訴えた児童は3割近かった。

中高学年と中学生は、2~4割が身体に疲れや痛みを感じる(感じる・やや感じるの合計)と回答し、特に「目」「首・肩」の疲れや痛みを訴える割合が高かった。
また、どちらも4割以上が、授業前よりも目が疲れたと答えている。


なお文科省は、この調査とは別に全国の小中学生約7400人を対象に近視の実態を調べており、学年が上がるにつれて悪化することが明らかになっている。
(参考記事:高学年ほど“近視”悪化 男子より女子の方が「視力悪く、メガネ多い」 文科省が初調査)
目的は「デジタル教科書と姿勢の関係」の調査
これはデジタル教科書に変更した影響なのか?では、子どもがデジタル教科書やスマホなどの端末を使う時、目に負担をかけないためにはどうしたらいいのか?
文部科学省の担当者に聞いてみた。
――疲れや痛みを訴える子どもがこれだけいることは想定していた?
「端末との距離が近かったり、姿勢が悪かったりすると疲れやすい」ということはある程度想定していました。「疲れたり痛みを訴えた児童がこれだけいる」という部分だけの報道もありますが、紙の教科書でも当然疲れや肩こりが出てきます。そこを比較しないとデジタル教科書のことは推し量れないと思います。
この調査は、「何割疲れるか」を問いたかったのではなく、デジタル教科書と姿勢の関係を調べ、学校現場に対して「目との距離を取りましょう」「姿勢をよくしましょう」などを訴えたかったのが本来の趣旨です。
――では、この調査を受けて新たな対策が出るわけではない?
おそらくこの結果だけで評価するのは難しいので、今後様々な専門家を交えた議論が必要だと思います。
――もちろんデジタル教科書は健康を害するものでもない?
デジタル教科書をどれだけ使ったかは学校によってバラバラです。2学期の初めから使っているところもあれば、調査開始直後から使い始めたところもあります。デジタル教科書や端末を何分使ったかという情報もない中で、この調査結果だけで白黒つけるようなことはできないのではないかと考えています。
――現在はデジタル教科書についてどんな指導をしている?
「端末を使うときは画面から30cm以上離しましょう」などの留意事項を出しています。
小中学生がタブレットを使う時の約束
なお文科省の初等中等教育局健康教育・食育課が出している生徒用のリーフレットには以下のような注意点が書かれている。
・タブレットを見るときは、目を30cm以上、離しましょう。
・30分に1回はタブレットの画面から目を離して、20秒以上、遠くを見ましょう。
・寝る1時間前からはデジタル機器の利用は控えましょう。
・時間を決めて遠くを見たり、目が乾かないようにまばたきをしたりして、自分の目を大切にしましょう
・○分使ったら1回中断する、学校のタブレットは学習に関係のないことに使わないなど、学校や家庭のルールを守って使いましょう。

調査で、デジタル教科書を使用した2~4割の子どもが「目」「首・肩」などに疲れや痛みを感じていることはわかったが、対策をするには専門家を交えた議論が必要とのことだった。
今回の調査は紙の教科書との比較ではないためだろうが、これらのタブレット使用時の注意点を守ることは重要だろう。